はじめに
プログラミング云々ばかり言っていても、それがどのように計算されているかを知らないと仕様が無い。ということで数値解析を学んでいく。
基本的には
を参照しつつ、他書で補足する。
2. 非線形方程式の解
2.2 具体的な反復法
2.2.4 代数方程式の解法
実係数を持つ次方程式
を解く方法はいくつか知られている。原理的には何らかの方法、たとえば法で1つの解
を求めた上で
もしくは
で上の方程式を割り、方程式の次数を下げる。この操作を繰り返すことで解ける。問題は初期値を如何にして見つけるかである。また割り算を繰り返すことで、丸め誤差により数値解が崩れることがある。
ここではこうした難点の少ない-
-
の方法を考える。
まずとおき、
と変形する。このときならば
は1つの正解を持ち、元の方程式
の解
はすべて閉円板
に含まれる。そこでを満たすような
を選び、
とおく。もしあるにおいて
となれば
は収束したものとみなし、以後
とする。このようにして
となるまで反復する。
が知られており、したがってが充分に大きければ
となり、は当初円の中心
に向かって1次収束するが、単解の場合、それらの付近で2次収束する。
適用対象においてがすべて相違すれば
として上の結果を適用すればよい。もしある
において
となるならば、充分に小さい
を与えて
などとして適用する。もし解の一部に重解や近接解があっても、それらと離れた解がかなり存在すれば、
が良い近似のとき、
の半径は小さくなり、十分実用に耐え得る。もし
が互いに素であれば、各
の半径が各近似解
の誤差限界を与える。
2.3 連立非線形方程式
反復法は多変数の方程式にも有効である。基本的には単変数のときの考え方を援用すればよい。
2.3.1 例:2変数関数の場合
まずは援用の仕方を学ぶべく、詳細な議論を避けて2変数の連立方程式
における法を考える。
この数値解を考えるのに、解に収束するような点列
を構成したい。反復が
まで進んでいるとする。このとき
の
における接平面および
の
の
における接平面は、それぞれ
で与えられる。ここで
とおいた。
これら接平面の式においてとおいた
は平面上の2本の直線を表し、それらの交点を
とおく。このとき
であるから、
を得る。初期値を適当に定め、この式を用いて反復列
を生成する方法が2変数
法である。
ここで現れた
をのヤコビ行列(ヤコビアン)という。
ベクトル表示すると、法は
で書ける。同様に2変数の簡易法および緩和反復法は、緩和反復に適当な行列を
としてそれぞれ
で与えられる。
なお2変数の法は、複素数および複素関数を用いて表現することができる。
とおき、正則な複素関数
を導入する。そして反復列を
として
で定める。これを特に複素法という。
なおが正則関数であるためには全微分可能かつ
-
の微分方程式
を満たさなければならないため、複素法の反復法が定義できなくとも、2変数の
法が適用できる場合が存在する。
2.3.2 縮小写像の原理
方程式
を解く反復
を考える。このとき、1変数のときの縮小写像の原理を以下のように多変数に拡張することができる。証明は、1変数の場合のものにおいて、変数をベクトルに絶対値をノルムに置き換えて全く同じ議論をすればよいため省略する。
定理2.10 縮小写像の原理(多変数版)
を満たすならば、方程式は一意の解
を持ち、それは反復
の極限として得られる、すなわち
が成り立つ。
なお条件(2),(3)のみを満たすようなを
連続であるという。
縮小写像の原理から以下の系が得られる。
2.3.3 多変数の反復法
次に一般の多変数方程式
を考える。この場合も、
とおけば、法、簡易
法および緩和反復法は
で与えられる。
※今日の復習はなし
参考文献
- 伊理正夫・藤野和建(1985)「数値計算の常識」(共立出版)
- 菊地文雄・齊藤宣一(2016)「数値解析の原理 現象の解明をめざして」(岩波書店)
- 齊藤宣一(2012)「数値解析入門」(東京大学出版)
- 齊藤宣一(2017)「数値解析」(共立出版)
- 高橋大輔(1996)「理工系の基礎数学8 数値計算」(岩波書店)
- 山本哲朗(2003)「数値解析入門[増訂版]」(サイエンス社)
- 日本応用数理学会 監修・ 櫻井 鉄也 編・ 松尾 宇泰 編・ 片桐 孝洋 編(2018)「数値線形代数の数理とHPC」(共立出版)
- Ridgway Scott, Larkin (2011), "Numerical Analysis", (Princeton University Press)