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マクロ経済学(2/17)

 基本的な経済観念を身に付けるべく、マクロ経済学を学んでいく。テキストは古典派をしっかりと扱っているという

を用いることにする。

2. 家計の消費・貯蓄行動

2.1 家計の消費行動

  • 民間最終消費支出:国内総生産を構成する要素で最も大きな比率を占める。
  • 消費で最も基本的な概念は以下の消費(C)と貯蓄(S)、可処分所得(Y_D)の関係である:


\begin{aligned}
S=Y_D-C
\end{aligned}

  • 雇用者報酬と利子や配当、地代などの財産所得の合計から税金や社会保障費などの支払費を差し引いた可処分所得のうち、消費されなかったものが貯蓄になる、または消費に足りない分を借入にて賄う。
  • 平均消費性向可処分所得のうち、消費に支出された割合


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{C}{Y_D}} 
\end{aligned}


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{S}{Y_D} =\frac{Y_D-C}{Y_D} =1-\frac{C}{Y_D}}
\end{aligned}

  • 限界消費性向(dC/dY_D)および限界貯蓄性向(dS/dY_D)


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{dC}{dY_D}}=1-\displaystyle{\frac{dS}{dY_D}}
\end{aligned}

2.2 家計はどのように消費を決定するのか

  • 家計における消費と貯蓄の振り分け目的:消費すれば現在の効用が上昇するから。貯蓄は将来の消費のため。家計は現在と将来の消費から得られる効用、現在や将来の所得を考えて現在の消費と貯蓄を決定する
  • 2期間モデルによる分析:家計が2期間の効用を最大にするように現在と将来の消費を決定する。このときの家計の効用関数を以下で表す。ここでC_i,i=1,2は第i期の消費であり、\rho\gt0を主観的割引率という。\rhoにより同じ量を消費したとしても得られる効用が相違し得ることを表現している。


\begin{aligned}
U(C_1,C_2)=u(C_1)+\displaystyle{\frac{1}{1+\rho}}u(C_2)
\end{aligned}

  • また


\begin{aligned}
\frac{du}{dC}\gt0,\ \ \ \frac{d^2 u}{dC^2}\lt0
\end{aligned}

 すなわち限界効用は正かつそれは逓減すると仮定する。

  • 予算制約を考慮すると


\begin{aligned}
C_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} C_2=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} Y_2\equiv I
\end{aligned}

  • 第1期の予算制約:家計がY_1の所得を得るとし、C_1を消費しY_1\gt C_1ならばS=Y_1-C_1\gt0が貯蓄される。そのS_1は利子率rで運用され、第2期には(1+r)Sの所得を発生させる。逆にY_1\lt C_1ならば-S=C_1-Y_1の借入を行ない、第2期には-(1+r)Sの元利金を返済する
  • 第2期の予算制約:家計がY_2の所得を得るとすると、この時点ではさらに貯蓄分(または返済分)を考慮する。この家計が遺産を残さないことを仮定すれば、第2期の予算制約は


\begin{aligned}
C_2=Y_2+(1+r)S
\end{aligned}

  • 最右辺のIを生涯所得という
  • 上記の家計における最適な消費計画は、制約条件


\begin{aligned}
\displaystyle{C_1+\frac{1}{1+r} C_2=Y_1+\frac{1}{1+r}Y_2≡I}
\end{aligned}
 の下で効用関数

\begin{aligned}
U(C_1,C_2 )=u(C_1 )+\displaystyle{\frac{1}{1+\rho}} u(C_2 )
\end{aligned}
 を最大にするような消費計画\hat{C}_1,\hat{C}_2)を求めることである。

  • 制約条件から


\begin{aligned}
C_2=(1+r)(I-C_1)
\end{aligned}

 を代入することで


\begin{aligned}
U(C_1,C_2)&=U(C_1)\\
&=u(C_1)+\displaystyle{\frac{1}{1+\rho}}u( (1+r)(I-C_1) )
\end{aligned}

