金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.112-115まで。
8. アメリカン・オプションのMonte Carlo法による評価
アメリカン・オプションの価格は、有限差分法またはツリー法によるのが一般的であった。しかし法でも計算できるようになってきた。
8.1 停止時刻型Monte Carlo法
まずはバンドリング・アルゴリズム、最適行使境界のバックワード・サーチ法のフレームワークとなる停止時刻型法を定義し、基本的な枠組みを示す。
停止時刻法とは、停止時刻が定義できる場合にその停止時刻において1つのパスを終了させ、同時点でペイオフを確定させる法である。
停止時刻におけるペイオフをとおけば、を確率変数と見なして
でオプション価格を算出する。
8.1.1 事例:株価リンク債への応用
株価が満期までに予め定められた株価水準(閾値)を下回れば、その時点で価格で期限前償還され、株価が満期まで閾値を下回らなければ、満期株価が償還されるような証券を考える。
このとき停止時刻を
により定義できる。
停止時刻型法を用いることで
を算出できる。
(1) | とする。 |
(2) | 株価サンプルパスを、になるまで、またはになるまで生成する。 |
(3) | 株価の第サンプルパスにおいて株価が閾値を初めて下回る時点をとして (a)もしならばペイオフとする、 (b)もしならばペイオフとする。 |
(4) | として(2)-(3)を繰り返す。 |
(5) | 証券価格をで算出する。 |
8.2 アメリカン・プット・オプション評価における停止時刻型Monte Carlo法
アメリカン・プット・オプションでは満期前での権利行使が最適になる場合がある。具体的には株価がある程度下がった場合にはそこで権利行使するのが最適になるような株価水準が存在し、それを最適行使境界または早期行使境界と呼ぶ。これはオプションの早期行使価値がある程度以上に高まった場合にはその時点で行使することに等しい。
一般にアメリカン・プット・オプションを時点において行使すべきかは、早期行使する場合の価値および持ち越した場合の価値の差額
を用いた最適行使基準
により判断する。
ただしアメリカン・プット・オプションの場合、最適行使境界が存在することが分かっているため、それを特定できるならば、最適行使基準は
に置き換えることが出来る。
法では前進的にパスを生成させるため、持ち越し価値が定まらない。そのため一般的な最適行使基準による判定ができない。一方で時刻において最適行使境界を定めるためには、時刻以降の最適行使境界を定めるためには、時刻以降の最適行使境界が必要となり、これも前進的にパスを発生させる法には算出が難しい。