長期間にわたる体調不良のため、更新が途切れてしまったが、今日から復帰したい。
原油先物価格がマイナスを記録したことが話題になっている。これの意味を考えておこう。
一般に先物価格の理論式は以下のようになる*1:
ここで「コンビニエンス・イールド」とは「物理的なコモディティの保有者に発生する利益」*2を意味する。たとえば、生肉や原油などは腐敗しやすかったり変異しやすかったりする。そのため、今手許にそのコモディティが存在し、即座に生産に利用できることに経済的な意義がある。この意義に伴う価値を表すものとなる。
スポット価格データが手許にないので断定できないが、報道を諸々見る限りスポット価格はマイナスを記録していない様子だ。また金利水準も大きく変化しているわけではない(米財務省が公表する日次米債金利水準を見ればそれは明らかである。)。となると、(1)保管コストが下がっている、または(2)コンビニエンス・イールドが上がっている、ために先物価格がマイナスになったことになる。
さて、巷の議論では前提視されているためにあまり記述されないためにここで注意しておきたいのが、原油は噴出量を制御できないという点である。こうした理由があるから、「原油の減産=原油をどこかに保管・貯蔵しておく」ということになるのだ。したがって需要が大きく減退している以上、在庫がダブつき保管コストはむしろ上がっているのであるから前者はあり得ず、「コンビニエンス・イールドが上がっている」ために原油先物価格がマイナスに至ったこととなる。
産油国は減産を通じてこれに対応せんとしている。たとえばロシアは国営企業に減産を指示したばかりであるという。では、こうして価格下落を受けて大きなダメージを受けている産油国は如何なる措置を取ることが可能なのか。安直に言えば「戦争」が有効な手段である。しかしコロナウイルスが流行する中での軍事活動は致命的である。したがって万が一、戦争経済の演出を企図しているとしてもそれは「今ではない」。個人的にも戦争・紛争の可能性を否定したいが、一応気にしているのが、チェチェンの状況である。
来月(5月)9日の戦勝記念パレードもできず、またロシア軍によるチェチェン介入から25年経つ今、ロシアの動向に注目しておきたい。
nsarchive.gwu.edu
(続く)