 これを最大化するようなC_1=\hat{C}_1U^{\prime}(\hat{C}_1)=0を満たすので


\begin{aligned}
&\ \ \ \ \ \ u^{\prime} (\hat{C}_1 )-\frac{1+r}{1+\rho} u^{\prime} ( (1+r)(1-\hat{C}_1 ) )=0\\
&\Leftrightarrow (1+r) u^{\prime} ( (1+r)(1-\hat{C}_1 ) )=(1+\rho) u^{\prime}(\hat{C}_1 )\\
&\Leftrightarrow (1+\rho)\displaystyle{\frac{u^{\prime}(\hat{C}_1)}{u^{\prime}( (1+r)(1-\hat{C}_1) )}}=1+r\\
&\Leftrightarrow (1+\rho)\displaystyle{\frac{u^{\prime}(\hat{C}_1)}{u^{\prime}(\hat{C}_2 )}}=1+r
\end{aligned}

 これをEuler方程式という。

  • Euler方程式は一般に代数的に解くことができない。特殊条件下での代数解を導出する:

 仮定


\begin{aligned}
U(C_1,C_2 )=\log{C_1}+\frac{1}{1+ρ}\log{C_2}
\end{aligned}

を追加すると、u(x)=\log{x}であるからEuler方程式は


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{u^{\prime}(\hat{C}_1)}{u^{\prime}(\hat{C}_2)}}=\displaystyle{\frac{\hat{C}_2}{\hat{C}_1}}=\displaystyle{\frac{1+r}{1+\rho}}\\
\end{aligned}

 当初求めた式に代入することで


\begin{aligned}
&\ \ \ \ \ \ \ \hat{C}_2=(1+r)(I-\hat{C}_1)\\
&\Leftrightarrow\hat{C}_1=(1+\rho)(I-\hat{C}_1 )\\
&\Leftrightarrow\hat{C}_1=\frac{1+\rho}{2+\rho}I\\
\end{aligned}

\begin{aligned}
\therefore \hat{C}_2=\frac{1+r}{1+\rho}\hat{C}_1=\frac{1+r}{2+\rho}I
\end{aligned}

  • r=\rhoならばEuler方程式がu^{\prime} (\hat{C}_1 )=u^{\prime}(\hat{C}_2)となるため、\hat{C}_1=\hat{C}_2-C_0, C_0\in\mathbb{R}である。したがって


\begin{aligned}
&\ \ \ \ \ \hat{C}_2=(1+r)(I-\hat{C}_1 )\\
&\Leftrightarrow \hat{C}_1+C_0=(1+r)(I-\hat{C}_1 )\\
&\Leftrightarrow \hat{C}_1=\frac{1+r}{1+2r}I-C_0^{\prime}\\
\end{aligned}

\begin{aligned}
\therefore \hat{C}_2&=\hat{C}_1+C_0=\frac{1+r}{1+2r} I-\frac{2r}{1+2r}C_0
\end{aligned}

ここでC_0^{\prime}=\displaystyle{\frac{C_0}{1+2r}}である

  • 以上を要約すれば
  • 現在と将来の消費は平準化されている
  • 現在(将来)の消費は現在の所得のみならず将来の所得も考慮して決定される

2.3 貯蓄関数

  • 消費、貯蓄を決定する要因:(1)所得、(2)主観的割引率、(3)利子率
  • 将来所得が一定で現在の所得だけが変化する場合、家計は消費の平準化を行なっているため、Y_1が増加したとしても、C_2も増えるためその増加ほどC_1は増加しないため、現在の所得の増加は貯蓄を増加させる
  • 現在の所得が一定で将来所得だけが変化する場合、Y_2の増加はC_1,C_2の増加をもたらすため、将来所得の増加は貯蓄を減少させる。利子率が上昇した場合には、Euler方程式


\begin{aligned}
(1+\rho)\displaystyle{\frac{u^{\prime} (\hat{C}_1)}{u^{\prime} (\hat{C}_2)}}=1+r
\end{aligned}
  から消費成長率(\displaystyle{\frac{u^{\prime}(\hat{C}_1 )}{u^{\prime}(\hat{C}_2)}})が上昇する。

