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深くわかる金融(その04):外国為替とは何ですか?

今日のまとめ

  • 外国為替は、(民間)銀行の個々のネットワークに基づき、たいてい外国通貨の売買が伴うこと、国家間をまたぐことが多いため、内国為替とは勝手が違う。
  • 貿易に関わる外国為替では、輸入者・輸出者の内、どちらがどれだけ(どの)リスクを取るのか?に尽きる


※今回は、閲覧者が個人ではなく法人であるという前提での解説です。

1. 外国為替とは何ですか?

 隔地者間の金銭債権・債務の決済または資金の移動のうち国境を跨ぎ複数国間で行なうものを直接の現金授受によらずに金融機関を介して行なう仕組みを外国為替という。
 外国為替での決済では通貨の交換が生じる場合が大半である*1

1.1 内国為替との違い

 内国為替とは3つの違いがある:

  • 外貨の売買が殆どの場合発生する: 為替変動リスクに晒される。
  • 決済方法が複雑である:外国間の資金取引を一括で取り仕切る機関が存在せず、個々の銀行間のネットワークで構成されている。
  • 国家による為替管理の影響を受ける:一国、場合によっては世界的に影響を及ぼすことから、各国の法律や世界的な規制・規則にて厳格に管理されている。

1.2 外国為替決済の原則

 個々の銀行間のネットワークの集合体であるから、以下の3つの原則がある:

  1. 個別決済: 内国為替とは違って同一債権者・債務者による個々の債権債務を相殺できず1件毎に処理する。
  2. 資金授受先の限定: 資金の授受は必ずデポコルレス先(後述)を介して実施する。
  3. 資金授受の実施場所: 資金授受は支払通貨の発行国にて実施する。

3.について、たとえば日本の銀行とヨーロッパの銀行が米ドルで取引する場合、両銀行の米国支店*2または両銀行とデポコルレス先の関係にある米国銀行内に存在する両銀行の口座を介して米ドルはやり取りされる。その結果、米国当局は自国の銀行ではない2銀行間の取引を把握することが出来る。

2. 外国為替取引の模式図

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  1. X国のA社がY国のB Companyから製品Xを購入し、その代金として1百万米ドル*3を支払うこととなった。
  2. A社は取引銀行である銀行Pに対しB Companyへの当該支払を行うべく、その指定銀行であるY国のQ Bankに1百万ドル支払うよう依頼し102百万円を支払った。
  3. 銀行Pはその支払を行うために、外国為替市場にて102百万円を手数料込で1ドル=101円にて1百万ドルにドル転し、残額をA社口座に保管した。
  4. 交換した1百万ドルは銀行Pのニューヨーク支店の口座へ移し、P内にあるQ Bankの口座へ同1百万ドルを付け替える(これによりQ Bankへの支払が完了する。)。
  5. Q bankのニューヨーク支店は銀行P内にある自店口座から同1百万ドルを自行内のB Company口座へ移す。

2.1 銀行が外国為替取引を出来る相手銀行

 外国為替取引は個々の銀行間による取引であり、顧客(上の例でいうA社)の指定した支払先(上の例でいうB Companyの指定したQ Bank)が自行の取引先とは限らない。そこで、各銀行にとっての相手銀行の関係性には様々なものがある:

  • コルレス:互いにSWIFT RMAを導入しており、決済指示を送受信できる相手金融機関*4
  • デポコルレスコルレス先でかつ、一方または相互に決済口座を開設している相手金融機関*5

デポコルレス先でなければ外国為替の決済(上述の4.)が出来ないため、外国為替取引が完了できない。そこで仲介となるようなデポコルレス先が現れるまで、自行および相手金融機関はデポコルレス先のデポコルレス先…とデポコルレス先を辿っていくことになる。

2.1.1 事例1:取引銀行が相手銀行とデポコルレス先で、かつ相手銀行が支払通過の資金授受を実行可能な銀行である場合

 この場合、取引銀行は相手銀行と直接支払の外国通貨を授受する。


図表1 例①:相手銀行が自社の取引先銀行とデポコルレス先で
かつ相手銀行が支払通貨の資金授受を実行可能な銀行であるような外国為替取引

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2.1.2 事例2:取引銀行が相手銀行とコルレス先かつノン・デポコルレス先だが、相手銀行の取引先銀行に取引銀行のデポ・コルレス先がある場合

