「大人の教養・知識・気付き」を伸ばすブログ

一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。現在、コンサルタントの雛になるべく、少しずつ勉強中です(※2024年12月10日改訂)。

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アクティブ・ポートフォリオ・マネジメント(その02/X)

 定量的なアクティブ運用の妙味を議論すべく、

とその続編

を整理していく*1

2. コンセンサス期待リターン

2.11 数学的な補足

2.11.1 準備

 まず以下のように変数を導入する。

\boldsymbol{h} リスク資産の保有ウェイト・ベクトル
\boldsymbol{f} 期待超過リターン・ベクトル
\boldsymbol{\mu} \mathrm{CAPM}の下における期待超過リターン・ベクトル
\boldsymbol{V} リスク資産の超過リターンの分散共分散行列(正則と仮定する)
\boldsymbol{\beta} 想定する全資産のベータを成分とするベクトル
\boldsymbol{e} すべての成分が1であるようなベクトル

また超過リターンの標準偏差(年率換算)をリスクと呼ぶことにする。

2.11.2 仮定

 その期間の間にポートフォリオのリバランスを行なわない1期間を考え、以下の仮定

\mathrm{A}_{1} 無リスク資産が存在する。
\mathrm{A}_{2} すべての超過リターンについて、一次・二次モーメントが存在する。
\mathrm{A}_{3} 無リスクですべてに投資するポートフォリオは構築できない。
\mathrm{A}_{4} 最小リスクですべてに投資するポートフォリオCの期待超過リターンは正だとする。

をおく。

2.11.3 特性ポートフォリオ

 資産はさまざまな属性を持つ。たとえばベータ、期待リターン、E/P時価総額や経済セクターへの所属などである。
 特性ポートフォリオ(\mathrm{characteristic\ portfolio})は、定義された属性を一意に捉える。特性ポートフォリオを構築する手順は、属性とポートフォリオを結びつけることを可能にする。そしてその特性ポートフォリオのそれとの共分散という意味での属性へのエクスポージャを特定できる。
 この過程は可逆的と言える。すなわちポートフォリオから始めて、このポートフォリオを最も効果的に表現する属性を見出すのである。
 ひとたび属性とポートフォリオの関係を構築することができれば、\mathrm{CAPM}は、その特性ポートフォリオの超過リターンに関して経済的な動機付けのある説明が可能になる。
 {}^{t}\!\boldsymbol{a}=\begin{bmatrix}a_1,a_2,\cdots,a_n\end{bmatrix}を資産の属性(特性)を表すベクトルだとする。



命題1:特性ポートフォリオ a\neq0であるような任意の属性に対して、最小のリスクでaへの単位エクスポージャを持つポートフォリオ\boldsymbol{h}_aが一意に存在する。その特性ポートフォリオのウェイト\boldsymbol{h}_aは、


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_a=\displaystyle{\frac{\boldsymbol{V}^{-1}\boldsymbol{a}}{{}^{t}\!\boldsymbol{a}\boldsymbol{V}^{-1}\boldsymbol{a}}}
\end{aligned}

で与えられる。
 特性ポートフォリオは、必ずしもすべてに投資する必要はない。またロング・ポジションとショート・ポジションから構成されること、特定のレバレッジが掛かっている可能性もある。



命題2:特性ポートフォリオの分散 命題1における特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_aの分散は


\begin{aligned}
\sigma_a^2={}^{t}\!\boldsymbol{h}_a\boldsymbol{V}\boldsymbol{h}_a=\displaystyle{\frac{1}{{}^{t}\!\boldsymbol{a}\boldsymbol{V}^{-1}\boldsymbol{a}}}
\end{aligned}