図表1 所得効果と代替効果
f:id:suguru_125:20210911005619j:plain
出典:二神・堀(2017)*1

  • 利子率がrのとき、ある家計の2期間の所得Y_1,Y_2が点Aで与えられているとする。予算制約線DEであり、この家計の無差別曲線がuu^{\prime}であるとすれば、点B(C_1^*,C_2^* )が最適消費計画となる。
  • 利子率がr→r^{\prime}に上昇した場合の最適な消費計画を考える。このとき、予算制約線は直線FGに変わる。消費は利子率の影響を受けないため、点Aを通ることは変わらない。最適消費計画は点F(C_1^{\prime},C_2^{\prime})となる
  • 以上から、点Bから点Fへの変化は、2つの効果に分けることが出来、それらの効果の大きさで貯蓄の増減が決まる
  • 代替効果:点B→点H

 利子率が上昇すれば予算制約線の傾き(=p_1/p_2)が増加する、すなわち将来の価格が相対的に減少する。その結果、第1期の消費財への需要を減らし代わりに第2期の消費財への需要を増やす。

  • 所得効果:点H→点F

 家計はY_1C_1^*を上回っているため正の貯蓄を行なっている。利子率が上昇するため、第2期に受け取る利子収入が増大する。したがって家計の所得全体が増加することでC_1,C_2が増加する。

  • すなわち


\begin{aligned}
代替効果\gt所得効果\rightarrow貯蓄増加
\end{aligned}

  • 時間選好率:主観的割引率\rhoは時間選好率と密接に関係している。消費量が同じでも第1期に比べ第2期の効用を相対的に小さく評価する:


\begin{aligned}
MRS_{1,2}-1 s.t. C_1=C_2
\end{aligned}

  • MRS_{1,2}は第2期における消費財の限界効用に対する第1期の消費財の限界効用の比に等しい。家計の効用関数から


\begin{aligned}
U(C_1,C_2 )&=u(C_1)+\displaystyle{\frac{1}{1+\rho}}u(C_2)\\
\therefore MRS_{1,2}-1&=\displaystyle{\frac{\frac{\partial U}{\partial C_1}}{\frac{\partial U}{\partial C_2}}}-1\\
&=\frac{\frac{\partial u(C_1)}{\partial C_1}}{\frac{1}{1+\rho} \frac{\partial u(C_2)}{\partial C_2}}-1\\
&=(1+\rho)  \frac{u^{\prime}(C_1 )}{u^{\prime}(C_2)}-1=1+\rho \\
\end{aligned}


\begin{aligned}
\therefore \rho=\frac{u^{\prime}(C_1 )}{u^{\prime}(C_1 )}-1
\end{aligned}

  • r>\rhoを仮定すると、利子率rは第1期の消費を1単位減らすことで可能となる第2期の追加的な消費量を表す。時間選好率\rhoは家計が第1期の消費を1単位減らしたときに減少する効用を維持するだけの第1期の追加的な消費量を表す。このため、C_1^*\lt C_2^*となる組み合わせを最適消費計画として家計は選択する。ここでrが上昇したと仮定すると、\displaystyle{\frac{C_2^*}{C_1^*}}は下落する。


\begin{aligned}
\therefore \rhoの上昇(下落)\rightarrow貯蓄の減少(増加)
\end{aligned}

2.4 消費に関するいくつかのモデル

  • ライフサイクル仮説:現在から死亡するまでのことを考えて消費計画を立てるという仮説
  • 家計は現時点から死ぬまでに得る生涯所得を予測して一生の消費計画を立てる:①各期の消費は生涯を通して一定であると仮定する、②就学期から若年勤労期は借金をして消費する。退職後は貯蓄を崩して消費する


