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ファイナンス練習(2021年09月18日)

 業務でC#を用いることになったので、最近勉強していなくて朧気になってきた知識をReviseする意味でも、以下の書籍を読みながらC#で実装してみる。今回はP.227-232まで。

8. 金融工学の基礎

 最後となる本章では、デリバティブの価格付け理論を取り扱う。価格付け理論の根本原理は同一のキャッシュフローを生成する金融資産の現在価値は等しいという一物一価の法則である。これを正当化するために、更に

コスト無しに無リスクで利益を上げられる投資機会を裁定機会という。

という概念を定義した上で、無裁定であることを仮定する。

8.7 Black Scholesの偏微分方程式

 Black Scholesモデルにおける危険資産の価格をS(t)とし、以下の確率微分方程式に従うと仮定する:


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dS(t)}{S(t)}}=\mu dt+\sigma dz(t)
\end{aligned}

ここで\mu,\ \sigmaは定数かつ既知とする。また無リスク資産B(t)が以下に従うとする:


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dB(t)}{B(t)}}=r dt
\end{aligned}

ここでrは定数かつ既知とする。これら2つの資産は市場で取引可能であると仮定する。
 Black Scholesモデルが想定する市場においてS(t)を原資産とするヨーロピアン・コール・オプションを考える。このオプションの時点tにおける価格をC(t)とする。これは以下の確率微分方程式に従うとする:


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dC(t)}{C(t)}}=\mu_{C}(t) dt+\sigma_{C}(t)dz(t)
\end{aligned}

 この市場における原資産の単リスク当たり超過収益率\lambdaは以下で与えられる:


\begin{aligned}
\lambda=\displaystyle{\frac{\mu-r}{\sigma}}
\end{aligned}

これらは既知のパラメータから推計できるため、それ自体既知である。
 一方で、このオプションの単位リスク当たり超過収益率は既に求めたものと同値であり


\begin{aligned}
\lambda=\displaystyle{\frac{\mu_{C}(t)-r}{\sigma_{C}(t)}}
\end{aligned}

が成り立つ。
 ここで伊藤の公式を用いることを考える。

 X(t)が確率微分方程式


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dX(t)}{X(t)}}=\mu(X(t),t)dt+\sigma(X(t),t)dz(t)
\end{aligned}

を満たすとする。このときY(t)=f(X(t),t)は確率微分方程式


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dY(t)}{Y(t)}}=\mu_{Y}(X(t),t)dt+\sigma_{Y}(X(t),t)dz(t)
\end{aligned}

を満足する。ただし


\begin{aligned}
\mu_{Y}(x,t)&=\displaystyle{\frac{1}{f(x,t)}\left[f_{t}(x,t)+f_{x}(x,t)\mu(x,t)x+\frac{f_{xx}(x,t)}{2}\sigma^2(x,t)x^2\right]},\\
\sigma_{Y}(x,t)&=\displaystyle{\frac{f_{x}(x,t)\sigma(x,t)x}{f(x,t)}}
\end{aligned}

である。

 では、どのような関数で置き換えることにするか。オプションは本源的価値と時間価値の和で定まる。


図表1 オプション価値の分解イメージ
f:id:suguru_125:20210917234432j:plain

すなわち権利行使により得る可能性のある利得に基づく価値(本源的価値)および満期までに権利行使できる水準にまで原資産価格が上昇し得る可能性に基づく価値(時間価値)によりオプション価値は分解できる。すなわち原資産価値と満期までの時間の関数としてオプション価格は記述できる:


\begin{aligned}
C(t)=f(S(t),t)
\end{aligned}

 Black Scholesモデルでは、\mu_{C}(t)=\mu\in\mathbb{R}, \sigma_{C}(t)=\sigma\in\mathbb{R}, \sigma\gt0とおくことになる。伊藤の公式から、


\begin{aligned}
\mu_{C}(x,t)&=\displaystyle{\frac{1}{f(S,t)}\left[f_{t}(S,t)+f_{S}(S,t)\mu S+\frac{f_{SS}(S,t)}{2}\sigma^2 S^2\right]},\\
\sigma_{C}(S,t)&=\displaystyle{\frac{f_{S}(S,t)\sigma S}{f(S,t)}}
\end{aligned}

が成り立つ。
 オプションの単位リスク当たり超過収益率式から


\begin{aligned}
\lambda=\displaystyle{\frac{\mu-r}{\sigma}}=\displaystyle{\frac{\mu_{C}-r}{\sigma_{C}}}\\
\therefore \displaystyle{\frac{\mu-r}{\sigma}}=\displaystyle{\frac{\mu_{C}-r}{\sigma_{C}}} 
\end{aligned}

であり、ここに伊藤の公式から得た各パラメータ式を代入することで


\begin{aligned}
&\displaystyle{\frac{\mu-r}{\sigma}}=\displaystyle{\frac{\mu_{C}-r}{\sigma_{C}}} \\
\Leftrightarrow& \sigma_{C}\left(\mu-r\right)=\sigma\left(\mu_{C}-r\right) \\
\Leftrightarrow& f_{S}(S,t)\mu S-rS f_{S}(S,t)=\displaystyle{\left[f_{t}(S,t)+f_{S}(S,t)\mu S+\frac{f_{SS}(S,t)}{2}\sigma^2 S^2\right]}-rf(S,t)\\
\Leftrightarrow& -rS f_{S}(S,t)=\displaystyle{\left[f_{t}(S,t)+\frac{f_{SS}(S,t)}{2}\sigma^2 S^2\right]}-rf(S,t)\\
\Leftrightarrow& rS f_{S}(S,t)+f_{t}(S,t)+\displaystyle{\frac{f_{SS}(S,t)}{2}}\sigma^2 S^2=rf(S,t)\\
\end{aligned}

と、関数fを定める方程式が得られた。これをBlack Scholesの偏微分方程式という。
 (文脈上、C(t)コールオプションの価格であると仮定したものの)数式内にそれが反映されていないことから推察されるように、この式はBlack Scholesモデルが想定する原資産価格・無リスク資産の(確率)微分方程式を前提にするデリバティブはすべてこれに従う。しかしデリバティブごとに価格は異なる。これはペイオフ関数が相違するからであり、それはこの偏微分方程式ではその境界条件が表現する:


\begin{aligned}
f(S,T)=\max\{S-K,\ 0\}
\end{aligned}

 この偏微分方程式


\begin{aligned}
rS f_{S}(S,t)+f_{t}(S,t)+\displaystyle{\frac{f_{SS}(S,t)}{2}}\sigma^2 S^2=rf(S,t)\\
\end{aligned}

はFeynman-Kacの公式によりリスク中立化法と結びつく。

 境界条件C(x,T)=h(x)をもつ偏微分方程式


\begin{aligned}
C_{t}(x,t)=\mu(x,t)C_{x}(x,t)+\displaystyle{\frac{\sigma^2(x,t)}{2}}C_{xx}(x,t)=r(x,t)C(x,t),\ \ 0\leq t\leq T
\end{aligned}

の解は、ある正規化条件の下で


\begin{aligned}
C(S,t)=E\left[\displaystyle{\exp\left(-\int_{t}^{T}r\left(S(u),u\right)du \right)}h(S(T))|S(t)=S\right]
\end{aligned}

で与えられる。ただしS(t)は確率微分方程式


\begin{aligned}
dS(t)=\mu (S(t),t) + \sigma(S(t),t)dz(t),\ \ 0\leq t\leq T
\end{aligned}

に従っているものとする。

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