「大人の教養・知識・気付き」を伸ばすブログ

一流の大人(ビジネスマン、政治家、リーダー…)として知っておきたい、教養・社会動向を意外なところから取り上げ学ぶことで“気付く力”を伸ばすブログです。データ分析・語学に力点を置いています。 →現在、コンサルタントの雛になるべく、少しずつ勉強中です(※2024年1月21日改訂)。

MENU

証券投資論(15/21)

 証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である

を参考に学んでいく。

7. 確率解析の基礎

 時間が連続的に推移する投資決定問題に必要な確率解析の基礎を扱う。

7.1 線形確率微分方程式

 任意の時間tおよび十分に小さな時間幅h\gt0を考え、時間区間[t,t+h]における系の状態X(t)の変動が


\begin{aligned}
X(t+h)-X(t)=A(t)X(t)h+V(t+h)-V(t)
\end{aligned}

で与えられるものとする。ここでV(t+h)-V(t)は確率増分であり、{}^{\forall}t(E[V(t+h)-V(t)]=0)で時間に関して独立だと仮定する。増分hが十分に小さければ、h=dtとおくことで


\begin{aligned}
dX(t)=A(t)X(t)dt+dV
\end{aligned}

という線形確率微分方程式を得る。ここでE[dV]=0, V[dV]=dtである。本式で\{V[t+dt]-V[t],V[t+2dt]-V[t+dt],\cdots\}が独立かつ同一の正規分布に従うとき、V(t)\mathrm{Wiener}過程または\mathrm{Brown}運動に従うという。このとき確率増分の分散はdtに比例する。増分の分散がo(dt){dt}^2のオーダーで無いため、hが限りなく小さくなっても分散項は消滅しない。
 もし\boldsymbol{X}がベクトルであるならば、\mathbb{V}[\boldsymbol{X}]=\Sigmaとおけば、


\begin{aligned}
\mathbb{V}[\boldsymbol{V}(t+h)-\boldsymbol{V}(t)]&=h\Sigma,\\
\mathbb{V}[dV]&=\Sigma dt
\end{aligned}

が成り立つ。
 ある時点t_0におけるX(t_0)が所与だとして、確率微分方程式


\begin{aligned}
dX(t)=A(t)X(t)dt+dV
\end{aligned}

を求めるために区間[t_0,t]n個に分割し、t_0\lt t_1\lt\cdots\lt t_n=tとする。また分割した小区間は等間隔でその間隔をhとしてh=\displaystyle{\frac{t_n-t_0}{n}}とする。このときに


\begin{aligned}
dX(t_i)&=X(t_i+h)-X(t_i)=X(t_{i+1})-X(t_i),\\
dV(t_i)&=V(t_{i+1})+V(t_i)
\end{aligned}

と定義すると、


\begin{aligned}
X(t_n)=&\{1+A(t_{n-1})h\}X(t_{n-1})+dV(t_{n-1})\\
=&\{1+A(t_{n-1})h\}\{1+A(t_{n-2})h\}X(t_{n-2})\\
&+\{1+A(t_{n-1})h\}dV(t_{n-2})+dV(t_{n-1})\\
\end{aligned}

と書ける。これを繰り返すことで


\begin{aligned}
\Phi(t_i,t_j)=\begin{cases}
\displaystyle{\prod_{k=j}^{i-1}\{1+A(t_k)h\}},&i\geq k+1,\\
1,&i\lt k+1
\end{cases}
\end{aligned}

と定義すれば、


\begin{aligned}
X(t_n)=\Phi(t_n,t_0)X(t_0)+\displaystyle{\sum_{j=0}^{n-1}\Phi(t_j,t_{j+1})dV(t_j)}
\end{aligned}

を得る。これは差分方程式


\begin{aligned}
X(t+h)-X(t)=A(t)X(t)h+V(t+h)-V(t)
\end{aligned}

の解である。定義式から状態遷移\Phi(t_i,t_j)は差分方程式


\begin{aligned}
d\Phi(t_i,t_0)&=\Phi(t_{i+1},t_0)-\Phi(t_i,t_0)\\
&=A(t_i)\Phi(t_i,t_0)h
\end{aligned}

を満たす。


\begin{aligned}
X(t_n)=\Phi(t_n,t_0)X(t_0)+\displaystyle{\sum_{j=0}^{n-1}\Phi(t_j,t_{j+1})dV(t_j)}
\end{aligned}


\begin{aligned}
\mathbb{V}[\boldsymbol{V}(t+h)-\boldsymbol{V}(t)]&=h\Sigma,\\
\mathbb{V}[dV]&=\Sigma dt
\end{aligned}

