- 1.今日のポイント
- 3. ニュース(1):米シェヴロンがエネルギー事業を買収へ
- 4. ニュース(2):海底ケーブル利権
- 5. ニュース(3):スペインが北朝鮮に注目する訳
- 6. ニュース(4):金(ゴールド)マーケットの主要プレイヤー、中央銀行
1.今日のポイント
●【米イスラエル】シェヴロンがエネルギー事業を買収へ
●【ロシア】北極圏での海底ケーブル敷設へ動き始める
●【北朝鮮】スペイン大手紙が日朝関係に言及
●【国際金融】金マーケットで主役が交代へ
2. マーケット指標
指数 | 前日終値 | 増減値 | 増減率 | 日付 |
---|---|---|---|---|
日本 | ||||
日経平均 | 22,717.48 |
21.06 |
0.0927% |
20日終値 |
TOPIX | 1,577.03 |
3.18 |
0.20% |
20日終値 |
JASDAQ | 162.16 |
▲0.42 |
▲0.26% |
20日終値 |
東証マザーズ | 987.78 |
2.72 |
0.28% |
20日終値 |
日本国債10年物 | 0.019 |
▲0.002 |
▲9.52% |
20日終値 |
米国 | ||||
ダウ平均 | 26,680.87 |
8.92 |
0.0334% |
20日終値 |
S&P500 | 3,251.84 |
27.11 |
0.837% |
20日終値 |
NASDAQ | 10,767.09 |
263.90 |
2.51% |
20日終値 |
SOX指数 | 2,110.47 |
41.48 |
1.98% |
20日終値 |
米国債10年物 | 0.614 |
▲0.015 |
▲2.31% |
20日終値 |
欧州・アジア | ||||
英FTSE100 | 6,261.52 |
▲28.78 |
▲0.459% |
20日終値 |
独DAX | 13,046.92 |
127.31 |
0.981% |
20日終値 |
上海総合指数 | 3,314.15 |
100.02 |
3.06% |
20日終値 |
印SENSEX30 | 37,418.99 |
398.85 |
1.07% |
20日終値 |
外国為替 | ||||
USDJPY | 107.24 |
0.00 |
0.00% |
21日 06:25:42 |
EURJPY | 122.72 |
▲0.01 |
▲0.00% |
21日 06:26:31 |
EURUSD | 1.1444 |
0.0000 |
0.00% |
21日 06:27:11 |
コモディティ・その他 | ||||
原油先物(WTI) | 40.80 |
0.05 |
0.12% |
20日終値 |
原油先物(Brent) | 43.22 |
▲0.01 |
▲0.02% |
21日 06:28:04 |
金先物(COMEX) | 1,818.95 |
8.95 |
0.49% |
20日終値 |
銅先物(COMEX) | 2.9213 |
0.0168 |
0.58% |
20日終値 |
BTCJPY(Bitfinex) | 983,943 |
▲15 |
0.00% |
21日 06:30:11 |
3. ニュース(1):米シェヴロンがエネルギー事業を買収へ
(1) 知っておきたいこと
今回の買収の結果、シェヴロンが「デンバー・ジュールズバーグ盆地とパーミアン盆地におけるシェール生産で存在感を強める」ことが注目されているようだ*1。しかし、それ以上に注目すべきは、中東事業である。
(図表1 東地中海周辺のガス田)

(出典:Deutsche Welle*2)
このノーブル・エナジーがイスラエルで開発しているガス田にレヴィアサン・ガス田というオフショアのガス田がある。このガス田はイスラエルのエネルギー政策を根本から変えたのだった。実際、このガス田を開発したことで、もともと天然ガスをエジプトから輸入してきたイスラエルはエジプトへの天然ガスの純輸出国になったのである。
そんなガス田の開発者がシェヴロンに移ったのは大きな意味合いを持つように考えている。シェヴロンはいわゆるスーパーメジャーと呼ばれるグローバル・エネルギー企業の一角を担っており、2019年度ベースで世界第8位の売上規模を誇る巨大企業である*3。となれば米連邦議会への影響力も小さくはないと推察できるのであって、米国の対イスラエル政策および米国の安全保障に対しても影響力があると考えられるのである。
イラン情勢をはじめとして中東全体が大きく揺れ動いている中で、エジプト議会がリビアへの派兵を昨日承認した*4。東地中海側もキナ臭くなっているのであって、そうした中で米国がこの地域へのコミットメントを深めた、という意味にも今回の買収を解釈することができるのである。
4. ニュース(2):海底ケーブル利権
(1) 知っておきたいこと
- ロシアの携帯電話大手メガフォンと国営地質探査企業ロスゲオロギヤが北極圏に通信回線を敷設するために必要な海底探査を開始した
- この回線は欧州からアジアへのデータ転送の最短ルートになる予定だという
国家が覇権を握るために確保すべき3つの要素があると言われているが、そのうちの2つが金融と情報(通信技術)である*5。現在の情報通信技術として中核を担っているのはインターネットであるが、その通信(特に国家間でのそれ)を支えているのが、過去にも取り上げたことがあるが、実は海底ケーブルなのである。衛星を介しての無線通信も技術的には可能で実証されてはいるものの、商業面ではコスト的に厳しいものがあるため、海底ケーブルが主流である。
(図表2 ユーラシア大陸を中心とした海底ケーブル網)

(出典:Submarine Cable Map*6)
他方で、特にアフリカ大陸をつなぐものを中心としてGoogleやFacebookなどの巨大通信企業が海底ケーブルの敷設に投資を行なってきている。その海底ケーブルの敷設といえば、投資規模が巨大になることや非常に限られた企業しかそのノウハウをもっていなかったことがあり、フィンランドのノキアネットワークス(旧・仏アルカテル・ルーセント)に米タイコ*7、更にわが国のNECが寡占してきたマーケットだった。しかし今や江蘇亨通光電股分有限公司(旧・華為技術マリン・システムズ)がチャレンジャーとなって市場構造が変化している。