で与えられる。



命題3:特性ポートフォリオのベータ 命題1の特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_aを所与とする。特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_aに対するすべての資産のベータ\boldsymbol{\beta}_a\boldsymbol{a}に等しい、すなわち


\begin{aligned}
\boldsymbol{\beta}_a=\boldsymbol{a}=\displaystyle{\frac{\boldsymbol{V}\boldsymbol{h}_a}{\sigma_a^2}}
\end{aligned}

である。



命題4:特性ポートフォリオ同士の共分散 命題1の特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_aを所与とする。特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_a,\boldsymbol{h}_bそれぞれの属性a,bを考え、a_b,b_aをそれぞれ\boldsymbol{h}_baに対するエクスポージャおよび\boldsymbol{h}_abに対するエクスポージャだとする。このとき\boldsymbol{h}_a\boldsymbol{h}_bの共分散\sigma_{a,b}は、


\begin{aligned}
\sigma_{a,b}=a_b\sigma_a^2=b_a\sigma_b^2
\end{aligned}

を満たす。



命題5:特性ポートフォリオ・エクスポージャの定数倍 命題1の特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_aを所与として、\kappa\gt0に対して、\kappa aの特性ポートフォリオ


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{\boldsymbol{h}_a}{\kappa}}
\end{aligned}

で与えられる。すなわち、特性ポートフォリオは属性への単位エクスポージャを持つから、属性に\kappaを掛ければ、単位エクスポージャを維持するには\kappaで特性ポートフォリオを除する必要があることになる。



命題6:特性ポートフォリオ・エクスポージャの線形結合 命題1の特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_aを所与とする。特性aは特性b,cの線形結合として表されるならば、aの特性ポートフォリオb,cの特性ポートフォリオの線形結合である。特にa=\kappa_b b+\kappa_c cであるならば、


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_a=\left(\displaystyle{\frac{\kappa_{b}\sigma_{a}^2}{\sigma_{b}^2}}\right)\boldsymbol{h}_{b}+\left(\displaystyle{\frac{\kappa_{c}\sigma_{a}^2}{\sigma_{c}^2}}\right)\boldsymbol{h}_{c}
\end{aligned}

で与えられる。ここで


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{1}{\sigma_a^2}}=\left(\displaystyle{\frac{\kappa_{b}a_{b}}{\sigma_{b}^2}}\right)+\left(\displaystyle{\frac{\kappa_{c}a_c}{\sigma_{c}^2}}\right)
\end{aligned}

である。


(\because 定義した最適化問題を解くことによって、特性ポートフォリオ保有分を導き出す。ポートフォリオは、制約条件として特性aへのエクスポージャー1であるという制約条件において最小リスクを取る。{}^{t}\!\boldsymbol{h}\boldsymbol{a}=1という条件の下で{}^{t}\!\boldsymbol{h}\mathit{V}\boldsymbol{h}を最小化する1階条件は、


\begin{aligned}
{}^{t}\!\boldsymbol{h}\boldsymbol{a}=1\\
\mathit{V}\boldsymbol{h}-\theta\boldsymbol{a}=0
\end{aligned}

である。ここで\thetaラグランジュ係数である。2つ目の条件は、\boldsymbol{h}が比例定数を\thetaとして\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{a}に比例することを意味している。これを解くと、


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_a=\displaystyle{\frac{\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{a}}{\boldsymbol{a}\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{a}}}
\end{aligned}

であり、


\begin{aligned}
\theta=\displaystyle{\frac{1}{\boldsymbol{a}\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{a}}}
\end{aligned}

である。
 2つ目はポートフォリオの分散の定義と


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_a=\displaystyle{\frac{\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{a}}{\boldsymbol{a}\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{a}}}
\end{aligned}

から導くことができ、3つ目はポートフォリオPに関して\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_P}{\sigma_P^2}}とする\betaの定義を用いれば同様に導くことができる。
 4つ目については、


\begin{aligned}
\sigma_{\mathrm{ad}}&={}^{t}\!\boldsymbol{h}_PV\boldsymbol{h}_d\\
&=\left({}^{t}\!\boldsymbol{h}_{P}V\right)\boldsymbol{h}_d\\
&=\left(\sigma_a^2{}^{t}\!\boldsymbol{a}\right)\boldsymbol{h}_d\\
&=a_d\sigma_a^2
\end{aligned}

