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計量経済学の基礎(10/22)

 計量経済学を学んでいく。
 まずは

を中心に参照して基礎を学んでいく。

今日のまとめ

  • ある理論(に関係する注目している説明要因)を検証するのに、他の説明要因を説明変数に加えて推定する方法を、他の要因をコントロールして推定するという。
  • 質的な差を表すのに条件を満たすならば1、そうでなければ0となるようなダミー変数を用いることがある。
  • 複数の係数を検定するには、制約付きの回帰を制約なしの回帰に式変形してから推定し、検定を行うアプローチである。推定後、F検定で仮説検定すればよい。
  • 複数の係数に関する仮説検定としてよく対象となるのは、ある期を境として経済構造が変化したか否かの検定である。これはF検定の1つであるが、Chowテストと呼ばれている。

6. K変数回帰モデルの応用

 回帰モデルを用いた実証分析では、ある理論(に関係する注目している説明要因)を検証するのに、他の説明要因を説明変数に加えて推定する方法を、他の要因をコントロールして推定するという。
 モデルによる分析では説明変数の選択や採用する関係によって、当てはまりや符号、有意性が変わる点に注意すべきである。
 質的な差を表すのに条件を満たすならば1、そうでなければ0となるようなダミー変数を用いることがある。たとえばダミー変数Dを入れたモデルとして


\begin{aligned}
Y&=\beta_0+\beta_1 X_1+\cdots+\beta_n X_n+\gamma D+\varepsilon\\
Y&=\beta_0+\beta_1 X_1+\cdots+\beta_n X_n+\beta^{\prime}D X_k+\varepsilon\\
\end{aligned}

が考えられる。前者はダミー変数を用いて考慮したい要因を定数項として加味している。後者はダミー変数を用いて考慮したい要因を説明変数X_kの係数(傾き)の変化として加味しており、前者を定数項ダミー、後者を係数ダミーと呼ぶ。
 個別係数のテストにはたとえばt検定を行う。

6.1 複数の係数に対する検定

 モデルとして


\begin{aligned}
\boldsymbol{Y}=\boldsymbol{X}\boldsymbol{\beta}+\boldsymbol{\varepsilon}
\end{aligned}

を考える。ここに係数に対する線形の制約


\begin{aligned}
\boldsymbol{C}\boldsymbol{\beta}=\boldsymbol{r}
\end{aligned}

を考える。\boldsymbol{C},\ \boldsymbol{r}はともに既知で、制約の数をpとする。
 これの推定値を検定するには、制約の推定値を作って制約\boldsymbol{r}に近いかを考える方法が1つある。とはいえ共分散行列の計算が面倒である。また制約付きと制約なしの回帰を行い、その残差二乗和の差を見る方法もあるが、これも煩雑である。
 より実践的なのは、制約付きの回帰を制約なしの回帰に式変形してから推定し、検定を行うアプローチである。推定後、F検定で仮説検定すればよい。

6.1.1 Chowテスト

 複数の係数に関する仮説検定としてよく対象となるのは、ある期を境として経済構造が変化したか否かの検定である。これはF検定の1つであるが、Chowテストと呼ばれている。

 説明変数をk個、変化前と後で標本数をn_1,n_2とする。またモデルを


\begin{aligned}
変化前:&\ \ \ \ \boldsymbol{Y}_B&=\boldsymbol{X}_B\boldsymbol{\beta}_B+\boldsymbol{\varepsilon}_B\\
変化後:&\ \ \ \ \boldsymbol{Y}_A&=\boldsymbol{X}_A\boldsymbol{\beta}_A+\boldsymbol{\varepsilon}_A
\end{aligned}