においてh\rightarrow0としたときの線形確率微分方程式


\begin{aligned}
X(t)=\Phi(t,t_0)X(t_0)+\displaystyle{\int_{t_0}^{t}\Phi(t,s)dV(s)}
\end{aligned}

に対する1つの解法を示唆している。
 この式の積分は確率過程の積分を含むため確率積分と呼ばれる。伊藤の確率積分を踏まえると、確率過程\{f(t);t\geq0\}\{V(t);t\geq0\}に関する確率積分は次の部分和


\begin{aligned}
\displaystyle{\int_{t_0}^{t}f(s)dV(s)}=\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\sum_{j=1}^{n}f(t_j)\{V(t_{j+1})-V(t_{j})\}}
\end{aligned}

の極限として定義される。ここで確率変数の数列\{g_n\}の収束を二乗平均の意味での収束値として定義する。すなわち


\begin{aligned}
\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}E[(g_n-g)^2]=0}\Longleftrightarrow\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}g_n}=g
\end{aligned}

で定義する。
 確率積分は期待値と積分とが交換できるという性質を持つ。差分方程式


\begin{aligned}
d\Phi(t_i,t_0)&=\Phi(t_{i+1},t_0)-\Phi(t_i,t_0)\\
&=A(t_i)\Phi(t_i,t_0)h
\end{aligned}

より状態遷移\Phi(t,t_0)微分方程式


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{d\Phi(t,t_0)}{dt}}=A(t)\Phi(t,t_0)
\end{aligned}

を満たす。A(t)=A(一定)ならば、この微分方程式は反復法によって解くことができる。すなわちt_0=0とし\Phi_0(t,0),\Phi_1(t,0),\cdots再帰的に


\begin{aligned}
\Phi_0(t,0)&=1,\\
\Phi_1(t,0)&=1+\displaystyle{\int_{0}^{t}A\Phi_{1}(s,0)ds}=1+At,\\
\Phi_2(t,0)&=1+\displaystyle{\int_{0}^{t}A\Phi_{2}(s,0)ds}=1+At+\displaystyle{\frac{A^2t^2}{2!}},\\
&\vdots,\\
\Phi_n(t,0)&=1+\displaystyle{\int_{0}^{t}A\Phi_{n-1}(s,0)ds}=1+At+\displaystyle{\frac{A^2t^2}{2!}}+\cdots+\displaystyle{\frac{A^nt^n}{n!}}
\end{aligned}

と定義する。ここでn\rightarrow\inftyとすれば\Phi_n(t,0)


\begin{aligned}
\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\Phi_n(t,0)}=1+\displaystyle{\int_{0}^{t}A\Phi_{n-1}(s,0)ds}=1+At+\displaystyle{\frac{A^2t^2}{2!}}+\cdots+\displaystyle{\frac{A^nt^n}{n!}}+\cdots=e^{At}
\end{aligned}

に収束するため、以上から


\begin{aligned}
\Phi(t,t_0)=e^{A(t-t_0)},t\geq t_0
\end{aligned}

である。
 またE[X(t)]E[dV(s)]=0であり、積分と期待値の交換により、X(t_0)を所与とすれば、


\begin{aligned}
E[X(t)]&=E\left[\Phi(t,t_0)X(t_0)+\displaystyle{\int_{t_0}^{t}\Phi(t,s)dV(s)}\right]\\
&=E[\Phi(t,t_0)X(t_0)]+E\left[\displaystyle{\int_{t_0}^{t}\Phi(t,s)dV(s)}\right]\\
&=E[\Phi(t,t_0)X(t_0)]+\displaystyle{\int_{t_0}^{t}\Phi(t,s)\cdot E\left[dV(s)\right]}\\
&=\Phi(t,t_0)X(t_0)
\end{aligned}

である。また時間区間[t,t+h]における系の状態X(t)の変動


\begin{aligned}
X(t+h)-X(t)=A(t)X(t)h+V(t+h)-V(t)
\end{aligned}

において両辺の期待値を取ることで


\begin{aligned}
E[dX(t)]&=E[A(t)X(t)dt+V(t+h)-V(t)]\\
&=E[A(t)X(t)dt]+E[V(t+h)-V(t)]\\
&=E[A(t)X(t)dt]\\
&=A(t)X(t)dt
\end{aligned}

を得る。

プライバシーポリシー お問い合わせ