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金融工学でのモンテカルロ法(05/23):一般の分布に従う乱数(2)

 今回から、金融工学におけるシミュレーションについて学んでいく。テキストとして以下を使う。今回はP.52-P.58まで。


power-of-awareness.com

4. 一般の分布に従う乱数

 モンテカルロ法

  • 問題に沿った(同時)分布に従う(多変量)乱数列の生成
  • その乱数列を使った計算

の2つの部分に分けて考えられる。乱数列の生成は更に

  1. 一様分布に従う乱数列\{u_1,u_2,\cdots,u_n\}の生成
  2. それを元にした必要な同時分布に従う乱数列\{\boldsymbol{x}_1,\boldsymbol{x}_2,\cdots,\boldsymbol{x}_n\}の生成

に分けられる。

4.4 正規分布

 ここでは特に正規分布に従う乱数の生成方法を説明する。

4.4.1 逆関数

 標準正規分布の分布関数の逆関数\Phi^{-1}(x)を用いると、一様分布に従う乱数列から、標準正規分布に従う乱数列が得られる。ただし、\Phi^{-1}(x)は解析的に求めることはできないため、Moroの方法などで近似的に算出する*1

4.4.2 極座標

 2変量の確率変数(X,Y)の同時分布関数が


\begin{aligned}
\Phi(x,y)=\int_{-\infty}^{x}\int_{-\infty}^{y}\displaystyle{\frac{1}{2\pi}}\exp\left(\displaystyle{-\frac{u^2+v^2}{2}}\right)du dv
\end{aligned}

と書けるとき、(X,Y)は2次元標準正規分布に従うという。2次元標準正規分布では、周辺分布F_X, F_Yはいずれも標準正規分布になる。またX,\ Yは独立である。極座標、一様分布の逆関数法、指数関数の逆関数法を組み合わせると、正方形(0,1)に一様に分布する点列から、2次元標準正規分布に従う点列が得られる。
 2変量標準正規分布の密度関数f(r,\theta)確率密度関数


\begin{aligned}
f(r,\theta)=\displaystyle{\frac{1}{2\pi}}\exp\left(\displaystyle{-\frac{r^2}{2}}\right)=\displaystyle{\frac{1}{2\pi}}\exp\left(\displaystyle{-\frac{s}{2}}\right),\ s=r^2
\end{aligned}

で書ける。確率変数X\sim U(0,2\pi)に従うとき、g(X)の期待値は


\begin{aligned}
E[g(X)]=\int_{0}^{2\pi}g(\theta)\displaystyle{\frac{1}{2\pi}}d\theta=\int_{0}^{1}g(2\pi\theta)d\theta
\end{aligned}

と書ける。またX\sim Exp(1/2)であるとき、g(\sqrt{X})の期待値は、


\begin{aligned}
E[g(X)]=\int_{0}^{\infty}g(\sqrt{s})\displaystyle{\frac{1}{2}}\exp\left(-\displaystyle{\frac{s}{2}}\right)ds=\int_{0}^{1}g(\sqrt{-2\log{(1-s)}})ds
\end{aligned}

である。
 以上から、確率変数X(r,\theta)=X(\sqrt{s},\theta)が2次元標準正規分布に従うとき、g(X)の期待値は


\begin{aligned}
E[g(X)]&=\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\infty}g(r,\theta)\displaystyle{\frac{1}{2\pi}}\exp\left(-\displaystyle{\frac{s}{2}}\right)rdrd\theta\\
&=\int_{0}^{\infty}\left[\int_{0}^{1}g(\sqrt{s},2\pi\theta)d\theta \right]\displaystyle{\frac{1}{2}}\exp\left(-\displaystyle{\frac{s}{2}}\right)ds\\
&=\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}g(\sqrt{-2\log{(1-s)}},2\pi\theta)d\theta ds
\end{aligned}

で計算できる。
 これを活用して2次元標準正規分布に従う乱数を得るにはたとえばBox-Muller法がある*2
 またBox-Muller-Marsaglia法もある。
 まず単位円の中に一様に分布する点列をつくり、指数分布の逆関数法を用いて2次元標準正規分布に変換する方法である。