図表2 ライフサイクル仮説
f:id:suguru_125:20210911013636j:plain
出典:二神・堀(2017)*2


\begin{aligned}
Y_D=Y_P+Y_T
\end{aligned}

  • t期の消費C_tと恒常所得は


\begin{aligned}
C_t=\beta Y_P,\beta\gt0
\end{aligned}
   を満たす。
 

  • ケインズ型消費関数:総消費を基礎消費、限界消費性向および可処分所得を用いて以下の形だと仮定する


\begin{aligned}
C=A+cY_D,0\lt c\lt1
\end{aligned}

  • 可処分所得Y_D^1からY_D^2と増大すると、平均消費性向は(OGの傾きからOHの傾きへと)減少する


図表3 ケインズ型消費関数
f:id:suguru_125:20210911013745j:plain
出典:二神・堀(2017)*3

補論1:最適な消費計画の決定

  • 複数の財に対する選好は限界代替率で表現する。限界代替率は一方の財で測ったもう一方の財の価値を表しMRS_{1,2}と書く。


\begin{aligned}
{MRS}_{1,2}&=-\displaystyle{\frac{dC_2}{dC_1}}\\
&=\displaystyle{\frac{\frac{\partial U(C_1,C_2)}{\partial C_1}}{\frac{\partial U(C_1,C_2)}{\partial C_2}}}
\end{aligned}

  • 限界代替率の考え方を用いれば、消費者がどのように最適な消費計画を決定しているのかを理解することができる。消費者の利用可能な所得をI, 第1財の価格をP_1, 第2財の価格をP_2で表すこととする。このとき予算制約式は


\begin{aligned}
P_1 C_1+P_2 C_2\leq I
\end{aligned}
このときに消費者が効用を最大化させる消費量の組み合わせ(C_1^*,C_2^* )を決定する。最適消費量においては限界代替率が\frac{P_1}{P_2}に等しくなる:

\begin{aligned}
{MRS}_{1,2}=\displaystyle{\frac{\frac{\partial U(C_1,C_2)}{\partial C_1}}{\frac{\partial U(C_1,C_2)}{\partial C_2}}}=\frac{P_1}{P_2} 
\end{aligned}

補論2:双曲割引

 合理的に行動しているとは考えられない家計の行動を分析するためのツールとして双曲割引がある。
 家計の消費の計画期間を3期間とする。このとき


\begin{aligned}
U(C_1,C_2,C_3)&=u(C_1 )+\frac{\beta}{1+\rho} \left( u(C_2 )+\frac{u(C_3 )}{1+\rho} \right), 0\lt \beta\lt 1
\end{aligned}

と効用関数が書ける。簡単のために所得は第1期のみY_1が発生しまたr=\rhoであると仮定する。このとき


\begin{aligned}
C_1+S_1&=Y_1\\
C_2+S_2&=(1+\rho) S_1\\
C_3&=(1+\rho) S_2
\end{aligned}

問題*4

1. 問題

C_1,C_2をそれぞれ第1期および第2期の消費として、効用関数


\begin{aligned}
U(C_1,C_2 )=u(C_1)+\displaystyle{\frac{1}{1+ρ}}u(C_2)
\end{aligned}

をもつ家計の消費と貯蓄の選択問題を考える。このとき以下の問いに答えよ。ただしこの家計の予算制約式を


\begin{aligned}
C_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} C_2=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\equiv I
\end{aligned}

