はじめに
- いい歳なので、そろそろ体に向き合わないといけないのだが、最も気になるのが加齢臭などの「臭い」である。
- そこで臭いを科学的に学んでみようということで、を読んでみる。
本書について
- 本書は「皮膚ガス」の観点から体臭を解説する。
- においに敏感な人が増え、においで不快感を与えることが嫌がらせの一種だと思われるようになったため、自分の体臭を気にする人が増えている。
- においは、感じた人の主観に依るため、客観的な評価は難しく、さらには思い込みで不快感を与えていると誤解する人もいる。
- 体臭の原因は1990年代後半から究明が進んだ。その結果、①体臭の原因物質が「皮膚ガス」であること、②皮膚ガスの構成成分の種類や組成は、身体状態のみならず生活行為や心の状態に密接に関係することが分かった。
- 皮膚ガスを調べることで、体臭に対して適切な対応を取ることができる。
- 皮膚ガスが持つ「メッセージ」にも関心が寄せられている。たとえば、病気になると体臭が変わると経験的に言われていたが、実際に皮膚ガスの組成が変化することが確認されている。
- 皮膚ガスは体表面から情報通信機器で検知でき、便利に情報を得られるようになっている。
1. 皮膚ガスは体臭のもと
1.1. 皮膚ガスは体臭のもと
- 「においで病気を知る」ことが2つのアプローチで実現しつつある:①優れた嗅覚を持つ動物の力を借りる、②「生体ガス」(人の体内や体表面で産生されるガス)を化学的に分析する。
- 生体ガスの検査は医療従事者でなくとも利用でき、利便性が高い。
- 皮膚ガスは極微量しか生成されず、体表面から放散され捕集が難しいため、研究が進んだのは1990年代後半だった。
1.2 体臭の認知
- 体臭の元になる微量な生体ガスを皮膚ガスという。皮膚ガスは皮膚の体表面から常に放散されており、嗅覚順応(同じ臭いになれて知覚できなくなること)により、その臭いを感じづらい。
- 他方、他人から漂ってきた皮膚ガスは新たな刺激として認知され、快・不快を感じることがある。
- 生物は①主嗅覚系、②鋤鼻(じょび)嗅覚系の2つの嗅覚器官をもつ。主嗅覚系はいわゆる「におい」の識別や認識を行い、②鋤鼻(じょび)嗅覚系はフェロモンなどの化学交信の役割を担う。ヒトの場合、①のみでフェロモンを介したコミュニケーションは無いと言われている。しかし、従来の説では説明しきれない事例が知られ始めている。
- 皮膚ガスは、①呼吸に伴い鼻孔、鼻腔に侵入し主嗅覚系に至る、②嗅細胞で電気信号に変換され脳に到達する、③大脳辺縁系を経由して大脳皮質の嗅覚野に行き、快・不快を判断するという流れで知覚される。
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- 嗅覚情報は、視覚と違い、仕分けられることなく大脳辺縁系に至るため、感情や記憶と結びつきやすい。
- 嗅細胞はにおい分子と結合してその存在を細胞内に伝達する嗅覚受容体がある。ヒトの場合約350種類ある、また40万種類のにおい分子を感じられると言われる。これは1種類の受容体が複数の分子と結合することができ、また濃度によって応答パターンも変化するためである。また、別の分子が1つの受容体で捉えられると相加的なにおいとなり、別の受容体でそれぞれが受容されると単純な混合臭となる。そのため、におい分子が単独で複数存在する場合と複数が共存する場合とでにおいの質が変化する。
- 体臭の原因となる皮膚ガスを特定できれば、その物理・化学的な特性から望ましい匂い(香り)の組合せを科学的に探索し得る。
(続く)