および


\begin{aligned}
\sigma_{\mathrm{ad}}&={}^{t}\!\boldsymbol{h}_PV\boldsymbol{h}_d\\
&={}^{t}\!\boldsymbol{h}_{P}\left(V\boldsymbol{h}_d\right)\\
&={}^{t}\!\boldsymbol{h}_a\left(\sigma_d^2\boldsymbol{s}\right)\\
&=d_a\sigma_d^2
\end{aligned}

を得る。これらの結果を用いて整理することで5つ目および6つ目を示すことができる。 blacksquare)

ベータ・ポートフォリオ

 \boldsymbol{\beta}が属性だと仮定する。ここで\boldsymbol{\beta}は何らかのベンチマークポートフォリオBにより


\begin{aligned}
\boldsymbol{\beta}&=\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_B}{\sigma_B^2}}
\end{aligned}

と定義する。このときベンチマークはベータの特性ポートフォリオ、すなわち


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_{\boldsymbol{\beta}}&=\displaystyle{\frac{\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{\beta}}{{}^{t}\!\boldsymbol{\beta}\mathit{V}^{-1}\boldsymbol{\beta}}}\\
&=\boldsymbol{h}_{B}
\end{aligned}

で、


\begin{aligned}
\sigma_B^2&={}^{t}\!\boldsymbol{h}_B\mathit{V}\boldsymbol{h}_B\\
&=\displaystyle{\frac{1}{{}^{t}\!\boldsymbol{\beta}\mathit{V}\boldsymbol{\beta}}}
\end{aligned}

である。したがってベンチマークはベータが1であるような最小リスク・ポートフォリオである。これは直観的に分かる。すべての\beta=1であるようなポートフォリオは、同一のシステマティック・リスクを持つ。ベンチマークは残差リスクを全くとっていないから、全\beta=1ポートフォリオの最良トータルリスクを持つ。
 命題4を用いることで、ポートフォリオB,Cの関係性は


\begin{aligned}
\sigma_{B,C}=e_B\sigma_C^2=\beta_C\sigma_B^2
\end{aligned}

で与えられる。

シャープ・レシオ

 任意のリスクのあるポートフォリオP(\sigma_P\gt0)について、シャープ・レシオはポートフォリオPの期待超過リターンf_PポートフォリオPのリスクで割ることで得られる。すなわち


\begin{aligned}
\mathrm{SR}_P=\displaystyle{\frac{f_P}{\sigma_P}}
\end{aligned}

で定義される。



命題7 シャープ・レシオ 期待超過リターンfを持つ特性ポートフォリオqとする、すなわち


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_q=\displaystyle{\frac{V^{-1}\boldsymbol{f}}{{}^{t}\!\boldsymbol{f}V^{-1}\boldsymbol{f}}}
\end{aligned}

とする。このとき

  1. \mathrm{SR}_q=\displaystyle{\max_{P}\mathrm{SR}_P}=\left({}^{t}\!\boldsymbol{f}V^{-1}\boldsymbol{f}\right)^{\frac{1}{2}}
  2. f_q=1,\sigma_q^2=\displaystyle{\frac{1}{{}^{t}\!\boldsymbol{f}V^{-1}\boldsymbol{f}}}
  3. \boldsymbol{f}=\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_q}{\sigma_q^2}}=\left(\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_q}{\sigma_q}}\right)\mathrm{SR}_q
  4. \rho_{P,q}ポートフォリオP,qとの共分散とすれば、

    \begin{aligned}\mathrm{SR}_P=\rho_{P,q}\mathrm{SR}_q\end{aligned}
  5. リスク資産に投資したqの比率は

