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ヨーロッパ企業の底力を学ぶ その01:ユニリーバ(上)

 このブログがやりたいこととして、「経済を知るために企業を知る」がある。そこで企業を見ていきたいのだが、日本だと意外にカバレッジされていないのが、ヨーロッパ企業であるような気がする。端的に言えば会社四季報に相当する書籍がない(私が知らないだけかもしれないが)。日本企業は言うまでもないが、米国四季報東洋経済新報社が発行している。中国企業東洋経済ではないが、2社が四季報に相当する書籍を販売している。とはいえそれらの書籍ほどのカバーを一人でするわけにはいかないので、差し当たり大陸欧州の有名な株式指数であるEuro Stoxx 50に則って、50社を見ていきたいと思う。
 そして第一弾として、今日はユニリーバを調べていく。

【今日のポイント】

0. はじめに ~Euro Stoxx 50採用銘柄一覧~

 7月22日時点ではあるが、採用銘柄50を取り上げる。その前に国ごとの銘柄数をまとめてみるとこうなる:

国名
フランス(FR)
18
ドイツ(DE)
15
スペイン(ES)
6
オランダ(NL)
5
イタリア(IT)
3
ベルギー(BE)
1
1
1

こう見ると仏独に圧倒的に偏っているのが特徴的だが、意外にスペインからの採用銘柄もあることが印象的である。
 では採用銘柄を見てみよう。

企業名
業種
国名
SAP
Technology
DE
ASML HLDG
Technology
NL
LINDE
Chemicals
DE
LVMH MOET HENNESSY
Personal & Household Goods
FR
SANOFI
Health Care
FR
Industrial Goods & Services
DE
TOTAL
Oil & Gas
FR
ALLIANZ
Insurance
DE
L'OREAL
Personal & Household Goods
FR
AIR LIQUIDE
Chemicals
FR
IBERDROLA
Utilities
ES
UNILEVER NV
Personal & Household Goods
NL
ENEL
Utilities
IT
BAYER
Health Care
DE
SCHNEIDER ELECTRIC
Industrial Goods & Services
FR
DEUTSCHE TELEKOM
Telecommunications
DE
BASF
Chemicals
DE
VINCI
Construction & Materials
FR
Personal & Household Goods
DE
BNP PARIBAS
Banks
FR
Health Care
NL
ANHEUSER-BUSCH INBEV
Food & Beverage
BE
DANONE
Food & Beverage
FR
AIRBUS
Industrial Goods & Services
FR
AXA
Insurance
FR
Kering
Retail
FR
BCO SANTANDER
Banks
ES
DEUTSCHE POST
Industrial Goods & Services
DE
ESSILORLUXOTTICA
Health Care
FR
MUENCHENER RUECK
Insurance
DE
DAIMLER
Automobiles & Parts
DE
SAFRAN
Industrial Goods & Services
FR
DEUTSCHE BOERSE
Financial Services
DE
INTESA SANPAOLO
Banks
IT
AHOLD DELHAIZE
Retail
NL
CRH
Construction & Materials
Automobiles & Parts
DE
Industria de Diseno Textil SA
Retail
ES
ING GRP
Banks
NL
ENI
Oil & Gas
IT
Technology
FI
ORANGE
Telecommunications
FR
BCO BILBAO VIZCAYA ARGENTARIA
Banks
ES
AMADEUS IT GROUP
Technology
ES
ENGIE
Utilities
FR
Media
FR
Automobiles & Parts
DE
FRESENIUS
Health Care
DE
TELEFONICA
Telecommunications
ES
GRP SOCIETE GENERALE
Banks
FR

1. ユニリーバとは? ~実は食品メーカーでもある歴史ある大会社~

 これを読んだ読者は「は?」と思われたかもしれない。ユニリーバというと、たとえば「ダヴ(Dove)」や「ドメスト」といったブランドが浮かび一方で、「食品?」というとピンとこないからだろう。が、ユニリーバの事業を見ると一目で巨大食品企業であることが分かる。
 

