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深くわかる金融(その07):株式とは何ですか?

 今回は株式について取り扱います。

今日のまとめ

  • 株主が有する会社に対する資格を株式という。株主の地位は、株式を通じて細分化された割合的単位で表示できる。株式は原則として自由に譲渡が可能である

1. 会社法における株式

1.1 会社法における企業

 事業活動から利益を得る事を目的とする主体を会社という(個人も含む。)。
 会社は以下の特徴を持つ。

  1. 法人性:出資者や構成員から独立し、自然人と同様の権利能力を保有する。
  2. 営利性:事業で得た利益を構成員に分配することを予定する。
  3. 社団性:人の集合体である。

 会社には様々な形態があり、株式会社はそのうちの1つに過ぎない。

1.2 会社法における出資

 出資とは、資金*1を提供し事業活動によって生じる利益を受取る地位を得ることをいう。会社法では企業の出資者のことを「社員」という。株式会社の場合、株主ともいう。

1.3 会社法における株式

 株主が有する会社に対する資格を株式という。株主の地位は、株式を通じて細分化された割合的単位で表示できる。株式は原則として自由に譲渡が可能である*2
 会社は株主をその有する株式の内容・数に応じて平等に扱わなければならない。これを株主平等の原則という。
株式会社の場合、社員(株主)は会社または会社債権者に対して自身の持つ株式の引受価額(拠出額)を超える責任を負わない。これを株主有限責任の原則という。これにより株主は会社が倒産することになったとしても、その損害が株式の価値が0になることにまでカバーできる*3

1.4 株主になる方法

 株主になる方法には2種類ある:

  1. 出資:所定の引受価額を会社に拠出することを引き換えに会社から株式の発行を受けること。発行市場にて新規発行株式を引き受けることが含まれる。
  2. 継承取得:既存株主からその保有株式を承継取得する。個別の譲渡、又は相続・合併があり得、流通市場、個人間で発行済株式を売買することが含まれる。

 株式譲渡は、発行者に断ることなく当事者の合意のみで可能である。ただし第三者対抗のためには株主名簿の名義書換が必要となる。

1.5 株主の権利

 会社に対する株主の権利は二つに大別可能である:

  1. 自益権:会社から経済的利益を得る権利。

  例えば、剰余金の配当を受ける権利、清算時の財産の分配を受ける権利がこれに該当する。

  1. 共益権:会社の経営に参与、または会社経営を監督・是正する権利。

  例えば、株主総会における議決権がこれに該当する。

 また、以下の大別も可能である:

  1. 単独株主権:1株しか持たない株主でも行使可能な権利。
  2. 少数株主権:一定割合以上の議決権を持った株主(達)が行使可能な権利。
1.5.1 株式買取請求権

 株主の持つ権利の1つに株式買取請求権がある。
 会社の決定が自己の考えにそぐわない場合に当該会社との関係を絶つなどのために自己保有株式の公正価格での買取りを会社に請求できる権利である。
 株式買取請求権を要求できるのは、以下に該当するときである:

  • 会社が株主の利益に重大な影響を及ぼす一定行為*4を行なう場合
  • 単元未満株主である場合

1.6 株主の義務

 株主は会社に対して2つの義務を負う:

  1. 出資の義務:出資により株主になろうとする者は株式発行の効力発生前に引受株式の引受価額の全額を会社に拠出しなければならない。
  2. 株主有限責任の原則

1.7 種類株式

 会社は、投資家のニーズに応じて、内容の異なる2種類以上の種類の株式を発行できる。
 ここでいう内容とは、たとえば以下が該当する:

  1. 剰余金の配当・残余財産の分配 例:他の株式に先んじて剰余金の配当を受けられる権利を持つ株式を優先株式という。
  2. 議決権制限:一部事項について、議決権を有さない株式
  3. 譲渡制限
  4. 全部取得条項:株主総会の決議によってその全部を取得する定めのある株式