    \begin{aligned}e_q=\displaystyle{\frac{f_C\sigma_q^2}{\sigma_C^2}}\end{aligned}

(\because 任意のポートフォリオ\boldsymbol{h}_Pについて、そのシャープ・レシオ\mathrm{SR}_P


\begin{aligned}
\mathrm{SR}_P=\displaystyle{\frac{f_P}{\sigma_P}}
\end{aligned}

で与えられる。任意の正の定数\kappaに対して、保有量が\kappa\boldsymbol{h}_Pであるようなポートフォリオは、\mathrm{SR}_Pに等しいシャープ・レシオを持つ。したがって、最大のシャープ・レシオを探せば、期待超過リターンは1で最小リスクを持つと設定できる。そして{}^{t}\!\boldsymbol{h}\boldsymbol{f}=1という制約条件の下で{}^{t}\!\boldsymbol{h}\mathit{V}\boldsymbol{h}を最小化する。これはfを持つ特性ポートフォリオ\boldsymbol{h}_qを得る問題である。
 2,3つ目は特性ポートフォリオの性質である。4つ目については、3.に\boldsymbol{h}_Pを掛けてから\sigma_Pで割ると、


\begin{aligned}
\mathrm{SR}_P&=\displaystyle{\frac{f_P}{\sigma_P}}\\
&=\displaystyle{\frac{{}^{t}\!\boldsymbol{h}_P\boldsymbol{f}}{\sigma_P}}\\
&=\sigma_{P,q}\left(\displaystyle{\frac{f_q}{\sigma_q^2}}\right)\left(\displaystyle{\frac{1}{\sigma_P}}\right)
\end{aligned}

すなわち


\begin{aligned}
\mathrm{SR}_P=\left(\displaystyle{\frac{\sigma_{P,q}}{\sigma_P\sigma_q}}\right)\left(\displaystyle{\frac{f_q}{\sigma_q}}\right)=\rho_{P,q}\mathrm{SR}_q
\end{aligned}

を得る。5つ目は、


\begin{aligned}
\sigma_{q,C}=e_q\sigma_C^2=f_C\sigma_q^2
\end{aligned}

を得る。 \blacksquare)


 アルファを\boldsymbol{\alpha}=\boldsymbol{F}-\boldsymbol{\beta}f_Bで定義する。\boldsymbol{h}_Aをアルファに関する特性ポートフォリオ、すなわち100パーセントのアルファに関する最小リスクポートフォリオとする(こういったポートフォリオは普通、レバレッジを掛けることが多い。)。これは\boldsymbol{h}_B\boldsymbol{h}_qで書くことができる。このときアルファとベータの関係性は、\sigma_{B,A}=\alpha_B\sigma_A^2=\beta_A\sigma_B^2である。しかし\alpha_B=0であり、したがってA,Bは相関を持たないから、\beta_A=0である。
 多くの場合、期待超過リターンを説明する完全に投資したポートフォリオ*2が存在すると仮定するのが便利である。ポートフォリオCの期待超過リターンが正であるときに意味がある。



命題8 アルファ・ポートフォリオ f_C\gt0と仮定する。

  1. ポートフォリオqはネットベースでロングである。すなわちe_Q\gt0である。ポートフォリオQe_q\boldsymbol{f}の特性ポートフォリオとする。ポートフォリオQは完全に投資されており、\boldsymbol{h}_Q=\displaystyle{\frac{\boldsymbol{h}_q}{e_q}}で与えられる。加えて、\mathrm{SR}_{Q}=\mathrm{SR}_{q}で、ポートフォリオQとの共分散として\sigma_{P,Q}を持つ任意のポートフォリオPに対して、

    \begin{aligned}\mathrm{SR}_{P}=\rho_{P,Q}\mathrm{SR}_{Q}\end{aligned}

    である。
  2. \displaystyle{\frac{f_C}{\sigma_C^2}}=\displaystyle{\frac{f_Q}{\sigma_Q^2}},\boldsymbol{f}=f_Q\left(\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_Q}{\sigma_Q^2}}\right)=f_Q\boldsymbol{\beta}_{\mathrm{w.r.t.}\ Q}
  3. \beta_Q=\displaystyle{\frac{f_B\sigma_Q^2}{f_Q\sigma_B^2}}
  4. もしベンチマークが完全に投資されている、すなわちe_B=1ならば、\beta_Q=\displaystyle{\frac{\beta_Cf_B}{f_C}}である。

