中長期における資産運用の考え方を学ぶべく、
を整理していく*1。
目次
5. 各資産クラスの運用手法
5.2 株式市場と運用
5.2.4 アノマリーに着目した投資戦略
市場で観察される現象のうち、標準的なファイナンス理論で説明のつかない現象をアノマリー(市場の変則性)という。現実にはいくつかのアノマリーが知られる。
- 小型株効果: 時価総額が小さい銘柄に投資することで高いリターンを得られる現象
- 業績予想修正効果: 業績予想の上方修正が広く知られた後にその銘柄に投資してもなお高いリターンを得られる現象
- リターン・リバーサル効果: 過去のリターンが低かった銘柄に投資することで高いリターンを得られる現象
これらのアノマリー効果が見られるのは、①リスクプレミアム説、②ミスプライシング説の2つの考え方が提示されている。アノマリーを利用するには、その有効性を継続的にモニターすることが不可欠である。
5.3 債券市場と運用
5.3.1 債券価格の決まり方とリスク評価
国内債券は、株式に比べ価格変動が小さく、また満期まで保有すれば利回りが確定するため安全資産と呼ばれる。ただし金利変動に起因する市場リスクや、信用リスクが存在する。
債券には、国・地方公共団体、事業会社島が資金を借り入れるために発行する有価証券である。
投資家にとって、国債は最も安全な運用手段とされている。
金利変動によって債券価格は上下するが、その変化度合いを示す指標がデュレーションと言われる。すなわち債券価格の金利弾力性がデュレーションである。デュレーションが大きいほど、金利変動に対する価格変化は大きくなる。
残存期間年の信用リスクの無い債券について、債券利回りを、年1回払いのクーポンを、そして債券価格をとすれば、まず債券価格について
が成り立つ。これをマクローリン展開して二次の項まで取ると、
が得られる。この債券の第1項の(修正)デュレーションは
で与えられる。また(修正)コンベクシティは
で与えられる。
ときには債券が暴落することはあり得るものの、長期で見れば株式よりもリターンは安定し、また株式と債券の相関は低く分散投資によりリスク軽減が可能である。
5.3.2 信用リスクと格付
債券の信用リスクは、発行体のデフォルトないしそれが発生する蓋然性の増大に起因するリスクを指す。普通、発行体の信用リスクが高くなるにつれて、同じ年限の国債よりも利回りは高くなる。
5.3.3 パッシブ運用
債券のパッシブ運用は、金利予測などせずに、一定の規則に基づき相場観を入れない機械的な運用を行うものである。
- ラダー型運用 購入した債権を満期まで保有しきることを前提とした債券ポートフォリオを構築する。
- ダンベル型運用 短期債と長期債の年限の両端を保有し、鉄アレイのように満期構成を作る。短期債が償還したら新たに短期債を購入し、長期債の年限が短くなれば売却して新たに長期債を購入することでデュレーションを維持する。
- インデックス運用 公表された債券インデックスと同じ特性を持つ債券ポートフォリオを構築し、インデックスのリターンを再現するようにまめにリバランスする。株式以上に銘柄の種類が多いため、完全法を取ることは少なく、債券の種別や残存期間等でインデックス構成銘柄を分類しその中から代表銘柄を抽出して保有銘柄数を減らす層化抽出法や平均デュレーションやコンベクシティなどの指標を基に誤差を最小化する最適化法を用いる。
- イミュニゼーション運用 債券ポートフォリオではなく年金債務そのものをヘッジするような債券ポートフォリオを構築するものである。
*1:どうも最近の書籍でこれくらいしっかりと書いてある本が見当たらなかったので…