計量経済学を学んでいく。
まずは
を中心に参照して基礎を学んでいく。
今日のまとめ
- 一般に複数の説明変数が存在するを変数回帰モデルという。
- 行列を用いることでと表現できる。
4. 変数回帰モデル
以降、とする。
4.1 変数回帰モデルとは
まず大雑把に定義すると、一般に複数の説明変数が存在する
を変数回帰モデルという。これは座標空間においてデータに対して平面を当てはめる問題と等価である。
4.2 変数回帰モデルの行列表示
組の観測値に対して変数回帰モデルは
と書くことで
と表現できる。
4.3 最小二乗法
最小二乗法は前節で用いたベクトル表示を用いることで
を最小化するようなを得るような最適化問題だと考えることができる。
はベクトルの長さの二乗であるから、これは幾何学的にはベクトルとベクトルの距離を最小にする問題だとも言うことが出来る。そう解釈すれば、この最適化問題の解はこれらが直交するときに得られる、すなわち
が成り立つときに最小化される。したがってであるとき、
が成立する。最後の方程式を正規方程式と呼ぶ。
が逆行列をもつならば、
となる。
4.4 変数回帰の代数
以降、とおく。
これを用いると、
と書ける。ここでとおいた。このはを係数ベクトルに1次変換する作用素と言える。
また
と書くことができる。ここでとおいた。このは射影ベクトルの作用素と言える。
また残差ベクトルは
と書くことができる。は射影の残差ベクトルを作る作用素である。
これらについて
が成り立つ。
4.5 残差回帰
の個々の成分や部分のベクトルはどのように求めればよいのか。1つは先にをまず計算し、そこから必要な部分を取り出す。もう1つは残差による回帰である。を個の変数からなる行列に回帰した結果は以下のように表される:
このとき、残差回帰とはを以下の3ステップを通じて推定する方法である。
(1) | をに単回帰して残差を求める。 |
(2) | をに回帰して残差の行列を求める。 |
(3) | 残差を残差の行列に回帰させる。 |
残差回帰の代数的結果はFWL定理(Frisch-Waugh-Lovell定理)と呼ばれる。
FWL定理(1) 回帰分析においては、以下の3ステップを通じて推定できる:
(a) | をに単回帰して残差を求める。 |
(b) | をに回帰して残差の行列を求める。 |
(c) | 残差を残差の行列に回帰させる。 |
(2) (c)における回帰の残差は残差に一致する。