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マクロ経済学(1/17)マクロ経済学の考え方

 基本的な経済観念を身に付けるべく、マクロ経済学を学んでいく。テキストは古典派をしっかりと扱っているという

を用いることにする。

1. マクロ経済学の考え方

1.1 マクロ経済学とは何か

 マクロ経済学が扱うのは「集計化された経済活動」である。分析対象となる主な主体は、家計企業政府の3つである。

  • 家計:労働を供給して所得を得て消費を行ない、貯蓄を行なって資産を保有する、効用の最大化を目指す経済主体である。
  • 企業:資本ストック(機械や工場、土地など)や労働などの生産要素を用いて財・サービスを生産し、利潤(財・サービスの売上から総費用を引いたもの)の最大化を目指す経済主体。ただし労働者・投資家・経営者が関与しこれらは家計として消費にも関与するため。マクロ経済学において企業は家計の意思を反映した機能に過ぎない。
  • 政府:租税や国債発行などで調達した資金を用いて公共事業などの政府支出を行なう主体で、貨幣を供給する中央政府も政府として分類される場合がある。


 経済変数には名目値と実質値の2種類の評価方法が存在する

  • 名目値:価格変化をそのまま反映した経済変数
  • 実質値:価格変化を調整した経済変数

 フローとストック:ストックはそれぞれ一定期間に行われた経済活動の価値を表現したもので、フロー変数を積み重ねたものである。

1.2 国民経済計算

 マクロ経済活動の水準を測る制度として国民経済計算(System of National Accounts; SNA)がある。
 国内総生産GDP)とは、「ある国の経済において」「生産されたすべての財・サービスの付加価値額の」「総額」である。

  • 国内:ある国の政治的な領土からその国に存在する外国政府の交換及び外国軍隊を除いたものに政治的領土外に存在する当該国の公館および軍隊を加えたもの
  • 国民:ある国の居住者と認められるもの。ただし、①外国人旅行者、②航空機・船舶の乗組員、③1年以内の期間滞在する外国人の業務旅行者、④季節労働者、⑤外交官、外国軍隊の隊員を除く
  • 付加価値:生産者がその生産活動によって新たに付け加えた価値



\begin{aligned}
付加価値=財・サービスの売上-中間財の代金
\end{aligned}

  • 最終財:他の財を生産するために投入されることのない財 中間財:他の財を生産するために用いる財
  • 粗額:固定資本減耗(使用している資産が摩耗した分を取り替えるための費用で、過去に清算された機械や設備の価値が失われた部分)を考慮するか否かで評価が変わる


\begin{aligned}
純付加価値=粗付加価値-固定資本減耗
\end{aligned}

1.2.1 生産面から見た経済活動


\begin{aligned}
国内純生産(\mathrm{Net\ Domestic\ Product})=国内総生産-固定資本減耗の合計
\end{aligned}

1.2.2 分配面から見た経済活動


\begin{aligned}
粗付加価値=固定資本減耗+雇用者報酬+営業余剰
\end{aligned}


\begin{aligned}
国内総所得(GDI)&=(間接税-補助金)+固定資本減耗+雇用者報酬+\\
&\ \ \ \ \ \ 営業余剰+混合所得
\end{aligned}

また


\begin{aligned}
(要素費用表示の)国内所得(GDI)&=国内総所得-固定資本減耗\\
&\ \ \ \ -(間接税-補助金)
\end{aligned}

国民に関して定義すると、


\begin{aligned}
国民総所得(GNI)&=GDI+海外からの要素所得の純受取\\
&=GDI+海外からの要素所得の受取\\
&\ \ \ \ -海外への要素所得の支払
\end{aligned}

1.2.3 支出面から見た経済活動

 支出面で経済活動を表現する。


\begin{aligned}
最終財に対する国内での総需要=C+I+G+EX
\end{aligned}

なお

C :家計消費需要
I :企業による設備・在庫投資
G :政府支出
EX :財・サービスの輸出

である。


\begin{aligned}
最終財の国内での総供給=Q+MF
\end{aligned}

なお

Q :国内で生産された最終財の合計
MF :輸入最終財の供給額

である。

総需要=総供給が成り立つので


\begin{aligned}
C+I+G+EX&=Q+MF\\
Q+(MZ-MZ)+MF&=C+I+G+EX\\
Q-MZ&=C+I+G+EX-(MZ+MF)
\end{aligned}

