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国際金融(5/9)

 国際金融を

を基に学んでいく。

6. 物価と為替レート

 物価が伸縮的に調整する長期間を考え、内外の物価を比較して名目通貨の均衡レートを考える。

6.1 生産物の相対価格と裁定

 もし同じ材の価格が市場によって大きく相違する、すなわち市場間で相対価格が1から大きく乖離した場合、税金や輸送費などのコストを控除しても裁定取引の蓋然性が高まる。裁定取引が自由に生じるような状況下であれば、価格は均等化し相対価格は1に収束するはずである。

6.1.1 一物一価の法則

 第t期におけるある財iA国における価格をP_{i,t}^{A},\ B国における価格をP_{i,t}^{B},\ B国通貨のA国通貨で見たときの名目為替レートをS_{t,A}^{B}とする。簡単のために税金等の各種コストを0と仮定すると、無裁定下において



\begin{aligned}
P_{i,t}^{A}=S_t P_{i,t}^{B}
\end{aligned}


が成り立つ。これはA国における財iの価格とB国における同じ財iA国通貨表示の価格が均等であるという条件を表し、一物一価の法則(\mathrm{law\ of\ one\ price})という。
 またこれを書き換えることで相対価格に関する条件



\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{S_t P_{i,t}^{B}}{P_{i,t}^{A}}}=1
\end{aligned}


が得られる。
 一物一価の法則は、

  • 全く等価の財について成り立つ法則であること
  • 同一通貨単位に換算した価格が一致すること


が成り立つことに留意する。

6.2 購買力平価

 一般的な物価へと拡張してこれまでの議論を繰り返す。たとえば消費者物価指数P_t



\begin{aligned}
P_t=\displaystyle{\sum_{i=1}^{n}\alpha_i P_i}
\end{aligned}


で与えられる。ここでnは消費バスケットに含まれる財とサービスの種類数(iは特定の財を表す添字)、\alpha_iは同バスケットにおいて財iに与えられる比重を表し



\begin{aligned}
\displaystyle{\sum_{i=1}^{n}\alpha_i}=1
\end{aligned}


を満たす。また簡単化のために比重は時間と共に変化しないと仮定する。他国でも同様に定義される。ただしここでは財・サービスの種類および比重は同じものと仮定する。
 A国における消費者物価指数P_{t}^{A},\ B国における消費者物価指数P_{t}^{B}とし、さらにB国通貨のA国通貨で見たときの名目為替レートをS_{t,A}^{B}とすれば、



\begin{aligned}
Z_{t,A}^{B}=\displaystyle{\frac{S_{t,A}^{B}P_{t}^{B}}{P_{t}^{A}}}
\end{aligned}


で実質為替レートを定義できる。この場合は消費バスケット価格を用いているため、消費者物価ベースの実質為替レートと呼ぶ。
 もし一物一価の法則がバスケットを構成するすべての財・サービスで成り立つならば、



\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{S_t P_{t}^{B}}{P_{t}^{A}}}=1
\end{aligned}


が成立する。この条件を絶対購買力平価という。絶対購買力平価に基づけば、実質為替レートについて



\begin{aligned}
Z_{t,A}^{B}=\displaystyle{\frac{S_{t,A}^{B}P_{t}^{B}}{P_{t}^{A}}}=1
\end{aligned}


が成り立つ。

6.2.1 相対購買力

 実際には生産物の裁定取引に取引費用が掛かるため、厳密に一物一価の法則が成立するとは考えづらい。そのような観点から、そこで絶対購買力平価条件を緩めた



\begin{aligned}
Z_t=\displaystyle{\frac{S_t P_t^{*}}{P_t}}=K
\end{aligned}


を考えることができる。ここでKは定数である。この式は二国間の実質為替レートが一定であるという条件を示しており、相対購買力平価という。
 自然対数を取ることで



\begin{aligned}
s_t+p_t^{*}-p_t=\kappa
\end{aligned}


ここでs_t=\log S_t,p_t^{*}=\log P_t^{*},p_t=\log P_t,\kappa=\log Kで、\kappaは取引費用に伴う価格差である。
 t=t-1期におけるこの式との差分を取ることで