(\because 1つ目は、e_Q\sigma_C^2=f_C\sigma_Q^2およびf_C\gt0であるから、e_q\gt0である。命題1より


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_Q&=\displaystyle{\frac{\boldsymbol{h}_q}{e_q}}\\
&=\displaystyle{\frac{\boldsymbol{h}_q\sigma_C^2}{f_C\sigma_q^2}}
\end{aligned}

を得る。ポートフォリオQ保有量はq保有量に正の比例定数を掛けたものであり、シャープ・レシオや他のポートフォリオとの相関係数も同様である。
 2つ目については、まず\boldsymbol{f}=\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_q}{\sigma_q^2}}から始め、\displaystyle{\frac{1}{\sigma_q^2}}=\displaystyle{\frac{f_C}{e_q\sigma_C^2}}を用いる。これにより


\begin{aligned}
\boldsymbol{f}=f_C\left(\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_Q}{\sigma_C^2}}\right)
\end{aligned}

を得る。これに\boldsymbol{h}_Qを掛けることで、


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{f_C}{\sigma_C^2}}&=\displaystyle{\frac{f_Q}{\sigma_Q^2}},\\
\boldsymbol{f}&=f_Q\left(\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_Q}{\sigma_Q^2}}\right)
\end{aligned}

である。3つ目については、


\begin{aligned}
\boldsymbol{f}=\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_q}{\sigma_q^2}}=\left(\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_q}{\sigma_q}}\right)\mathrm{SR}_q
\end{aligned}

\boldsymbol{h}_Bを掛けることで


\begin{aligned}
f_B&=\left({}^{t}\!\displaystyle{h}_B\mathit{V}\boldsymbol{h}_Q\right)\left(\displaystyle{\frac{f_Q}{\sigma_Q^2}}\right)\\
&=\left(\displaystyle{\frac{{}^{t}\!\displaystyle{h}_B\mathit{V}\boldsymbol{h}_Q}{\sigma_B^2}}\right)\left(\displaystyle{\frac{\sigma_B^2f_Q}{\sigma_Q^2}}\right)
\end{aligned}

を得、したがって


\begin{aligned}
f_B=\boldsymbol{\beta}_Q\left(\displaystyle{\frac{\sigma_B^2f_Q}{\sigma_Q^2}}\right)
\end{aligned}

である。
 4つ目は、e_B=1および\sigma_{B,C}=e_B\sigma_C^2=\beta_C\sigma_B^2を用いれば、


\begin{aligned}
\beta_C=\displaystyle{\frac{\sigma_{C}^2}{\sigma_{B}^2}}
\end{aligned}

である。これに\displaystyle{\frac{f_{C}}{\sigma_{C}^2}}=\displaystyle{\frac{f_{Q}}{\sigma_{Q}^2}}を併せることで


\begin{aligned}
\boldsymbol{\beta}_Q=\displaystyle{\frac{\boldsymbol{\beta}_Cf_B}{f_C}}
\end{aligned}

を得る。 \blacksquare)