 この場合、取引銀行はデポ・コルレス先に相手銀行への支払を指図し、相手銀行にはSWIFTを通じて相手銀行の取引先銀行経由で支払うことを電信する。デポ・コルレス先を介在させるため、その手数料が余計に掛かる。


図表2 例②:相手銀行が自社の取引先銀行とコルレス先かつノン・デポコルレス先だが
相手銀行の取引先銀行に取引銀行のデポ・コルレス先があるような外国為替取引

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2.1.3 事例3:取引銀行が相手銀行とノン・コルレス先である場合

 この場合、双方にとってハブの役割を成す共通の銀行が現れるまで、デポコルレス先のデポコルレス先を辿っていくことになる。


図表3 例③:相手銀行が自社の取引先銀行とノン・コルレス先であるような外国為替取引
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2.2 日本国内における外国為替の規制法律

 詳しく(特に最新の情報)は自身の取引先銀行などに問い合わせてください。

  • 外為法外国為替に関する基本法で、(1)報告義務(2)本人確認義務(3)適法性の確認義務を規定する。
  • 国外送金等調書法:租税回避のための海外送金防止/租税のための国外資産の把握を目的としており、(1)告知書提出義務(2)本人確認義務を求める。
  • 犯罪収益移転防止法:マネーロンダリング、テロ資金供与防止を目的とし、(1)(外為法よりも厳しい)本人確認義務(2)高リスク取引に該当するかの確認を求める。

3. 外国為替市場

3.1 (確認)通貨高と通貨安

 自国通貨1単位で購入できる外国通貨が増加した場合=自国通貨の価値が増大した場合を通貨高という。逆に自国通貨1単位で購入できる外国通貨が減少した場合を通貨安という。たとえば1米ドル90円だったのが100円になった場合、もともと1円で0.0111\cdotsドル購入できたのが1円で0.01ドルしか購入できなくなったということを意味するので、円安である。

3.2 外国為替市場のネットワーク

 外国為替市場は、株式取引でいう取引所のように取引を集中して行う先が存在せず、相対取引を行なう関係主体のネットワークの集合体である。

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また各国の時差もあり、かなり早期から24時間取引が可能な市場である。
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3.3 外国為替市場のシェア

 取引国で見ると、英国のプレゼンスが相変わらず大きい一方で近年はシンガポール・香港の躍進が目覚ましい。他方で取引通貨としては日本円のプレゼンスが引き続き大きい。


図表4 取引国別の取引額
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図表5 取引通貨別の取引額
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4. 外国為替市場における取引形態

4.1 通常取引

 直物(じきもの)か先渡*6か、買いか売りか、の4パターンからなる。

  1. 直物買い:当日に、顧客から外国通貨を買い、邦貨を顧客へ売る取引。
  2. 直物売り:当日に、顧客へ外国通貨を売り、邦貨を顧客から買う取引。
  3. 先渡買い:先日付で、顧客から外国通貨を買い、邦貨を顧客へ売る取引。
  4. 先渡売り:先日付で、顧客へ外国通貨を売り、邦貨を顧客から買う取引。

直物取引はスポット取引(Spot trading)とも言い、資金授受は売買成立後の2営業日後に行うような異なる2国通貨を売買する取引を指す。他方で先渡取引はフォワード取引(Forward trading)とも言い、資金授受が売買成立後の3営業日後以降に発生する異なる2国通貨を売買する取引のことである。

4.2 通貨スワップ取引

 通貨スワップ取引(FX Swap)は現在価値(Present Value)の等しい異なる通貨同士のCF(の集合体)を一定期間、定期的に交換する取引で、デリバティブの一種である。変動金利同士で取引するのが普通である。

4.3 為替スワップ取引

 為替スワップ取引(Currency Swap)は現時点での外国通貨買い(売り)と将来時点での同一通貨の売り(買い)を同時に契約する取引であり、経済的には同一通貨間での直物買い(売り)および先渡売り(買い)を同時に契約するのに等しい。名前が類似しているものの、通貨スワップとは別物である。 

5. 直物顧客提示価格の決定過程

5.1 直物取引の取引レート

 銀行に直物取引を依頼した場合に、提示を受けるレートの決定方式は、まず取扱額が100,000米ドル未満の場合、対顧レート(後述)を適用する。取扱額が100,000米ドル以上の場合は銀行自体も通貨を調達する必要があるため、実勢市場相場から適用相場を都度決定する。
 午前9時に東京外国為替相場開始し、インターバンク市場価格(=市場実勢価格)の目安が定まり、午前9:55頃の市場実勢価格を元に銀行は公示仲値を決定する。公示仲値に基準鞘や金利要因、その顧客への手数料要因などを考慮した結果、その顧客へ提示する対顧レートを確定させ、午前10時に対顧レートを公示する。