と書くことにする。これらをまとめれば観測期間全体における制約なしモデルは


\begin{aligned}
\boldsymbol{Y}=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{Y}_B\\
\boldsymbol{Y}_A
\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{X}_B&\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{0}&\boldsymbol{Y}_A
\end{bmatrix}\begin{bmatrix}
\boldsymbol{\beta}_B\\
\boldsymbol{\beta}_A
\end{bmatrix}+\begin{bmatrix}
\boldsymbol{\varepsilon}_B\\
\boldsymbol{\varepsilon}_A
\end{bmatrix}=\boldsymbol{X}\boldsymbol{\beta}+\boldsymbol{\varepsilon}
\end{aligned}

と書き直すことが出来る。ここで


\begin{aligned}
\boldsymbol{X}&=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{X}_B&\boldsymbol{0}\\
\boldsymbol{0}&\boldsymbol{Y}_A
\end{bmatrix}\\
\boldsymbol{\beta}&=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{\beta}_B\\
\boldsymbol{\beta}_A
\end{bmatrix}\\
\boldsymbol{\varepsilon}&=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{\varepsilon}_B\\
\boldsymbol{\varepsilon}_A
\end{bmatrix}
\end{aligned}

とおいた。ここで考える制約は、構造変化が無かった場合で、すなわち\boldsymbol{\beta}_B=\boldsymbol{\beta}_A=\boldsymbol{\beta}_0が成り立つときである。この制約を考慮したモデルは


\begin{aligned}
\boldsymbol{Y}=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{Y}_B\\
\boldsymbol{Y}_A
\end{bmatrix}=\begin{bmatrix}
\boldsymbol{X}_B\\
\boldsymbol{X}_A
\end{bmatrix}\boldsymbol{\beta}_0+\begin{bmatrix}
\boldsymbol{\varepsilon}_B\\
\boldsymbol{\varepsilon}_A
\end{bmatrix}=\boldsymbol{X}^{*}\boldsymbol{\beta}_0+\boldsymbol{\varepsilon}
\end{aligned}

と表すことができる。
 以上を受けて、制約をテストするのに次の2つの回帰を行い残差二乗和を比べる方法を行う。

  (1) 回帰UR 制約なしのモデルを推定し、残差二乗和{RSS}_{UR}を求める。
  (2) 回帰R 制約ありのモデルを推定し、残差二乗和{RSS}_{R}を求める。

制約なしモデルおよび制約ありモデルにおける説明変数はそれぞれ2k,\ kであるから構造変化のF値は


\begin{aligned}
F=\displaystyle{\frac{\displaystyle{\frac{RSS_{R}-RSS_{UR}}{k}}}{\displaystyle{\frac{RSS_{UR}}{n_1+n_2-2k}}}}
\end{aligned}

で与えられ、帰無仮説のもとで自由度(k,n_1+n_2-2k)F分布に従う。
 {RSS}_{UR}の推定は大きな\boldsymbol{X}を作ってから回帰を行う点が面倒ではある。しかし、


\begin{aligned}
RSS_{UR}=RSS_{A}+RSS_{B}
\end{aligned}

で計算できる。ここでRSS_{B}は変化前の標本で回帰して求めた残差二乗和を、RSS_{A}は変化後の標本で回帰して求めた残差二乗和を表す。
 このような全期間の標本を用いた回帰、変化前の標本を用いた回帰および変化後の標本を用いた制約なし回帰を行い、これらの残差二乗和3つを用いてF


\begin{aligned}
F=\displaystyle{\frac{\displaystyle{\frac{RSS_{R}-RSS_{UR}}{k}}}{\displaystyle{\frac{RSS_{UR}}{n_1+n_2-2k}}}}
\end{aligned}

帰無仮説のもとで自由度(k,n_1+n_2-2k)F分布に従うことを用いた検定を行う手法である。

6.2 結果のレポーティング

 回帰分析を行った結果をレポーティングする際には、以下を守るべきである:

  • 標本および変数の定義を厳密に述べること
  • 読者が結果を評価するのに必要な統計量を見やすく書くこと

  ・回帰係数および標準誤差は有効数字4桁とする。
  ・t値は小数点以下2桁で十分。
  ・決定係数は小数点以下4桁で十分。

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