とする。ここでrを利息、Y_i,i=1,2i期の所得とする。

(a)生涯所得

r=0.1,\ Y_1=300,\ Y_2=132の場合、この家計の生涯所得を計算せよ。

(b)最適消費計画①

前問において更にr=\rhoと仮定する。この場合の最適な消費計画C_1^*,C_2^*および貯蓄額を計算せよ。

(c)最適消費計画②

前問においてY_1=405へと変化した場合、最適な消費計画C_1^*,C_2^*を計算せよ。

(d)最適消費計画③利子率が変化した場合

(b)においてr=0.2へと変化した場合、最適な消費計画C_1^*,C_2^*を計算せよ。

2. 問題

 C_1,C_2をそれぞれ第1期および第2期の消費として、効用関数


\begin{aligned}
U(C_1,C_2 )=u(C_1 )+\displaystyle{\frac{1}{1+ρ}}u(C_2 )=\log{C_1}+\displaystyle{\frac{1}{1+ρ}} \log{C_2}
\end{aligned}

をもつ家計の消費と貯蓄の選択問題を考える。このとき以下の問いに答えよ。ただしこの家計の予算制約式を


\begin{aligned}
C_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} C_2=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} Y_2\equiv I
\end{aligned}

とする。ここでrを利息、Y_i,i=1,2i期の所得とする。

(a)問題

 r=0.1,ρ=0.05,Y_1=300,Y_2=121の場合、最適な消費計画C_1^*,C_2^*および貯蓄額を計算せよ。

(b)問題

前問と同様の状況だがr=0.05へと変化した場合の最適な消費計画C_1^*,C_2^*を計算せよ。

3. 問題

 ある家計の効用関数が


\begin{aligned}
U(C_1,C_2)=\theta \log{C_1}+(1-\theta) \log{C_2}, 0\lt\theta\lt1
\end{aligned}

で表されるとする。そのとき以下に答えよ。

(a)問題

この家計の時間選好率を計算せよ。

(b)問題

\thetaが上昇したときに時間選好率はどのように変化するか。またその理由を説明せよ。

(c)問題

この家計が直面する予算制約式が


\begin{aligned}
C_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} C_2=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}} Y_2\equiv I
\end{aligned}

とする。ここでrを利息、Y_i,i=1,2i期の所得とする。また\theta=0.5,r=0,Y_1=50,Y_2=150であると仮定する。このときに最適な消費計画C_1^*,C_2^*と貯蓄額(あるいは借入額)を求めよ。

4.家計の効用


\begin{aligned}
V(C_1 )=u(C_1 )+\displaystyle{\frac{1}{1+ρ}} u( (I-C_1 )(1+r) )
\end{aligned}
に関する効用最大化条件であるEuler方程式


\begin{aligned}
(1+\rho) \displaystyle{\frac{u^{\prime}(C_1)}{u^{\prime}(C_2)}}=1+r
\end{aligned}

について、r=\rhoと仮定する。このとき以下の2つの命題が成り立つことを示せ:

(a)問題

 現在の所得が増加するものの将来所得が一定であるならば、貯蓄は増加する。

(b)問題

 現在の所得が一定であるものの将来所得が増加するならば、貯蓄は減少する。

5. 家計の効用


\begin{aligned}
V(C_1 )=u(C_1 )+\displaystyle{\frac{1}{1+ρ}} u( (I-C_1 )(1+r) )
\end{aligned}
に関する効用最大化条件であるEuler方程式


\begin{aligned}
(1+ρ)\displaystyle{\frac{u^{\prime}(C_1)}{u^{\prime}(C_2)}}=1+r
\end{aligned}
について、r=\rhoと仮定する。このとき長期の限界消費性向が短期の限界消費性向を上回ることを示せ。

解答

1. 家計の消費決定(1)

(a) 障害所得

 定義より生涯所得I


\begin{aligned}
I &\equiv Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\\
&=300+\displaystyle{\frac{1}{1+0.1}}\cdot132\\
&=420
\end{aligned}
である。