1.9 債権者との比較

 共に企業に対して投資する主体であるものの、株主と債権者とではその権利内容に相違がある。

  1. 権利内容の未確定性:会社より得られる経済的利益が債権者では確定している一方で株主は未確定である。
  2. 劣後性:会社から経済的利益を受ける際、株主は債権者に劣後する。
  3. 会社経営に対するコントロール:株主は共益権を通じて会社経営をコントロールできる一方で、債権者にはそれに相当する権利を有さない。

2. 株式会社の資金調達方法

 株式会社は資金調達において、多様な選択肢を取ることが可能できる。

  • 内部資金によるもの

 内部留保:繰越利益剰余金として社内に蓄積してきた今までの利益
 減価償却

  • 外部資金によるもの

 株式発行
 社債発行
 金融機関等からの借入
 取引先からの信用供与

2.1 企業にとっての資金調達

 企業は債権者または株主から資金調達の上、事業を営み利益を上げる(リターン)一方で、企業は債権者または株主へ利益の一部から利益を分与する義務を負う(コスト)。したがって企業はリターン・コストに見合った資金調達を行う必要がある。
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2.2 株式公開の利益とコスト

 関係者による株主構成を不特定多数の株主構成に一般化する過程を株式公開という。取引所が定める上場基準を満たすことで取引所での株式売買が可能となる。株式公開のメリットは3つある:

  1. ファイナンス能力の強化:出資候補先の増加による当該企業のファイナンス能力の強化ができる
  2. 株式保有者への売却機会の提供:創業者や上場以前の出資先に対し、投資成果を還元できる
  3. 株式公開に伴う企業の知名度/信用力の向上:取引所の上場基準を満たすことで、知名度/信用力が向上する

 その一方で、株式公開にはデメリット(コスト)が4つある:

  1. 上場コスト:上場準備から手続終了までの間、証券会社へのコンサルティングサービスや証券取引所への上場費用
  2. 監督官庁に対する財務データ作成に伴うコスト:有価証券報告書等、財務データ作成にかかるコスト
  3. 投資家向けの広報コスト: IR活動に伴うコスト
  4. 株主総会の運営コスト

3. 株式取引

3.1 株式取引の種類

 株式取引には3種類ある:

  • 取引所売買:取引所上場株式の取引所内での売買
  • 取引所外売買:取引所上場株式の取引所外での売買
  • 店頭取引:非上場株式(店頭有価証券)の売買

3.2 株式取引のステークホルダー

3.2.1 投資家

 - 個人投資家
 - 機関投資家
  (1)証券会社(ディーラー・ブローカー)
  (2)信託銀行
  (3)保険会社
  (4) ファンド(投資信託ヘッジファンド、SWF等)
 - 外国人投資家:外国籍の個人/機関投資家
 - 金融当局
    (1) 金融庁
    (2) 日本証券業協会
 - 証券会社:以下の4機能を果たす
   (1) ディーリング(Dealing):自己資本を用いて有価証券を売買。
   (2) ブローキング(Broking) :売買仲介や投資家による委託売買を実施。
   (3) アンダーライティング(Underwriting) :有価証券の引受。
   (4) セリング(Selling) :有価証券を投資家へ売却。
 - 証券取引所内閣総理大臣の免許を受けて、有価証券の売買又は市場デリバティブ取引を行う金融商品市場を開設する金融商品会員制法人又は株式会社。(1)注文伝達機能、(2)約定機能、(3)受渡・決済機能、(4)取引情報公表機能を持つ。

3.3 株式を初めて購入するまでの手続

  1. 証券口座の開設:証券会社内に証券口座を開設する。
  2. 証券口座への入金:株式購入のためのお金を証券口座へ入金する。
  3. 証券会社へ注文:株式を購入するためには、証券会社へ購入依頼を出す。

取引所で普通取引にて売買した場合、4営業日目に受渡を実行する。

3.4 注文の執行と決済

 株式の売買時、受託業者は投資家から以下の事項を必ず確認する:

  • 売買の種類:現物/先渡等、売買の種類
  • 銘柄:売買する銘柄の指定
  • 売付または買付の区別:売付/買付の指定
  • 数量(売買の単位) :売買する数量の指定
  • 値段の限度:指値/成行の指定。指値の場合、値段の限度を指定。
  • 売買立会時:寄付(取引所の当日最初の売買)/引け(前場後場の終わりでの売買)/ザラ場(寄付から引けまでの間の取引時間)の指定
  • 委託注文の有効期限:今回の委託注文の期限を指定
  • 現物取引信用取引現物取引信用取引(後述)のどちらで売買するかを指定
3.4.1 価格形成方法

 注文の際、呼値(よびね)を定める。売買立会による売買は、価格優先/時間優先の原則に従い、競争売買によって行う。
   ※成行呼値は指値呼値に値段的に優先する。
以下の場合、板寄せによって売買価格を決定。その他はザラ場にて売買価格を定める。

  1. 売買立会の始値(はじめね)を定める際、
  2. 特定銘柄の売買中断直後の約定価格を定める際、
  3. 売買立会終了時に終値(おわりね)を定める際、
  4. 上記以外で、取引所が定めるところにより気配表示が表示されているときの約定値段を定める際

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3.4.2 価格形成方法:ザラ場

 始値決定後、売呼値646円3,000株(チ)が発注された場合、(チ)と(D)とを対比。646円3,000株が対当。4,000株が残る。
次いで、買呼値647円5,000株(H)が発注された場合、(H)と(ホ)とを対比。647円4,000株が対当。1,000株が残る。
その後、成行の売呼値6,000株(リ)が発注された場合、①最も高い買呼値647円1,000株(H)と対当、647円で約定する。
 646円4,000株(D)と対当、646円で約定し最後に、残り1,000株を645円6,000株(E)と対当、645円で約定する。

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3.5 店頭売買の特殊銘柄区分

3.5.1 グリーンシート銘柄

 店頭取扱有価証券、優先出資証券および投資証券のうち、取扱会員および準取扱会員ならびに当該取扱会員が投資勧誘を行うものとして協会が指定したものをグリーンシート銘柄という。

3.5.2 フェニックス銘柄

 店頭取扱有価証券のうち、金融商品取引所に上場当時から保有する者に対して、流通機会を提供する必要があると、取扱会員となろうとする会員の間で判断されたものであり、協会員および金融商品仲介業者が投資勧誘を行うものとして協会が指定したものをフェニックス銘柄という。

3.6 株式投資インセンティブ

  1. キャピタルゲイン :購入価額よりも高い価格で売却することで売却益を得る。
  2. インカムゲイン:企業から配当金を得ることで利益を得る。
  3. 株主優待:企業がサービスや自社商品などを提供する。

3.7 信用取引

 証券会社が、株券の買い手の場合には買付代金、株券の売り手の場合には売付有価証券を貸付け、当該代金又は有価証券を用いて売買決済を行う取引を信用取引という。
 投資家は、信用取引時に、制度信用取引および一般信用取引のいずれかを選択する。

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 制度信用取引の場合、証券会社は、証券金融会社*5より信用取引用の貸付金および株券を取引所の決済機構を通じて借入可能する(一般の場合、自社で調達が必要である。)。証券金融会社は、貸借資金をコール市場にてファイナンス可能である。
 品不足(貸株が超過している状態)銘柄は、証券会社自身または証券会社の顧客から調達する。それでも不足する場合は、生命保険会社等の機関投資家から借入。その際、入札により逆日歩(品不足時、入札によって決めた貸株料率)を決定している。信用取引における買い手は、(逆日歩× 株式数分の金額)を得、売り手は(逆日歩× 株式数分の金額)を支払う。

対象銘柄 取引所が選定 原則全上場銘柄
返済期限 最長6か月 顧客と証券会社との間で決定
品貸料 取引所が発表 顧客と証券会社との間で決定
権利処理 取引所が定める方法 顧客と証券会社との間で決定
貸借取引 利用可能 利用不可能