\begin{aligned}
\Delta s_t+\Delta p_t^{*}-\Delta p_t=0
\end{aligned}


が成立する。ここで\displaystyle{\frac{\Delta \log X}{\Delta X}}=\displaystyle{\frac{1}{X}}から\Delta \log X=\displaystyle{\frac{\Delta X}{X}}であるから、上式は自国インフレ率、名目為替レート変化率および外国インフレ率により構成されることが分かる。
 これを変形すると



\begin{aligned}
\Delta s_t=\Delta p_t-\Delta p_t
\end{aligned}


が得られ、相対購買力平価が自国と外国のインフレ率の差が自国通貨の減価率に等しくなるという条件であることを意味する。

6.2.2 Fisher効果

 自国と外国の物価は短期的には硬直的であると考えられる。このため購買力平価は利子平価とは異なり、長期を想定した条件と見なすべきである。
 物価が伸縮的に調整する長期においては、相対購買力平価とカバー無し利子平価が同時に成立しているという条件を考えることが可能である。まず先程示した\Delta s_t=\Delta p_t-\Delta p_tにおいて各変数を将来の予想値に置き換えることで



\begin{aligned}
\Delta p_{t,t+k}^{e}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F}=\Delta s_{t,t+k}^{e}
\end{aligned}


が得られる。これは自国と外国の予想インフレ率の差が自国通貨の予想減価率に等しいという条件で、予想相対購買力平価と呼ばれる。
 右辺の予想減価率はカバー無し利子平価によると自国と外国の利子率差に等しいため、予想相対購買力平価とカバー無し利子平価の双方が同時に成立すれば、



\begin{aligned}
r_{t,t+k}^{D}-r_{t,t+k}^{F}=\Delta p_{t,t+k}^{e}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F}
\end{aligned}


が得られる。これは\mathrm{Fisher}効果と呼ばれ、長期における利子率と予想インフレ率の関係を示すものである。
 これを書き換えると、



\begin{aligned}
r_{t,t+k}^{D}-\Delta p_{t,t+k}^{e}=r_{t,t+k}^{F}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F}
\end{aligned}


が得られるが、これは自国財・サービス対比利子率が外国財・サービス対比利子率と等しいことを表し、こうした財・サービスなどの実物単位で測った利子を実質利子率という。

6.3 購買力平価に基づく名目通貨レート・モデル

6.3.1 伸縮価格のマネタリー・モデル

 絶対購買力平価条件を書き替えることで



\begin{aligned}
S_t=\displaystyle{\frac{P_t^{D}}{P_t^{F}}}
\end{aligned}


という名目為替レートの決定式と解釈することができる。
 これは絶対購買力平価が成立する沖に名目為替レートが自国と外国の物価水準の比率に等しいことを意味する。
 ここで貨幣市場の均衡条件を応用すると、自国の貨幣市場における総貨幣供給および総貨幣需要の一致により、



\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{M_t}{P_t}}=L(r_t,Y_t)
\end{aligned}


が得られるが、物価P_tが所与でなく、伸縮的で自由に調整できるならば、



\begin{aligned}
P_t^{D}=\displaystyle{\frac{M_t^{D}}{L^{D}(r_t^{D},Y_t^{D})}}
\end{aligned}


に書き換えることができ、外国についても同様に



\begin{aligned}
P_t^{F}=\displaystyle{\frac{M_t^{F}}{L^{F}(r_t^{F},Y_t^{F})}}
\end{aligned}


が成り立つ。これらを代入することで



\begin{aligned}
S_t&=\displaystyle{\frac{M_t^{D}}{L^{D}(r_t^{D},Y_t^{D})}\frac{L^{F}(r_t^{F},Y_t^{F})}{M_t^{F}}}\\
&=\displaystyle{\frac{M_t^{D}}{M_t^{F}}\frac{L^{F}(r_t^{F},Y_t^{F})}{L^{D}(r_t^{D},Y_t^{D})}}
\end{aligned}