(1) 正方形(0,1)^2に一様に分布する点列(u_n^{(1)},u_n^{(2)})を生成する。
(2) 点列(u_n^{(1)},u_n^{(2)})から逆関数法によって正方形(-1,1)^2の中に一様に分布する点列(x_n^{(1)},x_n^{(2)})を生成する。
(3) 点列(x_n^{(1)},x_n^{(2)})から不要な点を取り除いて単位円の内側に一様に分布する点列(y_n^{(1)},y_n^{(2)})を生成する。点(y_n^{(1)},y_n^{(2)})極座標(r_n,\theta_n)
\begin{aligned}r_n&=\sqrt{s_n},\ s_n=(y_n^{(1)})^2+(y_n^{(2)})^2,\\\theta_n&=\tan^{-1}\left(\displaystyle{\frac{y_n^{(1)}}{y_n^{(2)}}}\right)\end{aligned}
で表示すると、\{r_n\}は動径方向(0,1)で一様に分布し\{\theta_n\}は角方向で(0,2\pi)で一様に分布する。
(4) 動径方向r_nに指数分布の逆関数法を用いると、2次元標準正規分布に従う点列\{t_n,\theta_n\}
\begin{aligned}t_n=\sqrt{-2\log{(1-s_n)}}\end{aligned}
が得られる。
 (t_n,\theta_n)を再びデカルト座標(z^{(1)},z^{(2)})で表示すると
\begin{aligned}z_n^{(1)}&=y_n^{(1)}\sqrt{\displaystyle{\frac{-2\log{(1-s_n)}}{s_n}}},\\z_n^{(2)}&=y_n^{(2)}\sqrt{\displaystyle{\frac{-2\log{(1-s_n)}}{s_n}}}\end{aligned}
点列\{(z_n^{(1)},z_n^{(2)})\}は2次元正規分布に従う。
4.4.3 一般の多次元正規分布

 k次元確率ベクトル\boldsymbol{X}=(X^{(1)},\cdots,X^{(k)})


\begin{aligned}
f(\boldsymbol{x})=\displaystyle{\frac{1}{(2\pi)^{n/2}\sqrt{|\Sigma|}}}\exp{\left(-\displaystyle{\frac{^{t}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{\mu})\Sigma^{-1}(\boldsymbol{x}-\boldsymbol{\mu})}{2}}\right)}
\end{aligned}

にしたがうとき、\boldsymbol{X}\sim N_k(\boldsymbol{\mu},\Sigma)である。\boldsymbol{\mu}=\boldsymbol{0},\ \Sigma=Iであるとき、N_k(\boldsymbol{0},\Sigma)k次元標準正規分布という。
 X\sim N_k(\boldsymbol{0},I)で、Y\sim N_k(\boldsymbol{0},\Sigma)とする。さらに正則行列Cを用いてY=CXと表されたとする。このとき、\Sigma=C ^{t}Cである。このCYをCholesky分解することで得られる。

 k次元分散共分散行列を\Sigma=(\sigma_{ij})、下三角行列C=(c_{ij})の各要素を


\begin{aligned}
c_{11}&=\sqrt{\sigma_{11}},\\
c_{i1}&=\displaystyle{\frac{\sigma_{i1}}{\sqrt{\sigma_{11}}}},\ j=2,3,\cdots,k,\\
c_{jj}&=\displaystyle{\sqrt{\sigma_{jj}-\sum_{l=1}^{j-1}c_{jl}^2}},\ j=2,3,\cdots,k,\\
c_{ij}&=\displaystyle{\frac{1}{c_{jj}}\left(\sigma_{ij}-\sum_{l=1}^{j-1}c_{il}c_{jl}\right)},\ j\lt i,\ i=2,3,\cdots,k-1
\end{aligned}

とすれば、


\begin{aligned}
\Sigma=C ^{t}C
\end{aligned}

となる。

 逆関数法およびCholesky分解を順に用いるとk次元超立方体(0,1)^kに一様に分布する点列Uから、多次元標準正規分布に従う確率変数\boldsymbol{X}を介して、一般の多次元正規分布に従う確率変数\boldsymbol{Y}が得られる:

(1) k次元超立方体(0,1)^kに一様に分布する点列\{\boldsymbol{u}_n\}=\{(u_n^{(1)},\cdots,u_n^{(k)})\}を生成する。
(2) \{\boldsymbol{u}_n\}から逆関数法又は極座標法によりk次元標準正規分布に従う点列\{\boldsymbol{x}_n\}=\{(x_n^{(1)},\cdots,x_n^{(k)})\}を生成する。
(3) 欲しいk次元正規分布の分散共分散行列\SigmaをCholesky分解してCを求める。
(4) 点列\{\boldsymbol{y}_n\}=\{(y_n^{(1)},\cdots,y_n^{(k)})\}\boldsymbol{y}_n=C\boldsymbol{x}_nで得る。
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