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ヨーロッパ企業の底力を学ぶ その02:シーメンス(上)

 「日本であまり触れられることのない欧州企業を知ろう!」というコンセプトの下、大陸欧州の有名な株式指数であるEuro Stoxx 50に採用されている銘柄企業を見ているこの「ヨーロッパ企業の底力を学ぶ」。

前回はDoveやクノールなど我々の身近な生活に根付いているユニリーバについて取り扱ってみた。

前篇はこちら:
zeitgeist.hatenablog.com

後篇はこちら:
zeitgeist.hatenablog.com

2回目の今回はシーメンスについて概歴を中心に取り上げる。

【今日のポイント】

  • シーメンスは世界でも最大規模を誇るドイツのテクノロジー企業であり、現在はエレクトロニクス、オートメーション、およびデジタル化に注力している
  • シーメンスは6つのコア事業及びその他多数の事業を抱える巨大企業である

1. シーメンスとは? ~世界最大級のインフラ企業~

 日本史に詳しい人であれば、「ジーメンスシーメンス)事件」を覚えていないだろうか。1914年1月に発覚したこの事件は、当時通信・電気装備品を主力商品としていた同社が入札情報を事前に入手しそれに対する謝礼を入札元の海軍関係者に支払っていたというスキャンダルであり、その影響力は海軍出身であった山本権兵衛内閣(当時)が総辞職に追い込まれたほどであった。このように戦前から名前の出てくる歴史ある企業が「シーメンス」である。まずはシーメンスの沿革を簡単に調べてみよう。

(1) 創業当時のシーメンス ~電信技術の世界普及へ~

 シーメンス、厳密に言うと現在の法人格である「Siemens A.G.」は1966年にシーメンスの名を冠する

  1. Siemens & Halske AG(1847年創業)
  2. Siemens Schuckertwerke AG(1903年創業)
  3. Siemens-Reiniger- Werke AG(1932年創業)

の3つの企業が合併する形で誕生している。そのため、戦前のシーメンスを知るにはこれら3つを振り返る必要がある。

 1847年10月、ドイツ陸軍の元技術将校で発明家でもあったヴェルナー・フォン・ジーメンス(当時30歳)が精密測定器の専門家であったJ.G.ハルスケ*1と共にドイツの首都ベルリンにあるクロイツベルクで創業したのがTelegraphen-Bauanstalt von Siemens & Halske(後のSiemens & Halske AG(ジーメンス・ウント・ハルスケAG))であった。同社は英国のチャールズ・ホイートストン卿が商業化した電信の特許に基づいた電信装置を製造した。ヴェルナーは通信の専門家で、当時黎明期にあったモールス信号*2とは別に、モールス符号を使わずに針で文字盤の文字を指すことで電文を伝えることが可能な装置である「電磁式指針電信機」を発明した人物であった。


図表1 Siemens & Halske AGの初期の株式
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(出典:Siemens*3

 創業1年後の1848年には欧州で初めてとなる長距離電信網の敷設を受注し、ベルリンからフランクフルトまでの670kmにも渡る電信網を設置したのだった*4。さらに同社を飛躍させることになるのが外国での事業だった。ロシア帝国ワルシャワからプロイセンに隣接するロシア領までの9,000kmにも及ぶ電信網の敷設を発注し、また1858年にはロンドンにオフィスを開設し同63年に英国内で電信網を敷設した。さらに1868年には最終的にロンドンからテヘランカルカッタをつなぐこととなる長距離電信網を設置したのである*5。1874年には海底ケーブルの敷設を行なったのだった。
 このように電信網敷設を中心事業としてきたが、1894年には南アフリカで金鉱山へ送電する発電施設の建設を英国企業から受注したのだった。
 他方で、1890年に創業者であるヴェルナーは引退し、その死去から5年後にあたる1897年、資金調達を容易にすべくSiemens & Halske AGは株式会社化した*6

(2) 20世紀はじめのシーメンス ~第一次世界大戦インパクト~

 こうして順調に拡大してきたシーメンスは、1903年になると新たに法人Elektrizitäts-Aktiengesellschaft vorm. Schuckert & Co. (EAG、後のSiemens Schuckertwerke AG)を設立した。同社は1894年に行った発電施設の建設をきっかけとして事業として軌道に乗った強電流関係のインフラ設備会社である*7。1925年にはアイルランド水力発電所の建設を受注した。
 第一次世界大戦に至ると、航空機やそのエンジンの開発といった軍事装備の開発・製造を始めた。しかし敗戦の結果、資本の40%を毀損し海外で保有していた知的財産権をすべて没収されることとなった*8。それは海外支社や海外営業所をすべて失うことを意味した。またさまざまな支社を解体することとなり、シーメンスは電気工学関係に事業を制限されることとなった。しかしそれと同時にその分野のあらゆるアプリケーションをすべて手中に収めることを企図するという戦略の下での解体であったため、1920年中盤には世界でも5本の指に入る規模の電気工学企業となった。
 たとえば1919年には電燈製造を統合すべくAEGとSiemens & Halske、さらにはDeutsche Gasglühlicht AGが協同でOSRAM GmbH KGを設立した。1930年代には同社は世界最大の電燈製造企業となり、ドイツ国内だけでも70%のシェアを誇った。他方で、電信網のときと同様に、1912年より欧州での電話網敷設にシーメンスは取り掛かり、20年代にはドイツ中での設置に励んだのだった。
 1924年には、同年代にはドイツの医療設備マーケット、また特にX線設備のグローバル・マーケットの殆どを占有したReiniger, Gebbert & Schallを買収した。大恐慌による医療設備マーケットの崩壊を受けてリストラを経てSiemens-Reiniger-Werke AGが設立されることとなった。

