はじめに
- いい歳なので、そろそろ体に向き合わないといけないのだが、最も気になるのが加齢臭などの「臭い」である。
- そこで臭いを科学的に学んでみようということで、を読んでみる。
- 前回:power-of-awareness.com
2. 体臭の傾向と対策
2.3 疲労臭
2.3.1 アンモニアの放散
- 皮膚から放散されるアンモニアのにおいは「疲労臭」と呼ばれる。運動や労働などの身体への負荷、心理的なストレスの負荷により増加する。
- もっとも主要なアンモニア産出機構は腸管である。食事に含まれるタンパク質やアミノ酸は腸管内でアンモニアに分解され、門脈を通じて肝臓に送られる。送られたアンモニアの大部分は肝臓のオルニチン回路で無毒な尿素に変換され、腎臓を通じて尿中に排出される。他方、尿素に変換されなかったアンモニアは血中に移行する。血中に移行したアンモニアは、血液が全身を循環する過程でけっつうから揮発して皮膚表面に移行し、皮膚ガスとして放散される。そのため、皮膚からのアンモニアの放散量は、血中アンモニア濃度に関連する。
- タンパク質を多く含む商品を摂取すると、皮膚アンモニア量は増え、3時間後にピークを迎えるという実験結果がある。ただし、個人差が大きく、皮膚アンモニアはタンパク質に対する個人の消化・吸収能力や、食品自体の消化・吸収性を反映していると考えられる。
- アンモニアの発生しやすい部位は、男女ともに足底部が最も高く、東部・頸部・手掌部では女性の方が、背部・上腿部・下腿部は男性の方が高い傾向にある。呼気からも放出されるが、皮膚からに比べ極微量であり、皮膚から放散されるアンモニアの方が室内環境の臭気源としては重要である。
- 運動負荷が増すと血中アンモニア濃度が増加することが知られている。これは、皮膚アンモニア放散量の増加が単に発汗量の増加に伴うものではなく、筋肉組織におけるATPの利用に伴い産出したアンモニアの増加量を反映していると考えられる。
- 足底部からのアンモニア放散量が多いのは、足底部の皮下に欠陥が多数分布していることや、体重による圧力負荷が大きいことが理由だと考えられる。
- 皮膚アンモニアが運動性披露の指標として有用ではある。ただし、運動中に皮膚アンモニアの放散量が減少する被験者も存在する。そうした被験者は日常的な運動習慣があり、実験のために安静を強いられたことによる心理的ストレスが原因であると考えられる。すなわち、心理的ストレスとも皮膚アンモニアの放散量に関係する可能性がある。
- ストレス負荷によるアンモニア放散量の増加量は、部位で差異がある。
2.3.2 疲労臭の対策
- 疲労臭の対策には、①肉や魚に偏った食事を避けること、②オルニチンを摂取すること、③毎晩入浴すること、④腸内環境を改善すること、⑤ミョウバン水を用いること、⑥香水を用いるがある。
- まず、タンパク質やアミノ酸の分解過程でアンモニアが発生するため、過度な摂取を避ける。
- 次に、アンモニアを尿素へ分解するオルニチン回路の構成物の1つであるオルニチンを摂取することも有効である。ただし、しじみの味噌汁程度では限定的な影響しかない。
- また、湯船に浸かることで、筋肉疲労が取れて精神的なストレスが緩和されるため、疲労臭対策になり得る。
- 腸内環境の改善が皮膚アンモニアの放散を抑制することが分かっている。ビフィズス菌が大腸内で生成する酸がアンモニアを抑制する可能性が考えられる。
- 他にも、衣服に染み付いたアンモニアへの対策として、ミョウバン水を用いることで抑えることができる。
- 最後に、フローラルやパウダリーの中でも貯時間持続するものを用いると良い。シトラス系は、当初はよいものの、長期的には却ってアンモニア臭を目立たせる恐れがある。
(続く)
