証券投資(現代ポートフォリオ理論)をコンパクトに学ぶべく、比較的最近に発刊され薄めの本である
を参考に学んでいく。
- 前回:
3. ポートフォリオ理論
3.3. 平均=分散モデル
Markovitzは、ある一定のポートフォリオ収益を達成することを所与としてポートフォリオ収益の分散を最小にするポートフォリオの構成法を提案した。
(仮定1) | 投資家はポートフォリオの期待リターンと分散に基づきポートフォリオを選択する。 | |
(仮定2) | 同一のリターンの下で分散を最小にするような投資家はリスク回避的である。 | |
(仮定3) | 投資家はすべての証券の期待リターンと証券間のリターンの分散共分散について同一の情報を有し、期末のポートフォリオ収益の分散を最小にするように期首でポートフォリオを選択する。 |
もし種類の証券がすべてリスク証券であるならば、としてと表示する。また投資ウェイトはを満たす。もし無リスク証券を追加する場合、その投資ウェイトをとし、そのリターンをとおけば、ポートフォリオはで表す。
3.3.1. 無リスク証券が無い場合
ポートフォリオのリターンを、その投資ウェイトをとして、その期待リターンは
で表される。とおけば、このポートフォリオの制約条件は
である。
またの分散は、分散共分散行列をとして
が成り立つ。
以上の下で期待リターンを所与として、平均=分散モデルは以下の二次計画問題として定式化できる*1:
この解を得るためにに対してラグランジュ関数を導入する:
分散共分散行列を正定値行列とすれば、最適解について以下が得られる:
正定値性から逆行列が存在するから、1番目の等式に左からを掛けることで
が得られる。これに更にを左から乗じて2番目の等式を代入すれば
である。更にを投資ウェイト式の両辺に左側から乗じ3番目の等式を代入することでが成り立つ。これらを整理すればという連立方程式を得る。
(1)(2)より
また(1)(2)より
が得られる。したがって投資ウェイトは
である。
この効率ポートフォリオについて
が成り立つことに注意すれば、この効率的ポートフォリオの分散は
である。これにより、期待リターンの水準ごとの効率的ポートフォリオの分散が得られた。
-\空間に描いたこの効率的ポートフォリオの軌跡は、分散を期待リターンの多項式と見たときに2次係数および定数項について
が成り立つことから、下に凸で頂点が第1象限または第3象限に存在する放物線を描く。
また-\空間の軌跡を考える。分散の式を変形することで
が成り立つから、この軌跡は双曲線であることが分かる。
この効率的ポートフォリオにおいて最も分散が小さくなるのはのときで、この点を最小分散ポートフォリオという。またこの最小分散ポートフォリオおよびその上部の双曲線(上図の赤線部分)を効率的フロンティアという。
平均=分散モデルにおいてある証券(またはポートフォリオ)に対し、それらの期待リターンおよび標準偏差がの双方を満たすとき、証券(またはポートフォリオ)は証券(またはポートフォリオ)を優越するという。ある証券(またはポートフォリオ)を優越するような証券(またはポートフォリオ)が存在しないとき、その証券(またはポートフォリオ)はパレート最適であるという。最小分散ポートフォリオはパレート最適を満たす。
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