ファンド・パフォーマンスの評価方法を学ぶべく、
を参照する。
1. 収益率の計算
1.1. 収益率の計算
ある時点の資産価格を、時点の資産価格をとして時点からまでの(単利ベースの)収益率は
で定義する。
1.3. 収益率のリンク計算
ある連続する期間を区分けした複数期間のリターンがあるとき、それらの期間の累積リターンを計算することをここではリンクと呼ぶ。たとえば時点に対して時点からまでのリターンが分かっているときに、リターンは
で計算できる。
1.5. 為替レートと収益率
価値が異通貨表示される資産に投資するようなファンドの場合、通常はある1つの通貨に換算して時価表示する。したがって
1.6. 運用報酬(経費)控除後収益率
収益率の定義は目的に応じて適切に行う必要がある。たとえば異なるファンドの運用の稚拙を判断したい場合、運用に掛かる経費を考慮しないのが自然である一方で、投資家として投資先ファンドを選定するのであれば、経費を考慮して収益率を考えるべきである。
事例:
投資金額 |
20億円 | 10億円 |
収益 |
0.6億円 | 0.305億円 |
投資顧問料率 |
元本10億円分に0.42%他の10億円分に0.27% | 0.42% |
信託報酬率 |
0.10%(一律) | 0.10%(一律) |
このとき、
- 経費控除前収益率:
・A:
・B:
また
・Aの投資顧問料:
・Bの投資顧問料:
・Aの信託報酬:
・Bの信託報酬:
であるから、
- 経費控除後収益率:
・A:
・B:
1.9. 年率換算(複利による計算)
ある時点数のリターンがで、年間の時点数をとすれば年率単利リターンは
である。もし連続複利表示であれば
1年を超える期間の収益率を計算する場合は、複利で計算する方が自然である。
1.10. 収益率の算術平均と幾何平均
複数年間の収益率を年率に直す場合は、粗収益率(収益率にを加えたもの)の幾何平均を用いる。
1.11. 内部収益率(金額加重収益率)
当初の投資金額と投資によるその金額の変化が分かれば、収益率を計算できる。これを内部収益率(金額加重収益率)という。
1.12. 基準価額収益率
基準価額は投資信託の価格で、ファンドの純資産総額を受益権総口数で割った値を用いて計算する。更に基準価額は開始時点に規格化(たとえば1口当たり1円)されており、開始時点からの1万口当たりの化学が日々の基準価額として公表される。
また分配金再投資の有無および費用控除の有無に応じて基準価額の定義も変わる。
1.13. 指数(インデックス)収益率
指数(インデックス)は後述するようにパフォーマンス評価に用いる。
時点から時点までのインデックスの市場収益率は、各時点の指数値をを用いて以下で計算する:
1.14. ベンチマークとの比較
ファンド・マネージャーの運用の稚拙を評価する(投資パフォーマンス評価)においては、収益率(の絶対水準)のみでは不充分である。収益率の優劣が運用の稚拙によるものなのか、投資対象の影響なのかを類別することが出来ないからである。そこで比較対象となるインデックスを設けること、より純粋に運用の稚拙を評価でき更に精緻な分析ができるようになる。これをベンチマーク比較と呼ぶ。この文脈でのインデックスをベンチマークという。
ポートフォリオの収益率からベンチマークの収益率を差し引いたリターンを超過収益率(アクティブ・リターン)という。すなわちポートフォリオ収益率を、それと同様の期間のベンチマーク収益率をとしたとき、アクティブ・リターンは
と表される。
ベンチマーク候補は、評価対象に対する配当の考え方から複数の指数が存在する:
(1) | 配当無し指数(プライス) | 配当を考慮しない。 |
(2) | 税引前配当込み指数(グロス) | 配当を考慮しつつも配当への課税を考慮しない。 |
(3) | 税引後配当込み指数(ネット) | 科配当を考慮しつつ配当への課税も考慮する。 |
通常は、税引前配当込み指数を用いることが多い。
またインデックスの中でも以下の要因を考慮して、総合的に勘案する:
(1) | 投資対象の一致性: | ポートフォリオの(潜在的な)投資対象とインデックスの(潜在的な)投資対象が一致していること。 |
(2) | 市場の一致性: | ポートフォリオの投資対象の所属市場とインデックスの投資対象の所属市場が一致していること。 |
(3) | 再現性: | 実際に取引が再現できること。 |
(4) | 流動性: | 十分な流動性を有していること。 |
*1:1年を何日とカウントするかは議論の余地がある。上記のように365日を取る場合もあれば、営業日のみをカウントすべく250日、252日としたり、実日数を取ったりする場合もある。