統計学を真剣に学ぶ人のために、個人的にまとめているノートを公開する。
底本として
を用いる。
前回
3. 代表的な一次元確率分布
有名な1次元確率分布を紹介する。代表値の値や特徴的な性質についても同様に述べることとする。全体に共通して利用できる公式を導出しておく。すなわち
が成り立つ。
3.2 連続型確率分布
連続な確率変数の従う分布について各種統計量を導出する
3.2.8 t分布
確率変数の確率密度関数が
と書けるとき確率変数は自由度の分布に従うという。また互いに独立な確率変数に対して確率変数の従う分布でもある*1。なおのときのt分布をとくにCauchy分布(前述)という。
- 平均:
- 分散:
である。ここでとおくとよりであり
である。また
を得る。以上から
である。ここではベータ関数である。に対してであるから
として
が成り立つ。以上をまとめて
を得る。
- 特性関数:特定の形式で書けない
3.2.10 F分布
確率変数の確率密度関数が
と書けるとき確率変数は自由度の分布に従うという。また互いに独立なに対して統計量
もまた自由度の分布に従う。
- 平均:
である。ここでとおくとが成り立ち、であるから、これを代入することで
を得る。
ここでに関する積分について
とベータ関数に帰着できる。したがって
である。
ベータ関数とガンマ関数の関係式より
が成り立つ。そしてガンマ関数の性質から
が得られる。
- 分散:
であるから、
である。
である。
ここで平均のときと同様にとおけば
であるから、
が成り立つ。
ここで
が成立するから、
である。ここでベータ関数とガンマ関数の関係から
が成り立つ。更にガンマ関数の性質から
である。以上を代入して
を得る。
参考文献
- Lehmann, E.L., Casella, George(1998), "Theory of Point Estimation, Second Edition", (Springer)
- Lehmann, E.L., Romano, Joseph P.(2005), "Testing Statistical Hypotheses, Third Edition", (Springer)
- Sturges, Herbert A.,(1926), "The Choice of a Class Interval", (Journal of the American Statistical Association, Vol. 21, No. 153 (Mar., 1926)), pp. 65-66
- 上田拓治(2009)「44の例題で学ぶ統計的検定と推定の解き方」(オーム社)
- 大田春外(2000)「はじめよう位相空間」(日本評論社)
- 小西貞則(2010)「多変量解析入門――線形から非線形へ――」(岩波書店)
- 小西貞則,北川源四郎(2004)「シリーズ予測と発見の科学2 情報量基準」(朝倉書店)
- 小西貞則,越智義道,大森裕浩(2008)「シリーズ予測と発見の科学5 計算統計学の方法」(朝倉書店)
- 佐和隆光(1979)「統計ライブラリー 回帰分析」(朝倉書店)
- 清水泰隆(2019)「統計学への確率論,その先へ ―ゼロからの速度論的理解と漸近理論への架け橋」(内田老鶴圃)
- 鈴木 武, 山田 作太郎(1996)「数理統計学 基礎から学ぶデータ解析」(内田老鶴圃)
- 竹内啓・編代表(1989)「統計学辞典」(東洋経済新報社)
- 竹村彰通(1991)「現代数理統計学」(創文社)
- 竹村彰通(2020)「新装改訂版 現代数理統計学」(学術図書出版社)
- 東京大学教養学部統計学教室編(1991)「基礎統計学Ⅰ 基礎統計学」(東京大学出版会)
- 東京大学教養学部統計学教室編(1994)「基礎統計学Ⅱ 人文・社会科学の統計学」(東京大学出版会)
- 東京大学教養学部統計学教室編(1992)「基礎統計学Ⅲ 自然科学の統計学」(東京大学出版会)
- 豊田秀樹(2020)「瀕死の統計学を救え! ―有意性検定から「仮説が正しい確率」へ―」(朝倉書店)
- 永田靖(2003)「サンプルサイズの決め方」(朝倉書店)
- 柳川堯(2018)「P値 その正しい理解と適用」(近代科学社)
*1:これは別項において扱う。