(3) 20世紀中盤のシーメンス ~ナチス体制下での急成長と崩壊~

 ナチス体制となり戦時体制が近づくと、強制労働により得た労働力を導入する形でシーメンスは軍事設備用の電気関係製品を製造するようになり、シーメンスの売上は急拡大した*9。しかし劣勢下でのドイツへの空爆や敗戦の混乱を受けて、シーメンスの設備や技術文書などはソ連が解体し収奪していったのだった。

(4) 敗戦後のシーメンス ~急拡大の秘密とは~

 巨大企業として現存していることからも明らかなように、シーメンス第二次世界大戦後、無事に復活を遂げることが出来た。それは敗戦に至る前の早期から「グループ経営体制」と呼ばれる非集権化を図っていたからだった*10。1949年4月にはSiemens & HalskeのHQはミュンヘンに、Siemens Schuckertwerkeのそれはエアランゲンに設置された。1948年には早くも海外事業を復活させ、1954年には連合国からの許可が下りたために新たな事業を始めることとなった。それがデータ・プロセシング事業であった。また1957年には家電製造のための法人である Siemens Electrogeräte AGを設立した。
 そして1966年にはSiemens & Halske AG, Siemens Schuckertwerke AG and Siemens-Reiniger-Werke AGの3社が合併することで、現在のSiemens AGが設立されたのであった。同時に1960年初頭から設備の現地(海外)生産をも行うようになった。
 1980年代には精密機器の売上が急拡大してきた中で、シーメンスはデジタル電話の開発に成功したことに特筆されるように、デジタル化へ更に加速していったのである*11。しかしアジア通貨危機が引き金となって、シーメンスは低迷し続け、ドイツの株価指数であるDAXにすら引き離されるほどの株価推移をすることとなった。そうした中で同年、"Ten-Point Program"というGEを模倣したかのようなプログラムを策定、実施し、一挙に米国型に近い企業へと変貌を遂げていった。米国会計基準を採用し、2001年には米国で上場したのであった。
 しかし「各地でプロジェクトに関係する公務員に対し、コンサルタントを通じて、多額の賄賂を支払い、その支払いを『コンサルタント費用』や『弁護士費用』として計上」したことが2006年に明らかになり、シーメンスは倒産の危機を迎えたのだった*12
 他方で、2007年にはデジタル製品データマネジメントやコンピュータ補助デザイン・生産プロセス・シミュレーションを手掛ける米国のUGS Corp.を買収し、シーメンスは今のデジタル化企業の地位を得ることができた。2014年には英ロールスロイスガスタービン事業を買収し、発電機事業や石油ガス事業を強化することとなった。

このようにシーメンスは時代ごとにその次世代を担うインフラ構築に従事する企業であると言える。

2. シーメンスの事業 ~6つのコア事業と多数の事業~

 では現在の事業を見よう。シーメンスは現在、7つの事業セグメントを定義している*13


図表2 シーメンスの事業セグメント

1. Digital Industries offers a comprehensive product portfolio and system solutions for automation used in discrete and process industries, complemented by product lifecycle and datadriven services
2. Smart Infrastructure supplies and intelligently connects energy systems and building technologies, to significantly improve efficiency and sustainability and support its customers to address major technology shifts
3. Gas and Power offers a broad spectrum of products, solutions and services for generating electricity, for producing and transporting oil and gas, as well as for downstream and oil and gas-related operations, and for installing and operating transmission grids
4. Mobility combines all Siemens businesses in the area of passenger and freight transportation, including rail vehicles, rail automation systems, rail electrification systems, road traffic technology, digital solutions and related services
5. Siemens Healthineers a supplier of technology to the healthcare industry and a leader in diagnostic imaging and laboratory diagnostics
6. Siemens Gamesa Renewable Energy designs, develops and manufactures wind turbines, and is active in the development, construction and sale of wind farms; it provides services including management, operation and maintenance of wind farms
7. Financial Services (SFS) supports its customers’ investments with leasing solutions and equipment, project and structured financing in the form of debt and equity investments.

ただし、Gas and Powerは2019年5月にスピンオフすることを公表しており、2019年度のAnnual Reportでは2020年度中に上場するとしている(Covid-19があるので延期されていてもおかしくはないが)。またここまでが主要な事業であるが、それ以外にもセグメントを立てるには小規模な事業を集めたPORTFOLIO COMPANIES (POC) がある(残りは連結調整項目)。

3. まとめ

 今回はシーメンスという企業が何を事業としてやっているのかを俯瞰的に整理した。シーメンスは6つのコア事業と多数の事業を抱える巨大企業である。次回(来週22日(土)予定)は、数値を入れてより詳細に利益構造や財務状態、株式の状態を見ていくことにしよう。

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