ここでMZは輸入中間財でありIM=MZ+MFとおくと


\begin{aligned}
Q-MZ=C+I+G+EX-IM
\end{aligned}

が成り立つ。定義よりGDP=Q-MZであるから


\begin{aligned}
GDP=C+I+G+EX-IM
\end{aligned}

すなわち、GDPは消費Cおよび設備投資I、政府支出G、さらに純輸出(=輸出-輸入EX-IMの総和で表される。

1.2.4三面等価の関係

 粗付加価値の合計がGDPであり、生産側と支出側は事後的に常に等しくなるから、


\begin{aligned}
国内総所得(GDI)&=(間接税-補助金)+固定資本減耗+雇用者報酬+\\
&\ \ \ \ 営業余剰+混合所得\\
GDP&=C+I+G+EX-IM
\end{aligned}

1.2.5 GDPの性質

 GDPに含まれるもの、含まれないもの

  • 含む:政府の活動(活動に要した費用で価値を測る)、農家の自家消費、持ち家の住宅サービス、現物支給による給与
  • 含まない:資産価格の上昇による利益、中古車の売上、家事労働

※政府活動の粗付加価値=政府活動の費用-企業からの購入額=公務員の給料

1.3 国際収支

 国際収支統計は一国の海外とのさまざまな経済取引を測る制度である。

  • 経常収支=貿易収支(=財の輸出-財の輸入)+サービス収支(サービスの輸出-サービスの輸入)+

 第一次所得収支(=海外からの所得の受取-海外への所得の支払)+
 第二次所得収支(=海外からの寄付等の受取-海外への寄付等の支払)

  • 資本移転等収支:債務の減免や対価の受け取りを伴わない固定資産の移転など
  • 金融収支:海外との資金の貸借関係


\begin{aligned}
金融収支=資本流出-資金流入+資本移転等収支
\end{aligned}
  ※(資本流出-資金流入)は対外資産の純額での増減額を表す

\begin{aligned}
対外純資産の増減=資本流出-資金流入+資本移転等収支
\end{aligned}

  • 経常収支、金融収支、資本移転等収支の関係


\begin{aligned}
輸出代金の受取+所得の受取&=外国への資本流出\\
輸入代金の支払+所得の支払&=外国への資本流入
\end{aligned}

以上から


\begin{aligned}
\therefore 資本流出-資本流入&=(輸出代金の受取+所得の受取)-\\
&\ \ \ \ \ (輸入代金の支払+所得の支払)\\
&=(輸出代金の受取-輸入代金の支払)+\\
&\ \ \ \ \ (所得の受取-所得の支払)\\
\therefore 対外純資産の増減&=貿易・サービス収支+\\
&\ \ \ \ \ (第一次・第ニ次)所得収支\\
\therefore 金融収支&=対外純資産の増減+資本移転等収支\\
&=貿易・サービス収支+(第一次・第二次)所得収支+\\
&\ \ \ \ \ 資本移転等収支\\
\therefore 経常収支+資本移転等収支&=金融収支
\end{aligned}

※実務上は統計作成上の理由から、両辺は一致しないため、そのズレを調整するために誤差脱漏を加える


\begin{aligned}
経常収支+資本移転等収支-金融収支+誤差脱漏=0
\end{aligned}

1.4 物価水準の測定

 物価水準の計測方法をいくつか表す:

  • GDPデフレーター:物価上昇の度合いを測る指数の1つ。基準年を0年としそこからの年数をtとして


\begin{aligned}
t年の実質GDP&=\sum_{i}P_0^i Q_t^i\\
t年の名目GDP&=\sum_{i}P_t^i Q_t^i\\
GDPデフレーター&=\displaystyle{\frac{t年の名目GDP}{t年の実質GDP}}\\
&=\displaystyle{\frac{\sum_{i}P_t^i Q_t^i}{\sum_{i}P_0^i Q_t^i}}\\
&=\displaystyle{\frac{P_t^1 Q_t^1+\cdots+P_t^N Q_t^N}{\sum_{i}P_0^i Q_t^i}}\\
&=\displaystyle{\frac{P_t^1 Q_t^1}{\sum_{i}P_0^i Q_t^i}+\cdots+\frac{P_t^N Q_t^N}{\sum_{i}P_0^i Q_t^i}}
\end{aligned}


\begin{aligned}
\displaystyle{\frac{\sum_{i}P_t^i Q_0^i}{\sum_{i}P_0^i Q_t^i}}
\end{aligned}

 現在の数量がウェイトになっている指数をパーシェ指数、基準年の数量をウェイトとする指数をラスパイレス指数という。
 需要の増大が激しい製品の場合、物価上昇率が過小評価されるのを避けるべく基準年を1年ずつ更新する。これを「連鎖指数」という。

