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統計学のための線形代数(028/X)

 統計学に習熟するには線形代数の習得が不可欠である。が、初等的な線形代数ではカバーしきれないような分野も存在する。そこで以下の参考書

を基により高等な線形代数を学ぶ。

4. 行列の因数分解と行列ノルム

4.8 行列ノルム


スペクトル半径 m次正方行列A固有値\lambda_1,\cdots,\lambda_mとする。このとき


\begin{aligned}
\rho(A)=\displaystyle{\max_{1\leq i\leq m}|\lambda_i|}
\end{aligned}

Aのスペクトル半径という。


 スペクトル半径\rho(A)Aの大きさに関するある種の情報を与えるものの、それ自体は行列ノルムではない。たとえば



\begin{aligned}
A=\begin{bmatrix}
0&1\\
0&0
\end{bmatrix}
\end{aligned}


を考える。A固有値



\begin{aligned}
 |A-\lambda I|=\lambda^2=0
\end{aligned}


より\lambda=0(重複)であるから、Aが零行列でないにもかかわらず、\rho(A)=0である。これは行列ノルムの定義における条件\|A\|=0\Leftrightarrow A=Oを満たさない。
 このようにスペクトル半径は行列ノルムにはなり得ないものの、任意の行列ノルムの下限になる。



行列ノルムとスペクトル半径 m次正方行列Aに対する任意の行列ノルム\|A\|について、


\begin{aligned}
\rho(A)\leq\|A\|
\end{aligned}

が成り立つ。

(\because A固有値\lambda_0のうち、|\lambda_0|=\rho(A)を満たすようなものを\lambdaとおく。この固有値に対応する固有ベクトル\boldsymbol{x}とすれば、


\begin{aligned}
A\boldsymbol{x}=\lambda\boldsymbol{x}
\end{aligned}

を満たす。このとき\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}は上式に右側から\boldsymbol{1}^{\prime}を掛けることで


\begin{aligned}
A\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}=\lambda\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}
\end{aligned}

が得られる。以上から、行列ノルムの条件を用いることで


\begin{aligned}
\rho(A)\|\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}\|&=|\lambda|\|\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}\|=\|\lambda\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}\|\\
&=\|A\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}\|\\
&\leq\|A\|\|\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}\|
\end{aligned}

が得られ、両辺を\|\boldsymbol{x}\boldsymbol{1}^{\prime}\|で割ることで


\begin{aligned}
\rho(A)\leq\|A\|
\end{aligned}

を得る。 \blacksquare)


 また行列ノルムとスペクトル半径には別の関係を持つ。



スペクトル半径に等しい行列ノルムの存在 任意のm次正方行列Aと任意のスカラー\varepsilon\gt0について、



\begin{aligned}
\|A\|_{A,\varepsilon}-\rho(A)\lt\varepsilon
\end{aligned}

を満たすような行列ノルム\|A\|_{A,\varepsilon}が存在する。

(\because A=XTX^{*}A\mathrm{Schur}分解とする。このときX\mathrm{Unitary}行列である。またTは上三角行列で、その対角要素にはA固有値\lambda_1,\cdots,\lambda_mが配置されている。
 任意のスカラーc\gt0について行列D_c=\mathrm{diag}(c,c^2,\cdots,c^m)を定義し、上三角行列D_CTD_C^{-1}の対角成分もまた\lambda_1,\cdots,\lambda_mである。上三角行列D_CTD_C^{-1}i番目の列和は


\begin{aligned}
\lambda_i+\displaystyle{\sum_{j=1}^{i-1}c^{0(i-j)}t_{ji}}
\end{aligned}

で与えられるから、充分に大きなcを取ることで、各iについて


\begin{aligned}
\displaystyle{\sum_{j=1}^{i-1}\left|c^{0(i-j)}t_{ji}\right|}\lt\varepsilon
\end{aligned}

を満たす。この場合、|\lambda_i|\leq\rho(A)であるから、


\begin{aligned}
\|D_cTD_c^{-1}\|_1\lt\rho(A)
\end{aligned}

でなければならない。ここで\|D_cTD_c^{-1}\|_1は最大列和行列ノルムである。任意のm次正方行列Bについて


\begin{aligned}
\|B\|_{A,\varepsilon}=\|(XD_C^{-1})^{-1}B(XD_C^{-1})\|_{1}
\end{aligned}

\|B\|_{A,\varepsilon}を定義する。このとき


\begin{aligned}
\|A\|_{A,\varepsilon}=\|(XD_C^{-1})^{-1}A(XD_C^{-1})\|_{1}=\|D_cTD_c^{-1}\|_1
\end{aligned}

が成り立ち、前回示した定理からこれもまた行列ノルムである。 \blacksquare)

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