図表6 取引別の直物対顧レート

取引別の相場
説明
外国通貨売相場
外国通貨の売渡に適用。公示仲値+ 外国通貨取扱手数料
一覧払輸入手形決済相場(ACC Rate)
:一覧払(At Sight)輸出手形を決済する際に適用。TTS + メール期間金利
TTS(電信売相場)
:売相場の基準相場。資金立替の無い取引に適用。公示仲値+ 基準鞘
公示仲値
:午前9:55頃の実勢相場を基に決定。他7つの基準となる。
TTB(電信買相場)
:買相場の基準相場。資金立替の無い取引に適用。公示仲値- 基準鞘
信用状付一覧払輸出手形決済相場(A/S Rate)
:信用状(L/C)付一覧払(At Sight)輸出手形を決済する際に適用。TTB - メール期間金利
外国通貨買相場
外国通貨の買取に適用。公示仲値- 外国通貨取扱手数料

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5.2 先物市場の取引レート

 為替先物(先渡取引)の顧客提示価格は以下で求める:


\begin{aligned}
先物相場= 実勢相場\pm スワップ・スプレッド\pm為替鞘
\end{aligned}

なお自社側から見て買いの場合にプラス、売りの場合にマイナスになる。
 スワップ・スプレッドとは(1)当該二通貨間の金利差:金利裁定、(2) 当該二通貨の需給関係(流動性)を加味した調達コストであり、為替鞘が銀行の利益となる。また現時点での裁定取引ができないように、直物相場のレートに各通貨の金利を加味したレートとして計算される。
 たとえばt=0(つまり現時点)における円ドルレートが1ドル= 80円であるとする。3ヶ月物円金利を0.25%、3ヶ月物米ドル金利を0.5%とする。このとき3ヶ月円ドル先物のレートは、現行のレートの各通貨を3ヶ月運用した際の価格で均衡することとなるので、


\begin{aligned}
1ドル\times (1+0.5\%) &= 80円\times(1+0.25\%)\\
∴ 1ドル&= 79.80円
\end{aligned}

6. 貿易取引

 貿易は外国為替取引の実需として外国為替市場と密接な関係を持つ。

6.1 貿易

 国境を超える売買契約を貿易という。物理的距離が遠い、買い手・売り手の顔が見えづらいため、輸出者は商品の換金に時間がかかり、資金繰りに悪影響を及ぼす。また支払の観点で輸出者・輸入者の一方が大きなリスクを負う。すなわち

  1. 商品代を前払にすると輸出者が商品を輸出しないリスクがある
  2. 商品代を後払にすると、輸入者が支払をしないリスクがある

さらに、自国と相手国で文化・法律・商習慣が異なり、紛糾時の調停が難しい。
 輸出入貿易は、当事者である輸出者・輸入者間で交渉が実施され、商品・数量・品質・単価・価格等に加え、「必要書類」、「建値」*7、「代金決済方法」等を取決め、売買契約を締結する。銀行は「代金決済」を代行する事が業務であり、その他の部分に介入しない。


図表7 貿易の仕組みの全体像
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6.1.1 建値

 輸出者から輸入者に商品が渡るまでの過程のどこまでの担当(責任)を、どちらが引き受けるのかを定めることを建値という。代表的なのはFOB, CFR, CIFである。


図表8 建値の種類

CFR
インボイス金額(輸入者
への請求金額)内訳
原価 原価、運賃 原価、運賃、保険料
危険負担の移転時期 指定船積港において貨物船積された時点で
危険負担は輸出者から輸入者へ移転
同左 同左
船舶手配者 輸入者 輸出者 輸出者
貨物保険手配者 輸入者 輸入者 輸出者
PLACE表示方法 FOB船積港名 CRB陸揚港名 CIF陸揚港名
運賃表示 FREIG(HT COLLECT 着払) FREIG(HT PREPAID 前払) FREIG(HT PREPAID 前払)

