計量経済学を学んでいく。
まずは
を中心に参照して基礎を学んでいく。
今日のまとめ
- 従属変数が質的変数と量的変数の両方からなる場合、分布の形状が変わり、条件付き期待値は無条件の期待値よりも大きくなる。従属変数の取る値がある一定の領域に限られているとき、その従属変数は切断されているという。
- 切断された従属変数を扱うためのモデルには、潜在変数を
とし、観測値
と
に以下の関係がある
モデルがあり、これをTobitモデルと呼ぶ。- Tobitモデルの推定には最尤法を用いる。
13. 切断された従属変数
本節では従属変数が質的変数と量的変数の両方からなる場合を考える。このとき線形回帰モデルは適用できない。
従属変数がある一定の領域に取る値が限られているとき、その従属変数は切断されていると呼ぶ。たとえば非負の値を取るとき、ゼロで切断されているという。
13.1 切断された正規分布
平均がであるような無作為標本
について以下のような条件
を与えるものとする。
の分布関数および密度関数をそれぞれ
とすると、上記条件を満たす標本の密度関数
は、切断されなかった領域について
が成り立つことに注意すれば
である。
切断された分布の条件付き期待値は
で得られる。これについて
およびより、
すなわち条件付き期待値は無条件の期待値よりも大きくなる。
13.2 Tobitモデル
潜在変数をとし、観測値
と
に以下の関係があるものとする:
とする。このモデルはTobitモデルと呼ばれる。
ここでの興味は母数および分散
である。
観測値がとなる確率は
である。したがってを標準正規分布として
である。
このとき
である。最右辺にあるの条件付き期待値は正を取る。
さらにが正ならば条件付き期待値と
の相関は負になる。
すべてのの観測値に関する期待値は
であり、切断された標本の期待値よりも小さくなる。