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やりなおしの数学・線形代数篇(16/26)

 定番書

を基に線形代数を学び直していく。

今日のまとめ

5. 固有値固有ベクトル

5.1 固有値固有ベクトル

 VK上の線形空間TVの線形変換とする。Tにより方向が変わらないベクトル、すなわち


\begin{aligned}
T\boldsymbol{x}=\alpha\boldsymbol{x},\ \alpha\in K
\end{aligned}

を満たすような\boldsymbol{0}\neq\boldsymbol{x}\in VT固有ベクトルという。またこのときの\alpha\in KT固有値\boldsymbol{x}T固有値\alphaに対する固有ベクトルという。
 これは\boldsymbol{x}の張る1次元部分空間\{c\boldsymbol{x}|c\in K\}T-不変部分空間であるという。
 \alphaT固有値であるとき、\boldsymbol{0}および\alphaに対するT固有ベクトル全体の集合W_{\alpha}V\{\boldsymbol{0}\}でないT-不変部分空間である。これを固有値\alphaに対するTの固有空間という。
 An次正方行列であるとき、Aによって定まる\mathbb{C}^{n}の線形変換T_A固有値固有ベクトルおよび固有空間をそれぞれ行列A固有値固有ベクトルおよび固有空間という。
 Tが複素線形空間Vの線形変換であるとき、Vの任意の基底(E,\varphi)に関するTの行列をAとすれば、TおよびA固有値は一致し、固有ベクトルおよび固有空間はそれぞれ\varphiにより移りあう。


固有ベクトルの独立性線形空間Vの線形変換Tの相違なる固有値に対する固有ベクトルは線形独立である。
(\because \beta_1,\cdots,\beta_kを相違する固有値\boldsymbol{x}_1,\cdots,\boldsymbol{x}_kをそれらに対応する固有ベクトルとする。もし\boldsymbol{x}_1,\cdots,\boldsymbol{x}_kが線形従属ならば、{}^{\exists}i,\ 2\leq i\leq k\ s.t.\ \boldsymbol{x}_1,\cdots,\boldsymbol{x}_{i-1}は線形独立かつ\boldsymbol{x}_1,\cdots,\boldsymbol{x}_{i}は線形従属が成り立つ。このとき

\begin{aligned}
\boldsymbol{x}_i=\displaystyle{\sum_{j=1}^{i-1}c_j\boldsymbol{x}_j}
\end{aligned}

が得られる。この両辺にTを施すことで


\begin{aligned}
&\ T(\boldsymbol{x}_i)=T(\displaystyle{\sum_{j=1}^{i-1}c_j\boldsymbol{x}_j})\\
\Leftrightarrow&\ \beta_i\boldsymbol{x}_i=\displaystyle{\sum_{j=1}^{i-1}c_j\beta_i\boldsymbol{x}_j}
\end{aligned}

であるから


\begin{aligned}
c_1(\beta_1-\beta_i)\boldsymbol{x}_1+c_2(\beta_2-\beta_i)\boldsymbol{x}_2+\cdots+c_{i-1}(\beta_{i-1}-\beta_i)\boldsymbol{x}_{i-1}=\boldsymbol{0}
\end{aligned}

が成り立つ。\boldsymbol{x}_1,\cdots,\boldsymbol{x}_{i-1}は線形独立であるから、{}^{\forall}j=1,2,\cdots,i-1(c_j(\beta_j-\beta_i)=0)である。仮定{}^{\forall}j=1,2,\cdots,i-1(\beta_i\neq\beta_j)よりc_j=0である。したがって\boldsymbol{x}_i=\boldsymbol{0}となり、\boldsymbol{x}_i固有ベクトルであるという仮定に反する。 \blacksquare)
 したがってTのすべての相違なる固有値\beta_1,\cdots,\beta_kに対する固有空間をW_1,\cdots,W_kとすればW_1\oplus W_2\oplus\cdots\oplus W_kは直和である。

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