3.7.1 委託保証金

 信用取引をするには、自身の信用力を提示すべく、3営業日目の取引参加者指定の日時までに約定価額の30%以上(但し、30万円を下回る場合は、30万円)の委託保証金を徴求しなければならない。
 また信用力を有する投資家を残すために、取引開始後に委託保証金の価値が約定価額の20%を下回る場合、翌々日の証券会社が指定する日時までに、追証(おいしょう*6)をしなければならない。なお委託保証金は現金又は差入額に相当する価値を持つ株券の差入も許容される。但し、株券差入の場合、価格変動リスクを加味するために代用掛目80%が適用される。

3.7.2 信用取引の委託保証金事例

 現時点t = 0にある銘柄の株式を¥10,000,000分信用取引で購入し、委託保証金として現金¥4,000,000を差し入れた。
 ある時点t =t_0\gt0に自身の持つ株式時価が¥22,000,000になったとする。このとき、委託保証金に追加の¥400,000を差し入れなければならない。

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3.7.3 個別銘柄信用残高

 日本証券取引所のWebサイトから、信用取引関連の各種最新統計が閲覧できる。買残高が信用買いの未決済数、売残高が信用売りの未決済数を指し、買残、売残の比較により当該株式に対する投資家の見方が分かる。

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3.8 サーキットブレーカー

 過度な市場価格の変動が生じた際に、一時的に売買を中断、投資家に冷静に対応可能なように時間的余裕を与える仕組みをサーキットブレーカーという。
 この制度には3つの目的がある。

  1. 取引過熱時に全取引を一時中断し、市場参加者に冷静に市場動向を分析する時間を与える。一方で、不安を増長する結果になる場合がある。
  2. 個人投資家に反応のための時間を十分に与え、個人投資家の市場に対する信頼を回復する。
  3. 売買システムやバックオフィス事務処理能力の不足による物理的混乱を防ぐ。

4. 株式のパフォーマンスを測る指標

4.1 収益率・リターン

 インカムゲインキャピタルゲインを加味して投資家にとってその株式を保有していたとして得られた利益率を表すのが収益率・リターンである。
 通常、基準時点(t=t_0)および評価時点(t=t_1\gt t_0)を指定した上で、その期間におけるインカムゲインキャピタルゲインを考慮して計算する。また増資や株式分割などを考慮する必要もある。したがって


\begin{aligned}
収益率=\displaystyle{\frac{P_{t_1}\times C_{t_0,t_1}}{P_{t_0}}-1}
\end{aligned}

P_t
:時点t=tにおける権利付き最終価格(配当落ち時点でなければ通常の株価)
C_{t_0,t_1}
時点t_0からt_1までの調整係数(後述)

であり、調整係数C_{t_0,t_1}はたとえば


\begin{aligned}
C_{t_0,t_1}=&\displaystyle{\prod_{i=t_0}^{t_1}C_{i-1,i}},\\
C_{t-1,t}=&\displaystyle{\frac{P_t}{P_t+\beta A}\left\{(1+\alpha+\beta+\gamma)\lambda+\frac{D}{{P_t}^{*}}\right\}}
\end{aligned}

{P_t}^{*}
:時点t=tにおける権利落ち価格
(ただし配当落ち時点でなければ権利付き最終価格とする)
P_t
:時点t=tにおける権利付き最終価格
(配当落ち時点でなければ通常の終値など)
\alpha=\displaystyle{\frac{Y}{X}}-1
:時点t-1からtまでに生じたX:Y*7株式分割・併合、資本減少、被合併比率
\beta=\displaystyle{\frac{Y}{X}}
:時点t-1からtまでに生じたX:Yとなる増資比率
A
:時点t=tにおける増資での1株当たり払込金
\gamma=\displaystyle{\frac{Y}{X}}
:時点t-1からtまでに生じたX:Yへの株式配当
\lambda=\displaystyle{\frac{Y}{X}}
:時点t-1からtまでに生じたX円からY円への額面変更
D
tで考慮すべき1株当たり現金配当金額[円]

