今日のまとめ
- 行列ノルムの性質を議論する。
11. 陰関数定理と逆写像定理
11.4. ベクトル値写像
陰関数定理の一般形を扱うべく、ベクトル値写像を導入する。
11.4.2 行列のノルム
行列全体の集合をと書くこととする。とは行列と点を対応付けることで同一視できる。これにより行列のノルムを以下のように導入できる。
行列のノルム に対して、そのノルムを
で定義する。
また内の点列の収束、の開集合等の定義と同様に、内の点列の収束や開集合などを定義できる。
の部分集合が開集合であるとは、任意のに対してあるが存在し、がを満たすならばが成立することをいう。
またのノルムとして、
という定義も利用される。この値はと同値になる。具体的な値の計算が難しい一方で、理論的に良い性質を持つ。
( まずに対してとおけば
である。
次に2番目の不等式について、のときは示すべき不等式の等号が成立する。 のとき、
とおけば、であるから、
が成り立つ。したがって
を得る。
更に3番目の不等式について、
であるから、について、両辺の上限を取ればよい。
最後の不等式も
であるから、について、両辺の上限を取ればよい。 )
行列の積に対するノルム とする。このときについて
が成り立つ。
を得る。について、両辺の上限を取ればよい。 )
( ならば明らかであるから、とする。とおく。このとき
が成り立つ。したがって
が成立する。 )
行列ノルムの同値性 に対して、
が成り立つ。
とおけば、とすれば
である。このため
で、
が成り立つ。
次に任意のベクトルに対して
に対しての不等式を適用することで
を得る。について、両辺の上限を取ればよい。 )