(b) 最適消費計画①

 r=\rhoであるとき、Euler方程式より


\begin{aligned}
u^{\prime}(C_1)=u^{\prime}(C_2)
\end{aligned}

が成り立つ。(a)および予算制約からC_2=1.1(420-C_1)であるから


\begin{aligned}
&u^{\prime}(C_1)=u^{\prime}(1.1(420-C_1) )\\
\Leftrightarrow&C_1=1.1(420-C_1) \\
&2.1C_1=1.1 \cdot 420\\
&C_1=220
\end{aligned}

これをC_2=1.1(420-C_1)に代入して


\begin{aligned}
C_2=220
\end{aligned}

である。このとき


\begin{aligned}
S=Y_1-C_1^*=300-220=80
\end{aligned}

である。

(c) 最適消費計画②

 (b)と同様に考え、


\begin{aligned}
&u^{\prime}(C_1)=u^{\prime}(C_2)\\
\Leftrightarrow&C_1=C_2
\end{aligned}

が成り立つ。(a)および予算制約式から


\begin{aligned}
C_2^*=1.1(405+\displaystyle{\frac{1}{1.1}}\cdot 132-C_1^*) \Leftrightarrow C_2^*=1.1\cdot(525-C_1^*)
\end{aligned}

であるから、


\begin{aligned}
C_1^*&=1.1(525-C_1^*) \\
\Leftrightarrow2.1C_1^*&=1.1 \cdot 525\\
\Leftrightarrow C_1^*&=C_2^*=1.1\cdot 250=275
\end{aligned}

を得る。このとき


\begin{aligned}
S=Y_1-C_1^*=405-275=130
\end{aligned}

である。

(d) 最適消費計画③利子率が変化した場合

 r=0.2になった場合、(b)と同様に考え、


\begin{aligned}
&u^{\prime}(C_1)=u^{\prime}(C_2)\\
\Leftrightarrow&C_1=C_2
\end{aligned}

が成り立つ。(a)および予算制約式から


\begin{aligned}
C_2^*=1.2(410-C_1^*) \Leftrightarrow C_2^*=1.2\cdot(410-C_1^*)
\end{aligned}

であるから、


\begin{aligned}
C_1^*&=1.2(410-C_1^*) \\
\Leftrightarrow2.2C_1^*&=1.2 \cdot 410\\
\Leftrightarrow C_1^*&=C_2^*=\frac{6}{11}\cdot410=223.63\cdots\approx224
\end{aligned}

を得る。このとき


\begin{aligned}
S=Y_1-C_1^*=300-224=76
\end{aligned}

である。

2. 家計の消費決定(2)

 問題設定を整理すると、


\begin{aligned}
\max\left\{\log{C_1}+\displaystyle{\frac{1}{1+\rho}\log{C_2}}\right\}\ s.t.\ C_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}C_2=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2
\end{aligned}

である。

(a)最適消費計画

 まず


\begin{aligned}
&MRS_{12}=\displaystyle{\frac{\displaystyle{\frac{1}{C_1}}}{\displaystyle{\frac{1}{(1+\rho)C_2}}}}=\displaystyle{\frac{1}{\displaystyle{\frac{1}{1+r}}}}\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{C_2}{C_1}}=\displaystyle{\frac{1+r}{1+\rho}}\\
\therefore&C_1^*=\displaystyle{\frac{1.05}{1.1}}C_2^*
\end{aligned}

である。また予算制約式よりI=300+\displaystyle{\frac{1}{1.1}}\cdot132=420である。したがって


\begin{aligned}
&C_1^*+\displaystyle{\frac{1}{1.1}}C_2^*=420\\
\therefore&C_1^*+\displaystyle{\frac{1}{1.05}}C_1^*=420\\
\Leftrightarrow&\displaystyle{\frac{2.05}{1.05}}C_1^*=420\\
\Leftrightarrow&C_1^*=210\\
\end{aligned}