と定義できる。
 ただし権利落ち時点では実際の配当額は確定していないため、予想値や会社発表額を用いる*8。また実際の配当支払日に配当落ちで考慮した分の修正および実績配当金の加算を行なう方がより厳密ではある。

4.1.2 権利落・配当落価格

 前述したリターンの調整において、特に株式分割や第三者割当増資、増資、配当金支払等に伴い一株当たりの価値が下落した後の価値を権利落価格(配当落価格)という。
 たとえば配当金の考慮については、時点tにおける株価をP_t、1株当たり配当金をDとすれば配当落価格{P_t}^{*}


\begin{aligned}
{P_t}^{*}=P_t-D
\end{aligned}

である。株式の発行会社が定めている権利確定日の2営業日前が「権利付最終日」、1営業日前が「権利落ち日」である。

4.2 騰落率

 リターンに対し、キャピタルゲインのみを考慮するために配当を考慮しないリターンを騰落率という。
 粗く定義すれば


\begin{aligned}
騰落率=\displaystyle{\frac{評価時点の株価-基準時点の株価}{基準時点の株価}}
\end{aligned}

である。しかし株式分割や株式統合も考慮する必要がある点に注意。

4.3 累積リターン

 考えている単位時間当たりのリターンに対し、複数単位時間のリターンを累積リターンという。日次リターンから見た月次リターン、月次リターンから見た年次リターンが累積リターンに相当する。
 たとえば時点t=tにおける単位時間当たりリターンをr_tとするとき、t=t_0からt_1までの累積リターンr_{t_0,t_1}^{C}は以下で定義する:


\begin{aligned}
r_{t_0,t_1}^{C}=\displaystyle{\prod_{t=t_0}^{t_1}(1+r_t)}-1
\end{aligned}

4.4 配当利回り

 投資金額に対する年間の受取配当金の割合を配当利回りという。なお以降では「1株当たり…」は普通株発行済株式数を用いることとする。


\begin{aligned}
株式利回り=\displaystyle{\frac{1株あたり配当年額}{購入株価}}=\displaystyle{\frac{配当総額}{時価総額}}
\end{aligned}

4.5 株価純資産倍率(PBR)

 BPS(Book-value per Stock: 1株当たり純資産)


\begin{aligned}
BPS = \displaystyle{\frac{純資産}{発行済株式数}}
\end{aligned}

に対し、PBR( Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)を以下で定義する。


\begin{aligned}
PBR=\displaystyle{\frac{株価}{BPS}}=\displaystyle{\frac{株価\times発行済株式数}{BPS\times発行済株式数}}=\displaystyle{\frac{時価総額}{純資産}}
\end{aligned}

株主帰属価値に相当する純資産(総資産− 負債: 当該企業の株主保有資産)に対して、その企業を購入する場合にかかる金額との倍率を表す。指標値が小さければ、当該企業は割安と判断可能である。

4.6 株価収益率(PER)

 EPS(Earning per Share: 1株当たり当期純利益)に対し、PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)を以下で定義する。


\begin{aligned}
EPS=\displaystyle{\frac{親会社株主に帰属する当期純利益}{発行済株式総数}}
\end{aligned}

 EPSは配当性向が100%である場合の1株当たり配当額に相当し、


\begin{aligned}
PER=\displaystyle{\frac{株価}{EPS}} =\displaystyle{\frac{株価\times発行済株式総数}{親会社株主に帰属する当期純利益}}=\displaystyle{\frac{時価総額}{親会社株主に帰属する当期純利益}}
\end{aligned}