(1) 戦前から続く名門企業

 ユニリーバはもともと、英国企業であるリーバ・ブラザーズとオランダ企業であるマーガリン・ユニが合併する形で1930年に誕生した。すなわち今年で創立90年を迎える老舗企業なのだ。同社は「二元上場会社(dual-listed company)」という特殊な企業形態をとっている。二元上場企業とは、「二つの上場会社が,その法人格,上場ステータス及び税務上の居住者性を維持しながら,両者間の契約により株主への分配や議決権等を均等化し,両社をあたかも一つの法人であるかのように運営するという仕組み」である*1。つまりユニリーバというと、Unilever,plcという英国企業とUnilever, N.V.というオランダ企業の2つが存在するのである。そのためユニリーバに投資しようとすると、どちらの株式を購入するかを検討する必要があるということだ*2


(図表1 ユニリーバの来歴*3

1885年 英国で石鹸製造業を営むリーバ・ブラザーズが誕生
1927年 欧州のマーガリン製造企業が合併しマーガリン・ユニ(Margarine Unie)がオランダ・ロッテルダムに誕生
1930年 リーバ・ブラザーズとマーガリン・ユニが合併しユニリーバが誕生。英国で最大規模の企業となる
1943年 フロステッド・フーズ社株の過半数を取得。同社は当時、低温凍結に関する英国内における権利を所有していた。またフリーズドライ野菜と缶詰を専門とするバチェラーズを買収。
1956年 ユニリーバ・リサーチがバイオロジー部門を立ち上げ。同部門は1980年代の組織再編以降、バイオサイエンス・栄養・安全性ユニットとして活動
1958年 NVがオランダでビタNVを買収し冷凍食品とアイスクリーム業界に進出
1965年 社内向けのサービスプロバイダーを事業化し、包装企業4Pグループを設立
1971年 リプトン・インターナショナルを買収し、ユニリーバの紅茶ビジネスが世界最大規模となる
1984 コアビジネス戦略を発表し、その後10年間で大規模な買収と事業売却を進めた
2001年 製品ブランド数を1600から900に減らす
2012年 売上が500億ユーロを超える

(2) 戦後の経済成長に乗って

 戦前から戦中にかけて様々な混乱を経て事業を再開したユニリーバは、戦後の消費ブームに乗っかりつつアフリカをドライバーとして成長を続けた。1970年までに買収やさまざまなイノベーションを通じて広告代理店、市場調査会社、包装企業を立ち上げ、拡大と多角化を進め、1980年代初めには事業分野がプラスチック製品、包装、熱帯プランテーション、海運事業のほか、各種食品、 ホームケア製品、パーソナルケア製品など多岐に渡るようになった。

(3) 多角化からスリム化へ

 しかし、業績の良い事業と悪い事業の差が広がるにつれ安定した収益を維持するのが難しくなり、収益の少ない事業を維持するために資金を投入せざるを得なくなった。1970年代は協力サプライヤーに非中核業務を移管できるようになるにつれ、サプライチェーンに沿って拡大する戦略から手を引いた。そして1980年代には、大きなシェアを占め、なおかつ大きな成長が見込める中核製品に再び注力する決断を下し、大規模な買収と事業売却を進めた。売却した事業のなかには、動物用飼料、包装、輸送、魚の養殖などがあった。1990年代も同様に再編を続け、それまで50以上あった事業カテゴリーを13にまで削減し、パーソナルケアホームケア食品特殊化学品の4つの中核事業をもつこととなった。2000年代になるとそれまでの合理化に加え、持続可能性(sustainability)を踏まえた企業活動を行うように組織再編を行なったという。

2. ユニリーバの事業 ~安定した事業ポートフォリオ

 では企業としての成績、つまり利益構造を見ていくことにしよう。ユニリーバは現在、3つの事業セグメントを定義している:


図表2 ユニリーバの事業セグメント*4

1. Beauty & Personal Care primarily sales of skin cleansing (soap, shower), skin care (face, hand and body moisturisers), hair care (shampoo, conditioner, styling) and deodorants categories.
2. Foods & Refreshment primarily sales of ice cream, savoury (soups, bouillons, seasoning), dressings (mayonnaise, ketchup) and tea categories.
3. Home Care primarily sales of fabric category (washing powders and liquids, rinse conditioners) and includes a wide range of cleaning products.


