はじめに
- いい歳なので、そろそろ体に向き合わないといけないのだが、最も気になるのが加齢臭などの「臭い」である。
- そこで臭いを科学的に学んでみようということで、を読んでみる。
- 前回:power-of-awareness.com
2. 体臭の傾向と対策
2.4 汗臭
2.4.1 汗が臭くなる原因
- 汗のにおい(汗放置臭)は、もっとも代表的な体臭の1つである。汗はエクリン汗腺、アポクリン汗腺から分泌される。ここではエクリン汗腺に関連して生じる汗臭を扱う。
- エクリン汗腺は、口唇や瞼を除く身体の大部分に分布し、一生涯活動する。エクリン汗腺の数には個人差があり、200-500万個と言われている。汗腺は手掌部、足底部、顔に相対的に多く分布する。エクリン汗腺には活動している能動汗腺と休眠汗腺とがある。
- 出生後3-5日後に手掌部と足底部以外から発汗できるようになり、手掌部と足底部は1-3か月後に発汗できるようになる。汗腺の能動化は約2歳半まで続き、その間に温暖な気候で育つと能動汗腺の数は増え、寒冷地に住んでいると少なくなる。
- エクリン汗腺からの発汗には①温熱性発汗:暑いときや運動時に体温調整を目的に発する汗、②精神性発汗:恐怖や緊張感を覚える心理的ストレス下において手掌部や足底部で生じる発汗、③味覚性発汗:辛い物や刺激の強いものを食べたときに生じる発汗の3種類がある。
- エクリン汗腺から生じる汗の99%は水であり、基本的に汗は無臭である。しかし、塩分やブドウ糖、アミノ酸、乳酸や尿素などの微量成分に皮膚常在菌が作用することで皮膚ガスが生じる。
- 代表的なのが、イソ吉草酸(俗に「群れた靴下のようなにおい」と呼ばれるもの。)やイソ吉草酸アルデヒド(俗に「むせるような甘酸っぱい焦げたにおい」と呼ばれるもの。)である。これらは悪臭防止法で定める特定悪臭物質である。
- 汗には皮脂や垢が混ざっているため原料物質の同定は困難である。が、L-ロイシンがイソ吉草酸やイソ吉草酸アルデヒドの有力な原料の一つである。
- 皮膚常在菌は「蒸れた環境」を好むため、足に密着するバスケットシューズやニーハイブーツやムートンブーツでは、本革性のビジネスシューズやレザーブーツに比べ、イソ吉草酸の皮膚放散量は顕著に増加する。また、皮膚常在菌は「ベトベトした汗」を好む。汗は血漿が原料である。体温が上昇すると血液の成分が汗腺に取り込まれる。このとき、ナトリウムイオンをはじめとした塩分は体内に必要な栄養素であるために血液に再吸収され、最終的に水分とわずかなミネラル分を含むサラサラの汗が生成される。しかし、大量に汗をかくと、再吸収が追いつかなくなり、汗の量が増すにつれて次第にベトベトした汗になる。塩分濃度が高い汗は乾きづらく、皮膚表面や頭髪、衣服に長時間残留する。また、炭酸水素イオン
も再吸収されにくくなることで、排出された直後の汗は塩基性に傾くことがある。皮膚常在菌はそのような環境を好むため、汗臭が強くなる。
- 汗がベタつく別の要因として、休眠汗腺がある。もともと能動汗腺である汗腺でも、冬季の一部の時期や汗をかく習慣がない人では一時的に休眠する場合がある。このような状態で急激に汗をかく場合、一部の能動汗腺からまとめて発汗するため、ベトベトな汗が生じることがある。そのため、春先は要注意な時期であると言える*1。
- 体の部位には、汗をかきやすい部位とかきにくい部位がある。それは、発汗量が汗腺おかずとあまり関係が無く、汗腺の能力に部位差があるためだと考えられる。背部や腹部、前胸部、前腕部など閾値体温に至るまで発汗しないが、それを超えると体温上昇に比例して発汗量が増大する部位と、正常体温でも発汗するが体温による発汗量変化が小さい部位とがある。
2.4.2 汗臭の対策
- 汗臭の対策には、①汗をウェットなもので拭くこと、②汗腺を衰えさせない、(a) 入浴法、(b)インターバル足歩③制汗剤を使うこと、④香水を用いることがある。
- 汗をウェットなもの(濡れハンカチや濡れタオル、汗拭きシート)で拭く。乾いたものでは、本来の体温調整機能を発揮できず、再度発汗する可能性がある。
- 汗腺を衰えさせないことで、サラサラの汗をかくようにする。具体的には、入浴法*2やインターバル足歩*3がある。
- 制汗剤には、皮膚常在菌の殺菌剤、汗を吸収する乾燥剤や汗の分泌を抑制する塩化アルミニウムなどが配合されている。そのため、どうしても汗臭を抑えたいときに用いると良い。ただし、発汗は体を正常に保つための重要な機能であるから、使いすぎは控える。
- スパイシーな香りや森林調の香りなど、ミドルノートのしっかりした香水を用いることで汗臭を抑えることができる。
- 靴を履いた後の足のにおい対策も重要である。重要なのは足の清潔を保つことで、余分な角質は時々ケアすべきである。靴選びも重要で、本革や布製の靴は比較的蒸れにくい。
- 靴のケアとして、・靴は最低2足用意してローテーションする、を行う。
(続く)