はその何倍の価値で株式が購入されたかを表す。当該企業が、配当として提供可能な利益の何倍の金額で買収できるかを表す*9

4.7 自己資本純利益率(ROE

 ある企業(体)の、既存株主に帰属する資本に対する株主に配当され得る収益の割合で、出資者たる株主の立場から見た収益率を示す。


\begin{aligned}
ROE= \displaystyle{\frac{当期純利益}{自己資本}}=\displaystyle{\frac{当期純利益}{株主資本+その他の包括利益累計額+新株予約権+非支配株主持分}}
\end{aligned}

4.8 総資本事業利益率(ROA

 ある企業(体)の、自身の使用できる全資本に対する全収益の割合で、会社の立場から見た収益率を示す。


\begin{aligned}
ROA =\displaystyle{\frac{事業利益}{使用総資本}}=\displaystyle{\frac{経常利益+持分法利益+受取利息・配当金}{使用総資本}}=\displaystyle{\frac{経常利益+持分法利益+受取利息・配当金}{自己資本+他己資本}}
\end{aligned}

使用総資本は簡便的に総資産で代替することもある。持分法利益は持分法適用会社(グループに大きな影響を与えうる非連結子会社や関連会社)の上げた収益を指す。事業利益を用いるのは、経常利益を用いる場合に使用総資本は他人資本(利息の発生源)を含むにもかかわらず経常利益は利息を含んでいないため、使用総資本との対応が無いためである。

4.9 EV/EBITDA倍率

 EBITDA(Earning Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization)*10およびEV(Enterprise Value)を用いて、


\begin{aligned}
EV/EBITDA倍率=&\displaystyle{\frac{EV}{EBITDA}},\\
EBITDA=&営業利益-税金+支払利息+減価償却費\\
EV=&時価総額+ 純有利子負債= 株価× 発行済株式数+有利子負債\\
&{}− 現預金− 短期有価証券
\end{aligned}

企業の生み出す利益の企業価値に対する倍率を表す。税制など国(制度)の相違に伴う制度の差異を極力排除し比較可能性の高い指標である。本指標が低ければ、当該企業は割安を意味する。

5. 株式市場関連指標

5.1 株式市場の鉄則

木を見る前に、森を見る!

 個別株の前に、市場全体の動きを見るようにする。
 その目的に応じて、適当な株式指数を見る。

5.2 株式指数

 個別銘柄株価を一定のルールに応じて合算することで算出した、市場全体*11の動向を調べるための指数を株式指数という。そうした理由のため、計算基準が公表されるなど透明性が高くなるように運営されている。なお指数によって配当を加味している場合としていない場合がある。目的に応じて(たとえばファンドの運用成績を見るための参考値(ベンチマーク)として利用するならば配当込の方が望ましい。一方で株式市場の動向を見たいのであれば配当無しの方が望ましい。)何を参照するか注意する。

5.2.1 日経平均株価

 東京証券取引所第一部に上場する225 銘柄を選定し、その株価を使って算出する株価平均指標を日経平均株価と呼ぶ。日経225, 日経平均N225とも呼ばれる。値嵩株(相対的に株価の高い銘柄)の影響を受けやすい。日本経済新聞社が現在発表している。


\begin{aligned}
日経平均=&\displaystyle{\frac{1}{除数}\sum_{i=1}^{225}採用株価}\\
各構成銘柄の採用株価=&株価\times\displaystyle{\frac{50}{株価換算係数}}
\end{aligned}

株価換算係数(旧:みなし額面換算)とは、かつて株式に額面価額(最初に投資家に発行した際の価格)があり、その当時との指数の連続性を保つための係数である。
除数とは、平均を取るための除数であり、元来は225であったが、現在では指数の連続性を担保するために株式分割や銘柄入替等に伴う指数のズレをこの項で調整しているため、当初の意味はなくなっている。

名称(日本語名) (正式)日経平均株価
(略称)日経平均、日経225
名称(英語名) (正式)Nikkei Stock Average
(略称)Nikkei Average, Nikkei 225
算出開始日 1950 年9 月7 日
構成銘柄の要件 東証第一部に上場していること、
親会社であること、
日本国内に本社があること
見直し 定期見直し又は臨時見直し
5.2.2 TOPIX