2.11.4 効率的フロンティア

 2つの特性について完全に投資されたポートフォリオに注目する。すなわちポートフォリオCおよびポートフォリオQである。この観点では効率的フロンティアと呼ばれる分離可能なポートフォリオの集合を導入したい。ポートフォリオCおよびQ自身もこの集合に含まれる。実際、これから見るように、効率フロンティア上の全ポートフォリオは、ポートフォリオCおよびQの線形結合であるから、効率的フロンティアの各元は特性ポートフォリオである。効率的フロンティアのポートフォリオはのリターンおよびリスクの特性はポートフォリオCおよびQのリターン・リスク特性でパラメータ化できる。
 完全に投資されたポートフォリオが効率的であるとは、同じ期待リターンを持つすべてのポートフォリオが(同じ)最小リスクを持つことを言う。効率フロンティア上のポートフォリオは制約条件


\begin{aligned}
{}^{t}\!\boldsymbol{e}\boldsymbol{h}&=1\\
{}^{t}\!\boldsymbol{f}\boldsymbol{h}&=f_P
\end{aligned}


の下で最小化問題\mathrm{Minimize} \displaystyle{\frac{{}^{t}\!\boldsymbol{h}\mathit{V}\boldsymbol{h}}{2}}を解けばよい。これにより、


\begin{aligned}
\boldsymbol{h}_P=\left(\displaystyle{\frac{f_Q-f_P}{f_Q-f_C}}\right)\boldsymbol{h}_C+\left(\displaystyle{\frac{f_P-f_C}{f_Q-f_C}}\right)\boldsymbol{h}_Q
\end{aligned}

を得る。ここで\boldsymbol{h}_{C}および\boldsymbol{h}_{Q}\boldsymbol{f}\neq\boldsymbol{e}を仮定して求めている。したがって効率的フロンティア上のポートフォリオ\boldsymbol{h}_{C}および\boldsymbol{h}_{Q}の線形結合で得られる。
 ここで特性とポートフォリオが一対一で対応することを思い出そう。したがって\boldsymbol{a}_Pを用いることで


\begin{aligned}
\boldsymbol{a}_P&=w_C\boldsymbol{e}+w_Q e_qf\\
&=\displaystyle{\frac{1}{\sigma_P^2\left(f_Q-f_C\right)}}\left\{\sigma_C^2\left(f_Q-f_P\right)\boldsymbol{e}+\sigma_Q^2\left(f_P-f_C\right)e_q\boldsymbol{f}\right\}
\end{aligned}

である。ここから、効率的フロンティア上のポートフォリオの分散が


\begin{aligned}
\sigma_P^2&=\sigma_C+\kappa\left(f_P-f_C\right)^2,\\
\kappa&=\displaystyle{\frac{(\sigma_Q^2-\sigma_C^2)}{(f_Q-f_C)^2}}
\end{aligned}

で得られる。

2.11.5 資本資産価格モデル(CAPM)

 \mathrm{CAPM}は2つの手順で構築する。1つ目はアルファ・ポートフォリオの導入で示した


\begin{aligned}
\boldsymbol{f}=f_C\left(\displaystyle{\frac{\mathit{V}\boldsymbol{h}_Q}{\sigma_C^2}}\right)
\end{aligned}

において資産の期待超過リターン・ベクトルがポートフォリオQに対する資産のベータ・ベクトルに比例するとすればよい。次に特定の仮定を置くことで、ポートフォリオQが市場ポートフォリオMであること、すなわち市場ポートフォリオが完全に投資された全ポートフォリオの中で最も期待リターンの高いポートフォリオであることを導出できる。すなわち



定理 CAPM もし

  • 全投資家が平均/分散選好を有している、
  • 全資産が分析対象に含まれている、
  • 全投資家が資産の分散および共分散を承知している、
  • 取引コストや税が無いものとする、

ならば、ポートフォリオQは市場ポートフォリオMに等しく、


\begin{aligned}
\boldsymbol{f}=\boldsymbol{\mu}=\boldsymbol{\beta}\mu_M
\end{aligned}

である。

*1:手許には原書しかないので、上記書籍と表記が異なる可能性がある。

*2:現金を持たないという意味である。

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