11. 陰関数定理と逆写像定理
11.4. ベクトル値写像
陰関数定理の一般形を扱うべく、ベクトル値写像を導入する。
11.4.1 ベクトル値写像の連続性と微分可能性
ベクトル値関数の連続性および級の定義は、前回導入したベクトル値写像の連続の定義と一致することを示すことができる。
この命題を示すべく、以下の補題を導入する。
( とおく。左の不等式は、に注意すれば、
である。したがって、この不等式は成り立つ。
次に右の不等式は、任意のについて
が成り立つ。この両辺についてまでの総和を取ることで、
を得、この両辺の平方根を取ることで、示すべき不等式を得る。 )
( がにおいて微分可能だと仮定する。とおく。上で示した補題より、各に対して
が成り立つ。したがって
が成り立つならば、各に対して、
が成立する。したがって各はにおいて微分可能であり、
が成立し、特に
である。
逆に補題の後半の不等式を用いることで、すべてのに対して、がにおいて微分可能ならば、として
が成立することも分かる。
次にがで連続であるとき、補題より、とおいて
および
が成り立つ。したがってのときであり、
を得る。
逆にすべてのについてがにおいて連続ならば、
および
が成り立つ。したがってとすればとなり、更に
であるから、
が成り立つ、すなわち
である。
他方で、においてが連続(微分可能、級)のとき、その定義から、任意の点においては連続(微分可能、級)である。上で示した示すべき命題の前半部分より、任意の点において各は連続(微分可能、級)であることと同値である。これは各がにおいて連続(微分可能、級)であることに他ならない。したがって示すべき命題の後半部分が示された。 )