はじめに
- いい歳なので、そろそろ体に向き合わないといけないのだが、最も気になるのが加齢臭などの「臭い」である。
- そこで臭いを科学的に学んでみようということで、を読んでみる。
- 前回:power-of-awareness.com
2. 体臭の傾向と対策
2.1 加齢臭
2.1.1 trans-2-ノネナールの生成
- 加齢臭は、trans-2-ノネナールという皮膚ガスが原因である。trans-2-ノネナールは皮脂が酸化することで生成される。皮脂は皮脂腺から分泌されるアブラで、汗腺から分泌された汗と混じり合って皮脂膜を作り、肌を保護する。
- 皮脂は、中性脂質とコレステロールやセラミドなどからなる。また、皮脂が皮膚表面の常在菌により分解されることで遊離脂肪酸を生じ、これらが肌のアブラになる。
- trans-2-ノネナールは、皮脂に含まれるパルミトレイン酸が原料になる。パルミトレイン酸が過酸化脂質により酸化されることで、trans-2-ノネナールが生じる。過酸化脂質自身も皮脂が原料で、紫外線や体内で生成される活性酸素により生成される。
- trans-2-ノネナールの皮膚放散量は年齢に依存する。男性では35歳ごろから、女性では40歳ごろから発生が始まる。皮脂の量は10代から20代にかけて増大して以降は減少するのに対し、パルミトレイン酸は加齢により徐々に増えてくる。活性化酸素も加齢で増える。
- 皮脂の分泌量には男性ホルモンが関係する。男性ホルモンは皮脂の分泌を促す一方で、女性ホルモンは抑制する。そのため、一般に男性の方が加齢臭が強くなる。
- trans-2-ノネナールは、皮脂の分泌が多い頭部や項部(うなじ)、腋窩(えきか、えきわ:わきの下)、胸部や背部を中心に発生しやすい。
- 人の体温は約36℃であるから人体は発熱体になる。そのため、体表には上昇気流が発生しやすく、trans-2-ノネナールは頭頂部から上に向かって広がりやすい傾向にある。
2.1.2 加齢臭の対策
- 加齢臭対策には、体をやさしく洗う:入浴などで皮脂を落とす、活性酸素による皮脂の酸化を防ぐ:バランスの取れた食事、適度な運動習慣、十分な睡眠をとることや抗酸化成分を持つ食品を摂取する、紫外線による皮脂の酸化を防ぐ:日傘や帽子を活用し、直射日光を浴びない、香水の利用:シトラス系の香りや森林調の香りを用いることがある。
- trans-2-ノネナールの原料となる皮脂を洗い流すことで加齢臭を抑えることができる。夜間就寝中にもtrans-2-ノネナールが発生することがあるため、日中に特に気を付けたい場合、朝も入浴したりシャワーを浴びることが有効である。ただし、過度に皮脂を落とすと皮脂の分泌量が過剰になり、trans-2-ノネナールの生成量も増大する恐れがある。
- trans-2-ノネナールは皮脂の酸化で生成するため、その発生原因の1つである紫外線を避けることで加齢臭を軽減できる。
- 体を内側からケアして活性酸素の発生を防ぐことも有効である。活性酸素とは、酸素分子(三重項酸素)が活性化され、反応性が高まった状態の化合物の総称である。一般には、ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、一重項酸素を指す。
- 活性酸素は、生体内では、ミトコンドリア内の電子伝達系において電子伝達物質の酸化還元サイクルを介して生成される。活性酸素は、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、ペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素、ビタミンCやポリフェノールなどの対外由来因子により除去され、通常その量は均衡に保たれる。しかし、過度な運動やストレス、空気汚染や喫煙などで産出量が過大になると問題を生じさせる。
- バランスの取れた食事、適度な運動習慣、十分な睡眠により活性酸素の過剰な産生を防ぐのが望ましい。また、抗酸化成分を豊富に含む食品の摂取で低減できる。具体的には、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド類、ポリフェノール類などが該当する。カシスや梅を使った実験でtrans-2-ノネナールの放散を減少させる効果が得られている。
- 香水の利用も有効な対策である。シトラス系(レモン、ライム、オレンジなどの香り)や森林調の香りが相性が良い。一方、ウッディ・パウダリーな香りが却って変なにおいになるように、適した香水を用いるべきであり、またシトラス系のにおいは持続性が低いため、適宜香りを足す必要がある。
(続く)