が得られる。またこれの対数形は\phi\gt0,\delta\gt0は実質総貨幣需要の生産量および利子率に対する感応度を表すことで、



\begin{aligned}
s_t&=p_t^{D}-p_t^{F}=(m_t^{D}-m_t^{F})-(l^D-l^{F})\\
&=(m_t^{D}-m_t^{F})-\phi(y^D-y^{F})+\delta(r_t^{D}-r_t^{F})
\end{aligned}


で与えられる。この式は名目為替レートが為替市場におけるマネー・サプライと実質総貨幣需要の比率を二国間で比較したものとして決定されることを意味する。それは名目為替レートが完全に貨幣の需給でのみ定まると考えていることになる。こうした考え方は為替レートのマネタリー・アプローチと呼び、この式を伸縮価格のマネタリー・モデルと呼ばれる。

6.3.2 硬直価格のマネタリー・モデル

 前述した伸縮価格のマネタリー・モデルは物価の伸縮的な調整による絶対購買力平価の成立を前提とするため、短期を想定した考察に適したフレームワークとは言い難い。
 物価の硬直性が乖離を起こした場合の影響を考慮していないことにあるため、これを踏まえることとする。まず短期的に平価から乖離が生じることを許容すべく、



\begin{aligned}
\Delta s_{t,t+k}^{e}=-\theta(s_t-\bar{s}_t)+\Delta p_{t,t+k}^{e,D}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F}
\end{aligned}


を導入する。ここで\bar{s}_tは長期均衡為替レートで、\thetaは名目為替レートが長期的均衡水準に向かって調整する速度を表す係数である。
 ここにカバー無し利子平価条件



\begin{aligned}
r_{t,t+k}^{D}=r_{t,t+k}^{F}+\displaystyle{\frac{S_{t,t+k}^{e}-S_t}{S_t}}
\end{aligned}


と合わせることで



\begin{aligned}
\Delta s_{t,t+k}^{e}=r_{t,t+k}^{D}-r_{t,t+k}^{F}=-\theta(s_t-\bar{s}_t)+\Delta p_{t,t+k}^{e,D}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F}
\end{aligned}


が得られる。これを書き換えることで



\begin{aligned}
s_t=\bar{s}_t-\displaystyle{\frac{1}{\theta}}\left\{(r_{t,t+k}^{D}-\Delta p_{t,t+k}^{e,D})-(r_{t,t+k}^{F}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F})\right\}
\end{aligned}


と書くことができる。
 ここに伸縮価格のマネタリー・モデルを代入することで



\begin{aligned}
s_t=&(m_t^{D}-m_t^{F})-\phi(y^D-y^{F})+\delta(r_t^{D}-r_t^{F})\\
&-\displaystyle{\frac{1}{\theta}}\left\{(r_{t,t+k}^{D}-\Delta p_{t,t+k}^{e,D})-(r_{t,t+k}^{F}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F})\right\}
\end{aligned}


を得、更に\mathrm{Fisher}効果を代入して



\begin{aligned}
s_t=&(m_t^{D}-m_t^{F})-\phi(y^D-y^{F})+\delta(\Delta p_{t,t+k}^{e}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F})\\
&-\displaystyle{\frac{1}{\theta}}\left\{(r_{t,t+k}^{D}-\Delta p_{t,t+k}^{e,D})-(r_{t,t+k}^{F}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F})\right\}\\
=&(m_t^{D}-m_t^{F})-\phi(y^D-y^{F})-\displaystyle{\frac{1}{\theta}}(r_{t,t+k}^{D}-r_{t,t+k}^{F})\\
&+\left(\delta+\displaystyle{\frac{1}{\theta}}\right)(\Delta p_{t,t+k}^{e,D}-\Delta p_{t,t+k}^{e,F})
\end{aligned}


