定番書
を基に線形代数を学び直していく。
今日のまとめ
- 線形写像に対して像空間の次元をの階数(ランク)という。
- の別の基底を選び、基底をへ取り換える行列をとする。に関するの行列をとすれば、が成り立つ。したがって互いに相似な行列は、どれも同一の線形変換に対する様々な規定に関する行列による表現と解釈することができる。
4. 線形空間
4.7 線形写像
線形空間に基底を選び、線形写像を行列で表現することを考える。
線形空間においてある1つの基底を選ぶと、からへの同型写像が決まる。そこで、これら基底と同型写像を1組で考える。
を上の,次元の線形空間とする。またを線形写像とする。の基底を適当に取る。このとき合成写像はからの線形写像であるから、ある型行列を用いて
と書ける。この行列を基底に関するの行列という。
としたとき、およびその像を
と表すとき、
が成り立つ。ここでとする。
実用上は、
としての各成分を求めるのが実用的である。
4.7.1 基底の変更と線形写像
基底の取り方は一意ではないが、ではの基底を取り換えると、対応する行列はどのように変わるのか。
の基底に関するの行列をとし、もう1つの基底に関するの行列をとする。このときの基底をに取り換える行列をそれぞれとすれば、
である。したがって
である。したがって
が得られる。
線形写像に対し、像の基底を選ぶことにする。そしてこれを拡大したの基底をとする。次に各に対してが成り立つようなを取れば、は線形独立である。
一方でが成り立つことに注意すれば、であるから、その基底はを取る。の基底はで表される。線形写像の基底に関する行列は標準形
に等しい。ここまでは以下のような定理にまとめることができる。
この成果を踏まえて次のような概念を導入する。
からの階数(ランク)はに等しい。階数(ランク)の性質(1) の階数(ランク)はの任意の基底に関するの行列の階数(ランク)に等しい。
階数(ランク)の性質(2) 型行列の階数はの線形独立な列ベクトルの最大数に等しく、それは線形独立な行ベクトルの最大数にも等しい。
の列ベクトルをとする。が成り立つから、はを生成する。したがってちょうどこの線形独立な列ベクトルが存在する。
行ベクトルに関してはより明らかである。 )
4.7.2 階数を与える同値条件
ここまでで調べた階数を与える同値条件を整理すると以下のとおりとなる。
(1) | を基本変形で標準形に変形したときに対角線上に並ぶの個数。 | |
(2) | のでない小行列式の最大次数。 | |
(3) | によって定まる線形写像の像空間[tex:T_A(K^n)の次元。 | |
(4) | の線形独立な列ベクトルの最大数。 | |
(5) | の線形独立な行ベクトルの最大数。 |
の線形変換について基底に関するの行列をとすれば、
が成り立つ。またおよびその像を
と表すとき、
である。
の別の基底を選び、基底をへ取り換える行列をとする。に関するの行列をとすれば、
が成り立つ。したがって互いに相似な行列は、どれも同一の線形変換に対する様々な規定に関する行列による表現と解釈することができる。
定義:不変部分空間 線形変換に対し、がの部分空間で
が成り立つとき、はによる不変部分空間という。