定番書
を基に線型代数を学び直していく。
- 1. 行列の導入
1. 行列の導入
1.1 行列の定義
型の行列とはに対して個の複素数を縦個、横個並べた表を指す。すなわち
特にの場合、正方行列という。1.2 行列の加減乗除の定義
1.2.1 行列の加法の定義
行と列の数が等しい行列
に対して
1.2.2 行列の減法の定義
と定義し、行列における減法を
で定義する。1.2.3 零行列の定義
行列の加減を定義したところで実数のに相当するものとして零行列
を定義する。
加法の定義から明らかに、任意の行列とそれと行および列の数が等しい零行列に対して
が成り立つ。
1.3 行列の加法で成り立つ法則
以下、とする。
1.3.1 結合法則
1.3.2 交換法則
1.3.3 スカラー倍の性質①
1.3.4 スカラー倍の性質②分配法則
1.3.5 スカラー倍の性質③
1.3.6 スカラー倍の性質④
1.5 行列の可換性
行列の積では必ずしもは成り立たない。そのため
が成り立つときを特にとは可換であるという。1.7 線型結合
および番目の成分がでそれ以外がであるようなベクトルに対して
の形で書けるベクトルを線型結合という。1.9 転置行列
行列
に対して行列
を行列の転置行列という。1.9.1 転置行列の性質
1.10 逆行列の定義
正方行列に対してならばは正則であるといい、このときを逆行列という。
1.10.1 逆行列の性質
- 逆行列は存在するならば一意である。
( 次正方行列が正則であるとし、がそれぞれの逆行列だとする。このとき逆行列および単位行列の定義から
である。行列の結合法則からが成り立つ。)- 行列が正則ならばも正則であり、である。
( 行列が正則であると仮定する。このとき正則の定義からが成り立つ。
このにおいてに注目すれば、これはに逆行列が存在し、それがであることに他ならない。したがって
- 行列が正則ならばその積も正則であり、が成り立つ。
( 行列が正則であると仮定する。このとき
である。ここでは単位行列である。以上から
が成り立つ。したがって は正則でその逆行列はである。 )
( 行列が正則であると仮定する。このときである。したがって
である。 )
- 行列についてならばは正則でである。
( 実際に計算してみればよい。行列が
と書けるならば、である。また以上からである。( 行列が正則である仮定する。このときには逆行列が存在し、それをとおくと、
これを解くことで
が得られる。逆にがいずれも正則であると仮定する。これらの逆行列をそれぞれとすれば、である。 )
1.11 特殊な行列
1.11.1 対角行列
正方行列を対角成分と呼ぶ。対角成分以外がすべてであるような行列を対角行列という。対角行列が正則であるためにはであればよい。
1.12 トレース
正方行列の対角成分の和をの固有和(trace)といい、
トレースにおいてはが成り立つ。