が成り立つ。これを硬直価格のマネタリー・モデルという。

6.4 実質為替レートの長期変動

6.4.1 購買力平価からの長期的乖離

 ここまでの議論を基にすれば、実質為替レートは長期的に一定水準に保たれるはずである。しかし現実のデータを調べると、長期的な上昇・下降トレンドが存在する。

6.4.2 非貿易財と物価

 各国の生産物には取引コストがそれ自体の価格に対して相対的に高いものが存在する。こうしたものは価格差のみで言えば価格競争力があったとしても、実際には取引されず非貿易財になる。
 各国の財バスケットは貿易財と非貿易財を含むため、物価は貿易財の価格と非貿易財の価格の加重平均として算出される。貿易財の価格をP^{T},非貿易財の価格をP^{NT}とおけば、非貿易財部門の比重を\alpha\in(0,1)として、物価は



\begin{aligned}
P_t^{D}&=\left(P_{t}^{T,D}\right)^{1-\alpha}\left(P_{t}^{NT,D}\right)^{\alpha},\\
P_t^{F}&=\left(P_{t}^{T,F}\right)^{1-\alpha}\left(P_{t}^{NT,F}\right)^{\alpha}
\end{aligned}


である。ここで右上添字のD,Fはそれぞれ自国または外国を表し、左下添字のtは時点を表す。
 これらの自然対数を取れば、



\begin{aligned}
\log P_t^{D}&=(1-\alpha)\log P_{t}^{T,D}+\alpha\log P_{t}^{NT,D},\\
\log P_t^{F}&=(1-\alpha)\log P_{t}^{T,F}+\alpha\log P_{t}^{NT,F}
\end{aligned}


が得られ、実質為替レート(の自然対数)z_t=\log Z_tにこれらを代入することで



\begin{aligned}
\log Z_t=&\log S_t+\log \log P_t^{D}-\log P_t^{F}\\
=&(1-\alpha)(\log S_t+\log P_{t}^{T,D}-\log P_{t}^{T,F})\\
&+\alpha(\log S_t+\log P_{t}^{NT,D}-\log P_{t}^{NT,F})
\end{aligned}


が成立する。これはすなわち実質為替レート(の自然対数)は貿易財の相対価格と非貿易財の相対価格の加重平均で表現できる。この式は非貿易財の存在が絶対購買力平価からの乖離を生み出すことになることを意味している。

6.4.3 労働生産性とBalassa Samuelson効果

 先ほど示した実質為替レートと貿易財・非貿易財の相対価格の関係式



\begin{aligned}
\log Z_t=&\log S_t+\log \log P_t^{D}-\log P_t^{F}\\
=&(1-\alpha)(\log S_t+\log P_{t}^{T,D}-\log P_{t}^{T,F})\\
&+\alpha(\log S_t+\log P_{t}^{NT,D}-\log P_{t}^{NT,F})
\end{aligned}


を変形すると、



\begin{aligned}
\log Z_t=&\log S_t+\log P_{t}^{T,F}-\log P_{t}^{T,D}\\
&-\alpha\left\{(\log P_{t}^{NT,D}-\log P_{t}^{T,D})-(\log P_{t}^{NT,F}-\log P_{t}^{T,F})\right\}
\end{aligned}


が得られる。貿易財に対して裁定により一物一価の法則が成り立つならば、右辺第1項は0に等しいから、



\begin{aligned}
\log Z_t=-\alpha\left\{(\log P_{t}^{NT,D}-\log P_{t}^{T,D})-(\log P_{t}^{NT,F}-\log P_{t}^{T,F})\right\}
\end{aligned}


が成立する。
 これは自国と外国の実質為替レートが、各国における非貿易財と貿易財の相対価格を、二国間で比較した相対価格であると言える。したがって実質為替レートに長期トレンドが存在するならば、それは各国の非貿易財と貿易財の相対価格のトレンドで説明し得ることを示唆している。こうした差異は、\mathrm{Balassa}および\mathrm{Samuelson}がそれぞれ独自に研究した結果によれば、各部門における労働生産性の国際相違が原因であるとされている。これを\mathrm{Balassa}-\mathrm{Samuelson}効果という。
 \mathrm{Balassa}-\mathrm{Samuelson}効果は時間の経過に伴う実質為替レートの動きを説明するだけでなく、経済の発展段階が異なる国々に同時点で見られる物価水準の差を説明する理論としても解釈できる。同理論に基づけば、

  • 貿易財部門における労働生産性が低い国ほど賃金が低い
  • 低賃金な国ほど非貿易財の価格も低い
  • 貿易財の価格は国際的に均等である
  • 貿易財部門における労働生産性が低い国ほど総合的な物価が低い

が成り立つ。

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