国策的な意味合いが強いこともあるこのマーケットにおいて、ロシアが北極圏での敷設に動いたことは興味深い。温暖化を受けて北極航路の開発が進んできた中で、北極圏の価値向上に向けて同国が動いているからだ。とはいえ、筆者はこの動きが日本に意味を有しているかといえば疑問である。
ロシアは昨年、インターネットの遮断実験を当局が行い成功させている*8。これは、何らかの事態が生じたときにインターネットの国外との通信をロシア当局が遮断できるようにするというものである。これを踏まえるならば、ロシアへの通信依存は安全保障上、センシティブな問題をもたらすのである。
とはいえ、ロシアとのビジネスが今後増えていく可能性に注目するのならば、北極圏の開発に注目した方が良いのは言うまでもなく、その一つとして今回の通信ケーブル敷設にも目を向けておきたい。
(2) まとめ
- 海底ケーブル市場は寡占市場である
- ロシア当局はインターネット遮断実験に成功しており、ロシアを経由する通信は安全保障上のリスクが高い
5. ニュース(3):スペインが北朝鮮に注目する訳
(1) 知っておきたいこと
今回、この記事を取り上げたのはその内容自体を取り上げたいからではなく、先日少し言及したスペインと北朝鮮の関係について直近で理解しておきたいことを述べるためだ。
昨年、北朝鮮を巡る話で衝撃を与えたのが、「在スペイン北朝鮮大使館襲撃事件」だった*9。これ以前もEUに準じて北朝鮮との関係を徐々に厳格にしてきたスペインではあるが、2000年代には積極的に北朝鮮とかかわってきた。そのような中でも注目すべき人物がアレハンドロ・カオ・デ・ベノス(Alejandro Cao de Benós)である。同人は北朝鮮シンパとして長年活動してきたのだが、近年では北朝鮮政府主催のブロックチェーン・仮想通貨カンファレンスにおいて運営委員長を務めているのである*10。もちろん、同人はスペインでもマークされている極左派の活動家ではあるが、スペインが北朝鮮の「近代化」に加担していることは非常に興味深い。
余談にはなるが、このブロックチェーン・カンファレンス、技術面での顧問としてChris Emmsという英国人が関与していた*11。同人はジブラルタルで生まれており、英国とスペインと関係を有する人物なのであって、無論邪推ではあるものの、北朝鮮の仮想通貨開発にスペインと英国が関わっているという推測ができるのである。
6. ニュース(4):金(ゴールド)マーケットの主要プレイヤー、中央銀行
(1) 知っておきたいこと
- 金マーケットで主要な買い手がロシアからトルコに移りつつある
- 米国との対立が深まってきたことを受けて米ドル決済停止リスクをヘッジすべく金買いを加速させている
金(ゴールド)マーケットでの主要な買い手は、ヘッジファンドといった投資ファンドではなく、昔から中央銀行である。ブレトン・ウッズ体制下では金の移送を行う必然性があったためにこれは当然ではあるが、未だにそうなのである。
その主要な取引として2010年7月29日に突如英Financial Timesがリークしたのが、「BIS金スワップ」である:
簡単に説明しよう。元来、1999年9月26日締結されたワシントン合意があるために、中央銀行は売り買いできる金(ゴールド)の量を制限されていた。しかし、各国の中央銀行は「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる国際決済銀行(BIS)から金を担保に米ドルを借り入れる一方でわざとその金を「質流れ」にすることで、実質的な金売却(及び米ドル調達)を行うというスキームを構築してきた。これがBIS金スワップである。このように表向きには見えづらい形で金マーケットは価格が形成されてきたのであった(ちなみに最早このスキームは機能していない)。
最近、中国の大手企業が偽金を用いて資金調達を行なっていたことが判明したりと、偽金問題が取り沙汰されている。これはリーマンショック後を彷彿とさせる。
このときももともと中国からこの偽金が運ばれてきたことが取り沙汰されたのだった。このように国際的な金マーケットの動きは、表層的な地政学リスクの高まりだけではない、国際政治の動きと密接にリンクしているのである。
(2) まとめ
- 金(ゴールド)マーケットの主導役は中央銀行である
- 中国がターゲットにされている可能性に留意すべきである
*1:https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-20/chevron-agrees-to-buy-noble-energy-for-5-billion参照。
*2:https://www.dw.com/en/eastmed-gas-paving-the-way-for-a-new-geopolitical-era/a-49330250参照。
*3:https://www.statista.com/chart/17930/the-biggest-oil-and-gas-companies-in-the-world/参照。
*4:https://www.pbs.org/newshour/world/egypts-parliament-approves-troop-deployment-to-libya参照。
*5:もう1つは失念…
*6:https://www.submarinecablemap.com/参照。
*8:https://www.themoscowtimes.com/2019/12/24/russias-interent-ready-isolation-officials-say-after-partial-shutdown-a68728参照。
*9:詳しくはたとえばhttps://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20190402-00120641/を参照されたい。
*10:https://korea-dpr.com/dprk-blockchain-conference-2019.html参照。
*11:今はしていないという(https://spectrum.ieee.org/tech-talk/computing/software/north-korea-blockchain-conference参照)。