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今日のまとめ
3. 実数と連続性
実数の集合の持つ基本的性質は3つに集約される:
- 加減乗除の四則演算ができる
- 大小関係が定まる
- 連続性が成り立つ
この(3)について説明する。
3.1 有界性
空でない集合について、上に有界であるとは、すべての
について
であるような
が存在することをいう。またこのような
を上界(upper bound)という。また
が
の上界であるならば、
も
の上界である。
ここで重要なのは、ということがあり得るということである。すなわち開区間でも上に有界なことがあり得る。
3.1.1 最大値(maximum)
これを踏まえて最大値を定義する。
が
に対し
は
の上界である
を満たすとき、
の最大値であるという。このとき
と書く。
最大値は定まらない場合がある。実際、(右)開区間であれば、最大値は定まらない。
これと同様に最小値も定義され、
と書く。
3.2 実数の連続性
以上を基に実数の連続性に関する重要な性質を証明抜きに述べる。
このとき以下の3つの命題が成り立つ。
(1) 自然数全体の成す集合
は上に有界でない。
(2)に対して
を満たすような自然数
が存在する。(Alchimedesの公理)
(3)を満たすような任意の
に対し
を満たす有理数
が存在する。(有理数の稠密性)
( それぞれの命題について証明する。
(1)
が上に有界であると仮定する。このとき
が成り立つ。
は
の上界でないから、
を満たすような
が存在するから、
が成り立つが、これは
が上限であることに矛盾する。したがって
は上に有界でない。
(2)
は上に有界でないから、
を満たすような
が存在する。したがって
(2)より
4. 数列
前節で実数の連続性を導入した。これを用いることで数列の収束・極限を厳密に定義することが出来る。
4.1 数列の“収束”
まず収束を定義する。数列が
に収束することを言葉で述べれば、どんなに小さな正の数
を持ってきてもそれに応じた
(したがって厳密には
と
は
の関数である。)を取ってくることで
が成り立つことをを言う。
数列
が
に収束するとは、任意の正数
に対してある
を選べば、
であるような任意の
について
を満たすことをいう。
このとき、を数列
の極限といい、
と書く。
4.1.1 定義による極限の導出例
上述した定義に則って、具体的な数列の極限として数列の極限
を導出する。
任意のを取ってくると、
が成り立つ。したがってである。
4.2 数列の"発散"
今度は発散について定義する。
数列
が正の無限大にはっさんするとは、任意の正数
に対してある
を選べば
であるようなすべての
について
が成立することをいう。
このとき
と書く。