 東証一部上場全銘柄の株価を時価総額で加重平均した指数をTOPIXという。日経平均株価に対し、市況をより正確に反映しているといわれる。時価総額の高い銘柄の影響を受けやすい。日本取引所グループが発表。

各指数値の単位はポイント(無単位)で小数点以下第2 位を表示(小数点以下第3 位四捨五入)する。


\begin{aligned}
TOPIX=&\displaystyle{\frac{算出時の指数用時価総額}{基準時価総額}}\times基準値(=100)\\
算出時の指数用時価総額=&\displaystyle{\sum{(各銘柄の指数用株式数× 採用価格)}}
各銘柄の指数用株式数=&各銘柄の指数用上場株式数\times各銘柄の浮動株比率
\end{aligned}

採用価格は以下の優先順位で利用:①特別気配又は連続約定気配\gt②約定値段\gt③指数用基準値段

5.2.3 JPX日経400

 「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される株価指数。2014年1月6日より公開している。日本経済新聞社および日本取引所グループが共同開発している。東証33業種とは異なる独自の業種区分を採用している。

5.2.4 日経225先物価格

 日経平均を原資産とした株式指数先物取引を指し、期日に算出される日経平均株価清算値と先物売買価格との差額を得る(失う)取引の価格である。
日経225先物を見る際には

  1. 出来高・売買高:売買の成立した建玉(契約)数。売買高は売り/買いをそれぞれ1枚と数えるため、出来高の2倍となる。
  2. 取組高:未決済の建玉の数。
  3. 価格:先物価格。日経平均株価の将来の値に対する投資家の見通しを反映している。

もし将来に日経平均株価が上がると見越していれば、投資家は日経225先物を購入、当該先物価格は上昇する(現物買先物売)。逆ならば、投資家は日経225先物を売却する(現物売先物買)。
 日経225先物は各国証券取引所にて上場しており、売買されている。時差により裁定取引が働くため、各市場での取引結果が関連しあう。特にCME日経225先物終値が日本における翌取引に反映されるため、当該先物終値は、翌日の日経平均株価の先行指標となる。

CME Nikkei 225 Futures :米国シカゴ・マーカンタイル取引所にて上場。同取引所では、円建、ドル建両方の先物が上場されている。
SGX Nikkei 225 Futures シンガポール取引所にて上場。日本よりも15分早く取引が開始する。
大証日経225先物 大阪証券取引所にて上場。夜間取引もなされている。
5.2.5 日経平均VI

 日経平均VI(日経平均ボラティリティー・インデックス: Nikkei Stock Average Volatility Index )とは、大阪取引所上場の日経平均先物および日経平均オプションの価格をもとに算出される、投資家が日経平均株価の将来の変動をどのように想定しているかを表した指数である。指数値が高いほど、投資家が今後、相場の大きな変動を見込んでいることを意味する。指数値が低すぎる場合、投資家が過度にリスクを取っている可能性がある。現在の市場で見込まれている日経平均株価日経平均)の1ヵ月先の変動率を示す。

5.3 日経平均の読み方

 日経平均の動きは、以下の理由から取引高がより多い日経平均先物の値動きが、裁定取引を通じて日経平均に波及するため、日経平均先物の動きが決める。

  • 夜間も相場が開いている、
  • 日本国内以外にもSGX、CMEに上場している、
  • 現物売買よりもコストが低い、
  • 先物は売玉がある限り買付ができる。

したがって、日経平均の動きを見るには、まずは日経平均先物の動向を見る必要がある。異常時(例えば、リーマンショック)を除けば、基本的に先物は現物とは異なった動きを見せ、それが現物に波及すると考えるのが妥当である。

