計量経済学を学んでいく。
まずは
を中心に参照して基礎を学んでいく。
今日のまとめ
- 一般化モーメント法などさまざまな推定法を扱う。
9. 説明変数と攪乱項の相関
古典的回帰モデルにおける仮定
(1) | は非確率的である。 | |
(2) | であり | |
(3) | の階数はである。 |
の1番目を除いた回帰モデルを新古典的回帰モデルと呼ぶ。
この場合、
- は確率的である。
- の階数はである。
を仮定すれば、Gauss-Markovの定理が引き続き適用できる。このとき(a)-(c)が満たされるモデルを新古典的回帰モデルと呼ぶこととする。
9.1 回帰係数の極限
新古典的回帰モデルではのいずれも確率ベクトルであり、何らかの分布に従う。したがってその性質により推定量の特性が変わる。
仮定(2):が成立するならば、最小二乗推定量は不偏性をもつ。実際
であるから、仮定(2)が成り立つならば最右辺第2項がになるから、不偏性が成り立つ。しかし一般にはが成り立つとは限らない*1。
9.2 操作変数
攪乱項と説明変数に相関がある場合、最小二乗推定量は必ずしも“良い”推定量とは言い難い。そういった場合でも上手く推定が出来るような条件を考える。それは、説明変数と相関し、さらに攪乱項とは相関が無い変数が存在することである。そうした変数を操作変数と呼ぶ。
9.2.1 間接最小二乗法
操作変数が存在する場合、モデルの内生変数を外生変数の関数として表す誘導形を与える。
たとえばKeynesモデル
において、
とおく。もしがと無相関であれば、本式は新古典的回帰モデルであり、をに回帰することでの不偏性および一致性をもつ推定値を得ることができる。このように誘導形の推定量をさらに解くことで本来知りたかった母数の推定量を得る方法を間接最小二乗法という。
9.2.2 操作変数法
もう1つの方法は回帰モデルの両辺に対して操作変数との共分散を取り、その結果を解くことで推定値を得る方法を操作変数法という。
たとえばKeynes型消費関数
において操作変数に対する共分散を両辺について取ると、
を得る。もし民間投資が消費の攪乱項と無相関ならばであるから、
が得られる。
9.3 一般化モーメント法
と相関しと無相関な操作変数が個あるとする。また操作変数からなる行列をとする。このとき直交条件
が成立する。
もし直交条件が正しければ、有限のであっても
が成り立ち得る。
一般化モーメント法(GMM)は直交条件から観測値のモーメントを用いて母数ベクトルを推定する。このとき
を得る。
新たにとおき、
と書き直す。の分散をとおくと、として
を得る。標本が無作為標本で標本数が大きい場合、が漸近的に期待値がの正規分布に従うことが知られている。
以上をもとにGMM推定量
を考える。
をウェイト行列と呼ぶ。とおけば
である。一般にGMM推定量は一致性をもち、漸近的に正規分布に従う。
ウェイト行列としてを用いると、有効GMM推定量を得る。
*1:本書はこの条件がとの相関が無いことと同値と言っている。が、自分にはそれが同値なのかはよく分からない、というか導くことができなかった。