またC_2^*=220である。
 貯蓄額S


\begin{aligned}
S=Y_1-C_1^*=300-210=90
\end{aligned}

である。

(b) r=\rhoの場合

 このとき、r=\rhoであるからEulerの公式よりC_1^*=C_2^*が成り立つため、


\begin{aligned}
&C_1^*+\displaystyle{\frac{1}{1.05}}C_2^*=\displaystyle{\frac{2.05}{1.05}}C_1^*=300+\displaystyle{\frac{1}{1.05}}121\\
\Leftrightarrow&C_1^*=C_2^*=\displaystyle{\frac{436}{1.05}}\displaystyle{\frac{1.05}{2.05}}=212.68\cdots\approx 213
\end{aligned}

である。

3. 家計の選好

(a)時間選好率の計算

 定義より


\begin{aligned}
MRS_{1,2}-1&=\displaystyle{\frac{\displaystyle{\frac{\partial U}{\partial C_1}}}{\displaystyle{\frac{\partial U}{\partial C_2}}}}-1\\
&=\displaystyle{\frac{\theta}{1-\theta}}-1\\
&=\displaystyle{\frac{2\theta-1}{1-\theta}}\\
\end{aligned}

(b) 時間選好率の変化の仕方

 時間選好率を\thetaに関して微分すると


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{\partial (MRS_{1,2}-1)}{\partial \theta}}&=\displaystyle{\frac{\partial}{\partial \theta}}\left(-1+\displaystyle{\frac{1}{1-\theta}}\right)\\
&=\displaystyle{\frac{1}{(1-\theta)^2}}\gt0
\end{aligned}

と任意の\thetaに対して正であるから、\thetaが増加すると時間選好率は増加する。

(c) 最適消費計画

 このときEulerの方程式より


\begin{aligned}
1+\rho=1+r\Leftrightarrow \rho=r
\end{aligned}

であるから、C_1^*=C_2^*が成り立つ。
 予算制約式よりC_1^*+C_2^*=Y_1+Y_2=200であるから、


\begin{aligned}
C_1^*=C_2^*=100
\end{aligned}

である。またS=Y_1-C_1^*=-50、すなわち50だけ借入れている。

4. 貯蓄と所得の関係

 r=\rhoのとき、Eulerの方程式よりC_1^*=C_2^*が成り立ち、予算制約式より


\begin{aligned}
\left(1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}\right)C_1^*&=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\\
\therefore C_1^*&=\displaystyle{\frac{1+r}{2+r}}\left(Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\right)
\end{aligned}

したがって貯蓄Sについて


\begin{aligned}
S&=Y_1-C_1^*\\
&=Y_1-\displaystyle{\frac{1+r}{2+r}}\left(Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\right)\\
&=\displaystyle{\frac{1}{2+r}}\left(Y_1-Y_2\right)\\
\end{aligned}

が成り立ち、将来所得が一定のもとで現在の所得が増大すれば貯蓄は増大し、現在の所得が一定で将来所得が増大すれば貯蓄は減退する。

5. 限界消費性向

 4.と同様にして


\begin{aligned}
\left(1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}\right)C_1^*&=Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\\
\therefore C_1^*&=\displaystyle{\frac{1+r}{2+r}}\left(Y_1+\displaystyle{\frac{1}{1+r}}Y_2\right)
\end{aligned}

が成り立つ。
 短期ではY_1=Y,\ Y_2=Y^{\prime}、長期ではY_1=Y_2=Yになるとすれば、

  • 短期限界消費性向:\displaystyle{\frac{\partial C_1^*}{\partial Y}}=\displaystyle{\frac{1+r}{2+r}}
  • 長期限界消費性向:\displaystyle{\frac{\partial C_1^*}{\partial Y}}=1

となる。

*1:二神孝一・堀敬一(2017)「マクロ経済学 第2版」有斐閣 P.38参照

*2:同前掲書 P.41参照

*3:同前掲書 P.43参照

*4:二神孝一・堀敬一(2017)「マクロ経済学 第2版」有斐閣 P.54参照

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