定番書
を基に線形代数を学び直していく。
2. 行列と線形写像
2.4 一次方程式系
一次方程式
において、をそれぞれ係数行列、拡大係数行列と呼ぶ。また
とおけば、最初に書いた方程式は
と書ける。
任意の次正則行列に対して、同方程式系は、次の方程式
と同値である。すなわち拡大係数行列に左基本変形を何回施しても、その結果として得られる新しい方程式は元の方程式と同値である。
2.4.1 基本変形による一次方程式系の変形
拡大係数行列に左基本変形および最後の列以外の列の交換を何度か行うことによってはに変形される:
ただしは係数行列の階数である。
( まずが得られたとしてがの階数に等しいことを示す。に施した基本変形によりにも同様の変形が為されており、そのためにから最後の列を除いた行列の階数はの階数も同じである。の第列()から第列()の倍を引けば標準形を得る。したがってはの階数に等しい。
もしならば、そのままが求める形である。ならば、行の交換および第列以外の列を交換することで、成分がではないようにする。そして、同成分を要として左から第列を掃き出す。ここで第列から第列までの第行以下がすべてならば、これが求める形である。以降、同様の操作を成分に続けることで最終的にを得る。 )
以上から得た方程式
は簡単に解くことが出来る。
もしならば解を持たない。
ならば、に任意の実数を代入し、その部分を移行することで
である。
2.4.2 例:一次方程式系
(1)
を解け。
上式の拡大係数行列とすれば
であるから、解は無い。(2)
を解け。
上式の拡大係数行列とすれば
より、である。(3)
を解け。
上式の拡大係数行列とすれば
以上からとしてである。
2.4.3 一次方程式系の性質
方程式の数と未知数の数が等しく、係数行列が正則ならば、その方程式系はただ1つの解を持つ。
定数項がすべてであるような一次方程式系を斉次一次方程式系という。斉次方程式は必ず1つの解、すなわちを持つ。これを自明な解を持つ。
もしが斉次方程式の解ならば、それらの線形結合も明らかにの解である。
個の未知数に関する個の斉次一次方程式系
において、係数行列の階数がならば、上記方程式は個の特別な自明でない解を持ち、任意の解はこれらの線形結合として表される。また特別な自明でない解はいずれもそれ以外の線形結合では表せない。
ならば、斉次方程式系
は少なくとも1つの自明でない解を持つ。
未知数の数と方程式の数とが等しい斉次方程式が自明でない解を持つためには、係数行列が正則でないことが必要十分条件である。
次正方行列が正則であるためには、でない任意の項列ベクトルに対してとなることが必要十分条件である。
2.4.4 非斉次方程式
方程式
に対し、
を(a)に対応する斉次方程式といい、のとき斉次方程式との対比で(a)を非斉次方程式という。方程式
の1つの解をを固定すると、同方程式の任意の解はその斉次方程式の解の解にを加えることで得られる。