1.5 マクロ経済分析の視点
  • 外生変数と内生変数:予め分析者が設定したもの、モデルの解として求めるべき変数
  • 動学と静学:時間変化を分析するもの、固定した特定時点における状態を分析するもの
  • 不確実性と期待:動学的分析において、現代のマクロ経済学は「合理的期待」=「経済主体が利用可能な情報をすべて用いて期待を形成する」
  • 長期と短期:マクロ経済学ではまずは長期の均衡を分析し、さらに短期の均衡を議論する。長期・短期の区別は「期待」の状況および市場の価格調整の程度:
期待と現実
市場の価格調整メカニズム
長期
平均的に一致する
機能する
短期
平均的に一致しない場合がある
機能しない場合がある
  • 経済成長と景気循環:経済成長は平均的な成長経路の決定方式を考える。景気循環は現実に観測されるGDPがなぜ平均的な成長経路から乖離するのかを考える

  • 閉鎖経済と開放経済:外国との取引を行なわない経済と行なう経済。マクロ経済学では更に開放経済の分析において大国(自国の経済活動は外国から影響を受け外国から与える)、小国(自国の経済活動は外国から影響を受けるが外国には与えない)の区別をする場合がある

問題*1

1. 問題

 以下の計算問題を解け

  • GDP200であると仮定する。(間接税-補助金)が15, 営業余剰が400, 雇用者報酬が110であり、混合所得が無いとすると、国内純生産はいくらか。
  • ある年の名目GDPは対前年比で2 \%下落したが、GDPデフレーターも4\%下落したとすると、実質GDPは対前年比で何\%変化したことになるか。

2. 問題

 ある経済では3種類の財が取引されていることを仮定する。ある年および基準年における各財の価格と取引量が以下の表の通りだったとする。このとき物価指数に関してパーシェ指数とラスパイレス指数の両方を計算せよ。

  • ある年における価格と取引量
1
2
3
価格
2
3
1
取引量
200
100
100
  • 基準年における価格と取引量
1
2
3
価格
1
2
1
取引量
100
100
100

解答

1. 解答

  • (a)解答

 GDPに関する三面等価の関係から


\begin{aligned}
国内総所得(GDI)&=GDP=(間接税-補助金)+固定資本減耗+雇用者報酬\\
&\ \ \ \ \ +営業余剰+混合所得
\end{aligned}

が成り立つ。ここに各値を代入することで


\begin{aligned}
200&=15+固定資本減耗+110+40\\
\therefore 固定資本減耗&=35
\end{aligned}

 したがって


\begin{aligned}
国内純生産=国内総生産-固定資本減耗=200-35=165
\end{aligned}

である。

  • (b) 解答

 ある年tGDPデフレーターD_tは、名目GDPG_{i,t}、実質GDPG_{r,t}とおけば定義式から


\begin{aligned}
D_t=\displaystyle{\frac{G_{i,t}}{G_{r,t}}}
\end{aligned}

であるから、その変化率は両辺の自然対数を取り微分することで


\begin{aligned}
\log⁡{D_t}&=\log{G_{i,t}}-\log{G_{r,t}}\\
\displaystyle{\frac{\Delta D_t}{D_t}}&=\displaystyle{\frac{\Delta G_{i,t}}{G_{i,t}}}-\displaystyle{\frac{\Delta G_{r,t}}{G_{r,t}}}\\
\Leftrightarrow -0.04&=-0.02-\displaystyle{\frac{\Delta G_{r,t}}{G_{r,t}}}\\
\therefore \displaystyle{\frac{\Delta G_{r,t}}{G_{r,t}}}&=0.02=2\%
\end{aligned}

2. 解答

 パーシェ指数とラスパイレス指数の両方を計算せよ。

  • ある年における価格と取引量
1
2
3
価格
2
3
1
取引量
200
100
100
  • 基準年における価格と取引量
1
2
3
価格
1
2
1
取引量
100
100
100

 それぞれの指数の定義から


\begin{aligned}
パーシェ指数&=\displaystyle{\frac{2\times200+3\times100+1\times100}{1\times200+2\times100+1\times100}}=\displaystyle{\frac{800}{500}}=1.6,\\
ラスパイレス指数&=\displaystyle{\frac{2\times100+3\times100+1\times100}{1\times100+2\times100+1\times100}}=\displaystyle{\frac{600}{400}}=1.5
\end{aligned}

*1:二神孝一・堀敬一(2017)「マクロ経済学 第2版」有斐閣 P.30参照

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