以下の書籍
を中心に時系列解析を勉強していきます。
5. VARモデル
5.5 分散分解
分散分解も変数間の動学的関係を定量的に分析するものである。具体的には、予測の平均二乗誤差を各変数に固有の攪乱項が寄与する部分に分解し、ある変数の予測できない変動を説明するのに度の変数が重要なのかを明らかにする。分散分解にも直交化攪乱項が必要になる。そのために分散分解でも変数が外生性の高い順に並んでいる再帰的構造を仮定していることに注意すべきである。
分散分解 の期先予測の平均二乗誤差に関しての直交化攪乱項が寄与する割合をの期先予測におけるの相対的分散寄与率といい、
で表される。を各変数について計算したものを分散分解という。
分散分解はをの関数として複数の期間に対して求める。
例:2変量モデル
として分散分解を行なう。
として
と書くこととすると、
であるから、1期先予測は
で与えられ、その予測誤差は
である。したがって
である。
ここまでの議論を一般化しておくと、変量モデルにおいての期先予測誤差は一般的にの線形和であるから、
と表現できる。このとき予測の平均二乗誤差は
である。このうち、変数に起因する部分はであるから、
と、変量モデルにおいての期先予測誤差は一般的にの線形和で書けるという前提において成り立つ。
5.6 構造VARモデル
モデルでは、各変数を表す方程式は全変数の過去のみを含み同時点の変数は含まない、すなわちどうじてんのへんすうが互いに影響を及ぼすことは無いと仮定している。しかしこの仮定は非常に強く、同時点の変数が互いに影響を及ぼすと仮定したモデルを構造モデルという。変量構造モデルは一般的に
で表される。ここでは対角成分がに等しい次正方行列、は次対角行列である。は構造攪乱項と呼ばれる。同時点の変数間の関係はが捉えることになるから、構造攪乱項は互いに相関を持たず、構造モデルでインパルス応答関数および分散分解の計算を行う場合は、構造攪乱項を用いることができる。
構造モデルは同時方程式であるため、各方程式において説明変数と誤差項が相関を持ち、最小二乗法で推定するとバイアスが生じるという問題点がある。そこで構造形の推定には式を変形した誘導形
にする必要がある。ただし、それでも識別性の問題、すなわち誘導形は構造系よりもパラメータ数が少ないために構造形を識別するのに個の制約を課す必要が生じる。構造形の識別をするための常套手段は変数に再帰的構造を課すことで、このときのモデルを再帰的構造モデルという。再帰性の仮定は具体的には、を対角成分がに等しい下三角行列だと仮定することを意味する。