証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である
を参考に学んでいく。
7. 確率解析の基礎
時間が連続的に推移する投資決定問題に必要な確率解析の基礎を扱う。
7.1 線形確率微分方程式
任意の時間および十分に小さな時間幅を考え、時間区間における系の状態の変動が
で与えられるものとする。ここでは確率増分であり、で時間に関して独立だと仮定する。増分が十分に小さければ、とおくことで
という線形確率微分方程式を得る。ここでである。本式でが独立かつ同一の正規分布に従うとき、は過程または運動に従うという。このとき確率増分の分散はに比例する。増分の分散がでのオーダーで無いため、が限りなく小さくなっても分散項は消滅しない。
もしがベクトルであるならば、とおけば、
が成り立つ。
ある時点におけるが所与だとして、確率微分方程式
を求めるために区間を個に分割し、とする。また分割した小区間は等間隔でその間隔をとしてとする。このときに
と定義すると、
と書ける。これを繰り返すことで
と定義すれば、
を得る。これは差分方程式
の解である。定義式から状態遷移は差分方程式
を満たす。
は
においてとしたときの線形確率微分方程式
に対する1つの解法を示唆している。
この式の積分は確率過程の積分を含むため確率積分と呼ばれる。伊藤の確率積分を踏まえると、確率過程のに関する確率積分は次の部分和
の極限として定義される。ここで確率変数の数列の収束を二乗平均の意味での収束値として定義する。すなわち
で定義する。
確率積分は期待値と積分とが交換できるという性質を持つ。差分方程式
より状態遷移は微分方程式
を満たす。一定ならば、この微分方程式は反復法によって解くことができる。すなわちとしを再帰的に
と定義する。ここでとすればは
に収束するため、以上から
である。
またはであり、積分と期待値の交換により、を所与とすれば、
である。また時間区間における系の状態の変動
において両辺の期待値を取ることで
を得る。