非常に大雑把に言えば、1つ目が化粧品・ケア製品、2つ目が食料品、3つ目が狭義の意味での消費財と言える。ではユニリーバはこの3つのどこから利益を得ているのだろうか?

(1) グローバルの売上成績 ~躍進する化粧品・ケア製品と凋落する食料品~

 まず、直近の売上推移をまとめるみるととこうなる*5


f:id:suguru_125:20200728045136j:plainf:id:suguru_125:20200728045148j:plain

ここで特徴的なのが、2011年度は最大の売上シェア(49.05%)を占めていたFood & Refreshmentは直近の2019年度になると37.1%にまで下落しているのである。左図からも明らかなように絶対水準でも売上は減少している。

 では利益は出ているのか?*6


f:id:suguru_125:20200728050405j:plainf:id:suguru_125:20200728050417j:plain

こう見ると、Food & Refreshmentの利益率はほぼ横ばいではあるのに対して他2つは利益率を上昇させているのであって、相対的にFood & Refreshmentの利益率は落ちていると言える(2018年度は日本の会計基準であれば特別損益に相当する要因で利益率が上昇しているようだ。なので無視した方が良いと考える。)。とはいえ、3つのセグメントをバランスよく配していて、安定的な事業ポートフォリオを構築できているようだ。

(2) ユニリーバの地域別売上高 ~伸びる非欧米地域~

 今度は、地域別の売上高を見てみよう。ユニリーバは現在、

  1. Asia/AMET/RUB:アジア(Asia)、アフリカ(A)中東(Middle East(含トルコ(T)))、ロシア・ウクライナベラルーシ(RUB)
  2. Europe:欧州
  3. The Americas:アメリカ大陸(北中南米

の3つの地域セグメントを定めている。
 その売上推移をみるとこうだ:


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きれいに傾向が分かれていて、

  1. Asia/AMET/RUB:純増
  2. Europe:純減
  3. The Americas:純減すると、シェアにすると横ばい

となっている。利益率でみてみると、非欧米地域の存在感が強い


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(3) ユニリーバの日本ビジネス

 ちなみに日本でのユニリーバ・ビジネスについては、非上場企業であるため、詳しいデータがない。唯一見つけた、ユニリーバの日本法人が公表している企業案内によると、2008年のグループ売上高は950億円であり、同年のグローバル売上高の1.85%を占めている。同年の米国(US)での売上高はグローバルの15.9%、英国とオランダの合算売上高は8.5%を占めており、また同年に両国を除いて唯一国別売上高が記載されているブラジルですら4%近くであるから、日本の割合は少なくないと言える。とはいえ、絶対的に大きいとは言えないため、最重要とは言えないと考えられる。
 なお日本にある主要なグループ会社はこのとおり:

まとめ

今回はユニリーバという企業を大雑把に見てみた。次回(来週8日公開予定)はより詳細に利益構造や財務状態、株式の状態をを見ていくことにしよう。

*1:二元上場会社と取締役の資格制限 - 司法書士内藤卓のLEAGALBLOG参照。

*2:なおN.V.はEuronext: UNAとニューヨーク証券取引所NYSE: UN)に上場しており、他方でplcはロンドン証券取引所LSE: ULVR)とニューヨーク証券取引所NYSE: UL)に上場している。

*3:歴史 | 企業情報 | ユニリーバ・ジャパンをベースにLever Brothers - WikipediaMargarine Unie - Wikipediaを参照して筆者が整理・作成

*4:Unilever 2019年度アニュアルレポートを基に作成

*5:Unilever 各年アニュアルレポートを基に筆者作成。なお2016年度までFood & RefreshmentはそれぞれFoodとRefreshmentという別セグメントであった。経年比較をするために、両者の単純和を過去年度の同セグメント売上とした。以降の利益についても同様である。

*6:Unilever 各年アニュアルレポートを基に筆者作成。なお2016年度までFood & RefreshmentはそれぞれFoodとRefreshmentという別セグメントであった。経年比較をするために、両者の単純和を過去年度の同セグメント売上とした。以降の利益についても同様である。

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