6.2 輸出手続

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6.3 輸入手続

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6.4 貿易に関わる外国為替商品

 貿易に関わる外国為替では、輸入者・輸出者の内、どちらがどれだけ(どの)リスクを取るのか?に尽きる。

 決済の方法には、送金と荷為替手形がある。

  1. 送金取引:リスクをカバーしない=一方が債務不履行リスクを請け負う。

(輸出者から見た)前受送金では輸入者の代金支払後に船荷を行ない、(輸出者から見た)後受送金では輸入者の代金支払前に船荷を行なう。

  1. 荷為替取引:荷為替を用いることでリスクを分担する。

 信用状付取引・信用状付無取引: D/P取引、D/A取引

6.5 送金決済の特徴

 送金決済は、リスクが輸入者・輸出者の一方に偏る点が特徴である。親会社・子会社間や永年の取引実績のある企業間等で実施される。

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6.5.1 前受送金

 輸入者からの送金を受けた後に品物の発送手続を行う場合を前受送金という。輸入者が商品受取リスクを一方的に負うことになる。

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  1. 輸出者は輸入者と売買契約を締結する。
  2. 輸入者は自身の取引先銀行である銀行Bに送金を依頼する。
  3. 銀行Bは輸出者の指定銀行である銀行Aに当該資金を支払う。
  4. 銀行Aは銀行Bから受けた資金を輸出者の口座に移す。
  5. 輸出者は製品を船会社へ商品の船積を依頼する。
  6. 船会社は商品を船積みする。
  7. 船会社は船荷証券を輸出者へ発行する。
  8. 輸出者は船積書類を輸入者へ送付する。
  9. 輸入者は船積書類のうち船荷証券を船会社へ呈示する。
  10. 輸入者は商品を受け取る。
6.5.2 後受送金

 輸出者の発送した商品を輸入者が受取った後に輸入者が送金を行う場合を後受送金という。輸出者が輸入者の債務不履行リスクを一方的に負うことになる。


図表 
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  1. 輸出者は輸入者と売買契約を締結する。
  2. 輸出者は製品を船会社へ商品の船積を依頼する。
  3. 船会社は商品を船積みする。
  4. 船会社は船荷証券を輸出者へ発行する。
  5. 輸出者は船積書類を輸入者へ送付する。
  6. 輸入者は船積書類のうち船荷証券を船会社へ呈示する。
  7. 輸入者は商品を受け取る。
  8. 輸入者は自身の取引先銀行である銀行Bに送金を依頼する。
  9. 銀行Bは輸出者の指定銀行である銀行Aに当該資金を支払う。
  10. 銀行Aは銀行Bから受けた資金を輸出者の口座に移す。
6.5.3 クリーンビル(Clean Bill)

※これは例外的に貿易に紐づいたものではない

 付属書類の無い外国払の約束手形為替手形等をクリーンビルという。主に小切手類が多い。

  • (1) Banker’s Check:銀行が振り出した小切手
  • (2) Personal Check:個人、一般法人の振り出した小切手
  • (3) Treasury Check:外国政府が振り出した小切手
  • (4) Money Order :送金人が銀行等から発行を受けた支払指図書

 クリーンビルには、①取立扱い、②買取扱いがある。

  • ①取立扱い:受取人からクリーンビルを受領すると銀行は海外支払銀行へ送付する。当該クリーンビルが決済され支払銀行より銀行が決済代り金を受領後、取引先へ支払が行われる。

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  • ②買取扱い:受取人からクリーンビルを受領した時点でメール期間金利を差し引いた額を銀行が立替払いを実施する。

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6.6 D/P,D/A取引

 送金では一方に極端にリスクが偏ることを改善した方法として信用状無しのに為替手形取引がある。これにはD/P,D/A取引の2種類がある。ただし輸出者側に2点課題がある。

  1. 輸入者の信用リスクを取る必要がある=支払までに輸入者がデフォルトする可能性がある。
  2. 輸入者が支払を実施するまでの資金繰りが必要となる。

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6.6.1 信用状無荷為替手形(D/P)取引(Documents against Payment)

 輸入者の支払を確認するまで銀行が船荷証券を預かることで、輸出者・輸入者の一方に偏るリスクを分割する取引を信用状無荷為替手形(D/P)取引という。

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6.6.2 信用状無荷為替手形(D/A)取引(Document against Acceptance)

 輸入者の荷為替手形の支払引受まで銀行が船荷証券を預かることで、輸出者・輸入者の一方に偏るリスクを軽減する取引を信用状無荷為替手形(D/A)取引という。

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6.7 信用状(Letter of Credit, L/C)