5.3.1 日経平均の動き方
  1. 投機が入る: 過剰なマネーの流入により現物価格から大きく乖離する場合がある。
  2. 裁定取引が働く: 先物の需給が裁定取引によって現物市場に伝わる。
  3. 現物の先物寄せ: 寄付き前に先物水準に現物側が動く。
  4. 各銘柄売買: 流動性の高い銘柄がまず動き、低い銘柄が指数に合うように動く。
  5. 現物取引の終了: 株式相場が閉まり、先物相場へと移る((1)に戻る。)。

5.4 信用残と裁定残

 信用残は、投資家が自身の相場の読みを基に自発的な動きを見せたことを意味するため、分析の対象となる。
 一方で、裁定残は、現物市場と先物市場の需給のズレを調整するのみに過ぎないため、情報は少なく、信用残と同列に扱うことに意味はない。但し、裁定残の積み方(裁定残の形成過程)には意味がある可能性がある。

6. 関連商品

6.1 新株予約権

 所有者が一定期間内に請求を行うことで、当該発行会社の株式を事前に定められた価格で一定数量買い付ける事が出来る権利を新株予約権という。

6.2 転換社債型新株予約権付社債

 新株予約権を付した社債で、新株予約権の分離譲渡が不可能なものをいう。近年、オーバーパーかつゼロクーポンでの発行が多い。転換権行使請求期間中に、新株発行により1株当たりの価値が希薄化した場合、転換価額の引き下げを行う場合がある。


\begin{aligned}
取得株数=\displaystyle{\frac{社債権者の提示した社債発行価額の総額}{転換価額}}
\end{aligned}


\begin{aligned}
パリティ価格=\displaystyle{\frac{株価}{転換価額}}\times100
\end{aligned}


\begin{aligned}
乖離率[\%]=\displaystyle{\frac{転換社債時価-パリティ価格}{パリティ価格}}\times100
\end{aligned}

備考

用語

用語
説明・備考
自益権の例外 自身の払込んだ出資の払戻しは原則不可である。
呼び値 株式・債券を取引所で買う(売る)際の希望価格のこと。
成行注文 売買価格を明示せず、銘柄と数量のみを指定して注文をすること。売買価格は、市況に応じて決まる。指値よりも優先的に注文が成立することになっているが、想定よりも高く買う(安く売る)ことになる可能性がある。
指値注文 売買価格を明示して注文をすること。買いの場合には指値以下で、売りの場合は指値以上で取引される。指値注文は、執行者が希望した値段で売買することができるというメリットがあるが、わずかの価格差で売買が成立しないというデメリットもある。
単元株 株主総会での議決権行使や株式売買を円滑にするために定めた、一定数(一単元)の量の株式数をいう。より簡単に言えば、売買の最小単位である。単元株未満の株数の株式は、株式買取請求権により、会社へ買取を依頼できる。

*1:ただし現物出資も許容される。

*2:ただし上場会社でなければ定款によって制限することが可能である。

*3:無論、債務保証など会社へ個人的に与信をしていれば話は別である。

*4:株主の利益に重大な影響を及ぼす一定行為とは、①事業譲渡等をする場合②合併・会社分割・株式交換・株式移転をする場合、③株式の譲渡制限を付与する場合、④株式に全部取得条項(株主総会の同意の上、会社が当該種類の全株式を買取る条項)を付す場合、⑤ある種類の株式の株主に損害を及ぼす恐れのある一定の行為を行なう場合であって種類株主総会決議が定款にて排除されている場合、の5つが該当する。

*5:証券金融会社は、信用取引開始当初(1950年代)に証券会社の資金力の低さを補うために設立された企業。

*6:委託保証金が約定価額の20%以上となるように追加で現金又は株券を追加で差入れること

*7:Xがイベント前、Yがイベント後の比率

*8:レンジで公表されている場合が多いので、どの値を用いるかも論点の1つである。

*9:無論、利益を超過しての配当も可能であるため、あくまでも目安である。

*10:ただし流派によって定義が相当相違し、値に相違があり得るため以下はあくまでも一例。

*11:ここでいう市場がどこを指すかも重要。

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