統計学を真剣に学ぶ人のために、個人的にまとめているノートを公開する。
底本として
を用いる。
前回
3. 代表的な一次元確率分布
有名な1次元確率分布を紹介する。代表値の値や特徴的な性質についても同様に述べることとする。全体に共通して利用できる公式を導出しておく。すなわち
が成り立つ。
( 確率変数に対して
(離散の場合)
(連続の場合)
3.2 連続型確率分布
連続な確率変数の従う分布について各種統計量を導出する
3.2.4 カイ二乗分布
確率変数の確率密度関数が
と書けるとき確率変数は自由度のカイ二乗分布に従うという。なおはガンマ関数である。- 密度関数の確認
である。ここでとおけばであり、である。また
であるから、
- 平均:
任意の複素数に対するガンマ関数の性質に注意すると
である。この積分部分は自由度のカイ二乗分布の確率密度をで積分したものであるから、その値はであり、
- 分散:
任意の複素数に対するガンマ関数の性質に注意すると
を得る。ここで
である。この積分は自由度のカイ二乗分布の確率密度をで積分したものであるからその値はである。したがって
を得る。
3.2.5 ガンマ分布
確率変数の確率密度関数が
と書けるとき確率変数はガンマ分布に従うという。なお母数の場合が指数分布である。
- 密度関数の確認:
である。ここでとおくとでありならばであるから
- 平均:
ここでとおくとでありならばであるから
- 分散:
を得る。ここでとおくとでありならばであるから
参考文献
- Lehmann, E.L., Casella, George(1998), "Theory of Point Estimation, Second Edition", (Springer)
- Lehmann, E.L., Romano, Joseph P.(2005), "Testing Statistical Hypotheses, Third Edition", (Springer)
- Sturges, Herbert A.,(1926), "The Choice of a Class Interval", (Journal of the American Statistical Association, Vol. 21, No. 153 (Mar., 1926)), pp. 65-66
- 上田拓治(2009)「44の例題で学ぶ統計的検定と推定の解き方」(オーム社)
- 大田春外(2000)「はじめよう位相空間」(日本評論社)
- 小西貞則(2010)「多変量解析入門――線形から非線形へ――」(岩波書店)
- 小西貞則,北川源四郎(2004)「シリーズ予測と発見の科学2 情報量基準」(朝倉書店)
- 小西貞則,越智義道,大森裕浩(2008)「シリーズ予測と発見の科学5 計算統計学の方法」(朝倉書店)
- 佐和隆光(1979)「統計ライブラリー 回帰分析」(朝倉書店)
- 清水泰隆(2019)「統計学への確率論,その先へ ―ゼロからの速度論的理解と漸近理論への架け橋」(内田老鶴圃)
- 鈴木 武, 山田 作太郎(1996)「数理統計学 基礎から学ぶデータ解析」(内田老鶴圃)
- 竹内啓・編代表(1989)「統計学辞典」(東洋経済新報社)
- 竹村彰通(1991)「現代数理統計学」(創文社)
- 竹村彰通(2020)「新装改訂版 現代数理統計学」(学術図書出版社)
- 東京大学教養学部統計学教室編(1991)「基礎統計学Ⅰ 基礎統計学」(東京大学出版会)
- 東京大学教養学部統計学教室編(1994)「基礎統計学Ⅱ 人文・社会科学の統計学」(東京大学出版会)
- 東京大学教養学部統計学教室編(1992)「基礎統計学Ⅲ 自然科学の統計学」(東京大学出版会)
- 豊田秀樹(2020)「瀕死の統計学を救え! ―有意性検定から「仮説が正しい確率」へ―」(朝倉書店)
- 永田靖(2003)「サンプルサイズの決め方」(朝倉書店)
- 柳川堯(2018)「P値 その正しい理解と適用」(近代科学社)