 発行銀行(輸入者の取引銀行)が一定条件(受益者が呈示する船積書類が信用状条件を充足していること)の下で受益者への一定金額の支払を約束する書状を信用状という。
 本来「輸出者→輸入者」という債権債務関係を「輸出者→L/C発行銀行」および「L/C発行銀行→輸入者」の2つに分割し、D/P・D/A取引の課題となるリスクをL/C発行銀行が輸出者に代わり引き受ける。信用状が条件を満たしていれば、輸出者は「発行銀行から」支払を受けることが出来る。さらに買取銀行に買取を依頼することで、即座に入金を可能にする。

6.7.1 確認信用状(Confirmed L/C)

 輸出者にとって発行銀行所在国のカントリーリスクが上昇した場合、発行銀行の信用リスクが高くなり、L/C利用の目的の一つである輸入者の信用リスク軽減が機能しない。そこで手数料を支払う代わりに国際的に信用の高い銀行に発行銀行の確認を実施し、発行銀行の支払が無い場合に保証銀行が立て替えることとする。

6.7.2 オープン信用状とリストリクト信用状(Open L/C, Restricted L/C)

 船積書類の買取銀行として特定の銀行が指定されている信用状をリストリクト信用状という。これとの対照の意味で輸出者が選ぶ任意の銀行で利用可能な普通の信用状をオープン信用状という。

6.7.3  信用状取引のメリット・デメリット

 L/Cが船積書類に記載された条件と合致していれば、仮に実際に輸出された商品に問題があったとしても、L/C発行銀行は支払を履行してしまう。したがって、輸出者・輸入者のリスクを銀行が負担するものの、別のリスクが生じていることと、そもそも信用状発行に伴うリスク負担に対して手数料がかかる。

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6.7.4 L/C付荷為替手形のスキーム

 信用状発行銀行による条件付支払確約(信用状条件を充足した船積書類の呈示を受ければ支払う約束(⑫で④の条件を充足していると信用状発行銀行は支払う))をする決済スキームが信用状付荷為替手形である。

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  1. 輸入者と輸出者が売買契約を締結する。
  2. 輸入者は自身の取引先銀行である信用状発行銀行Bに信用状の発行を依頼する。
  3. 信用状発行銀行Bは信用状を発効する。
  4. 信用状発行銀行Bは発行した信用状を信用状通知兼買取銀行Aに送付する。
  5. 信用状通知兼買取銀行Aは輸出者へ信用状の到着を通知する。
  6. 信用状到着の通知を受けて輸出者は商品の船積を船会社に依頼する。
  7. 船会社は商品の船積を行なう
  8. 船会社は船荷証券を輸出者に対し発行する。
  9. 輸出者は信用状通知兼買取銀行Aに対し信用状の買取*8を依頼し船荷証券を渡す。
  10. 信用状通知兼買取銀行Aは船荷証券を照会し信用状に記載された条件と相違が無いかを確認する。
  11. 相違が無いことを確認し次第、信用状通知兼買取銀行Aは信用状の買取代金を輸出者に支払う。
  12. 信用状通知兼買取銀行Aは信用状発行銀行Bに船積書類を送付する。
  13. 信用状発行銀行Bは輸入者に船積書類の到着を通知する。
  14. 輸入者は輸入代金を信用状発行銀行Bに支払い、その代わりに船積書類を受け取る。
  15. 信用状発行銀行Bは輸入代金を信用状通知兼買取銀行Aに支払う。
  16. 輸入者は船会社に船荷証券を呈示し製品を受け取る。
6.7.5 信用状付輸出為替取引

 信用状発行銀行Bと信用状通知兼買取銀行Aがノンコルレス先であるときなどに、補償銀行を通じて支払う決済方法を信用状付輸出為替取引という。信用状のやり取りおよび輸入代金のやり取りを補償銀行が仲介する。船荷に対して保険を掛けるのが普通である*9

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6.7.6 取立

 信用状取引では、輸出者は基本的に信用状通知銀行に信用状の買取を依頼することで輸出代金の早期回収を図る。しかし場合によっては、信用状付輸出為替を取立(買取に出さず輸入者の支払を待つ)に出す。主要な理由は以下の場合がある:

  1. 輸出者の依頼人信用に不安がある場合(買取を買取銀行から断られた)。
  2. 重大なディスクレパンシー(後述)があり、他の方法が不適当な場合。
  3. 輸出者が金利支払を回避するために自主的に取立を希望する場合。

 取立扱いには3つ種類がある:

  • レミッタンス方式(Remittance):L/C発行銀行に輸出書類を直送し、同行から支払・買取銀行が代り金を受領次第、取引先へ支払をする方式。
  • リンバース方式(Reimbursement):L/C条件に則り輸出書類をL/C発行銀行へ送付し、資金は補償銀行に請求し、(輸入者からの支払前でも)補償銀行からの代り金受領後、輸出者へ支払う方式。
  • 取次(再割)方式:・他行にRestrictされた信用状が持込まれた際、他行に買取・支払を求め、取立銀行が他行から代わり金を受領後、輸出者へ支払う方式。
6.7.6 ディスクレパンシー

 為替手形・船荷書類と信用状条件とに不一致があることをディスクレパンシー(Discrepancy 通称:ディスクレ)という。ディスクレがあった場合、発行銀行は支払を拒否できる。そこで、L/Cを発行銀行に送る前に買取銀行がディスクレを発見した場合、買取銀行は以下の措置を提案する:

  1. 輸出者による訂正(※輸出者の作成した資料に誤りがある場合)
  2. 書類発行機関による訂正(※輸出者以外の作成した資料に誤りがある場合)
  3. 発行銀行へL/Cの条件変更を依頼(Amendという)(※日数がかかるのであまり多くない)
  4. Cable Negotiation = 発行銀行へディスクレの存在と受入可否の確認の電信を打つ。
  5. Letter of Guarantee (L/G)付買取(※買取銀行から拒絶された場合、買戻す事を約した買取)
  6. 取立扱い:ディスクレとされる可能性を受け入れ、そのまま発行銀行へL/Cを送る。

6.8 輸入者金融

 D/P取引、L/C付取引の場合、輸入者は、輸入書類が到着し次第、輸入費用支払が必要となる。しかし商品が未だ手元に無いため、商品売買による費用回収ができない。そこで輸入者はもし余裕資金が無い場合、資金繰りのためのファイナンスを受ける必要が発生し得る。
(1) 輸入ユーザンス:銀行が輸入費用を立替え、一定期間支払を猶予
  ①自行ユーザンス:取引銀行が輸入者に代わり立替
  ②当行引受、外銀ユーザンス:買取銀行・補償銀行に対し、L/C発行銀行が支払を約束
(2) シッパーズ・ユーザンス(Shipper’s usance):輸出者が自己を受取人として振出した為替手形を輸入者が引受ける。

参考

為替手形 振出人の支払人に宛てた、受取人または所持人に対して一定金額を支払うべきことを委託する旨の文言を記載する有価証券。約束手形の法的本質は支払約束だが、為替手形の法的本質は支払委託にある。外国為替において、資金の取り立てのために為替手形を用いる。輸出業者が手形の振出人、輸入業者が名宛人(支払人)、指定銀行が受取人となる。
自己受為替手形 自己受為替手形のテクニカルな使い方として、取引先(債務者)の売掛金の手形化がある。相手が売掛金を支払ってくれないとき、売掛金の回収を容易にしたいため、手形に変えたいと考えたとする。このとき、取引先が当座口座を持っていない場合、約束手形を振出すことができないが、自身を振出人かつ受取人、取引先を支払人とした為替手形を振出すことで解決できる。
自己宛為替手形 自己受為替手形のテクニカルな使い方として、取立代金の節約がある。全国展開している企業が、その支店で商品を仕入れた場合も、東京本社から一括して代金を支払うようにしているとする。ある支店が地元の企業から商品を仕入れた場合、東京本社が約束手形を振り出して支払うと、東京から地方が遠隔地の場合には、取立手数料がかかる。そこで、支店から取引先に対して、支店を名宛人、取引先を指図人とする為替手形を本社が振出す。こうすることで、取立手数料をかけずに本社が支払業務を行ったことになる。この場合、本社と支店は同じ企業なので自己宛為替手形になる。

*1:例外事例としては、貿易企業が輸出代金として得た米ドルを直近の輸入代金支払に充てるために米ドルのまま自社の外貨預金に入金することが考えられる。

*2:両同支店が口座を共有しており、また資金授受を許容されている場合

*3:以降、ドルと記述。

*4:コルレス先ではない場合、ノン・コルレス先という。

*5:デポコルレス先ではない場合、ノン・デポコルレス先と呼ぶ。

*6:外国為替市場では例外的に、先渡取引を指して先物取引と呼称する。ややこしいので注意。

*7:値段の建て方(=輸出者・輸入者のどちらが運賃、保険料etc. を持つのか)を指す。後述。

*8:買取とは言っているものの、手形割引と同様に与信取引であるため、断られる可能性がある。

*9:ただしL/C付荷為替手形でもつけるのは普通である。

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