基本的な経済観念を身に付けるべく、マクロ経済学を学んでいく。テキストは古典派をしっかりと扱っているという
を用いることにする。
1. マクロ経済学の考え方
1.1 マクロ経済学とは何か
マクロ経済学が扱うのは「集計化された経済活動」である。分析対象となる主な主体は、「家計」、「企業」、「政府」の3つである。
経済変数には名目値と実質値の2種類の評価方法が存在する
- 名目値:価格変化をそのまま反映した経済変数
- 実質値:価格変化を調整した経済変数
フローとストック:ストックはそれぞれ一定期間に行われた経済活動の価値を表現したもので、フロー変数を積み重ねたものである。
1.2 国民経済計算
マクロ経済活動の水準を測る制度として国民経済計算(System of National Accounts; SNA)がある。
国内総生産(GDP)とは、「ある国の経済において」「生産されたすべての財・サービスの付加価値額の」「総額」である。
- 国内:ある国の政治的な領土からその国に存在する外国政府の交換及び外国軍隊を除いたものに政治的領土外に存在する当該国の公館および軍隊を加えたもの
- 国民:ある国の居住者と認められるもの。ただし、①外国人旅行者、②航空機・船舶の乗組員、③1年以内の期間滞在する外国人の業務旅行者、④季節労働者、⑤外交官、外国軍隊の隊員を除く
- 付加価値:生産者がその生産活動によって新たに付け加えた価値
- 最終財:他の財を生産するために投入されることのない財 中間財:他の財を生産するために用いる財
- 粗額:固定資本減耗(使用している資産が摩耗した分を取り替えるための費用で、過去に清算された機械や設備の価値が失われた部分)を考慮するか否かで評価が変わる
1.2.1 生産面から見た経済活動
1.2.2 分配面から見た経済活動
また
国民に関して定義すると、
1.2.3 支出面から見た経済活動
支出面で経済活動を表現する。
なお
:家計消費需要 | |
:企業による設備・在庫投資 | |
:政府支出 | |
:財・サービスの輸出 |
である。
なお
:国内で生産された最終財の合計 | |
:輸入最終財の供給額 |
である。
が成り立つので
ここでは輸入中間財でありとおくと
が成り立つ。定義よりであるから
すなわち、は消費および設備投資、政府支出、さらに純輸出()の総和で表される。
1.3 国際収支
国際収支統計は一国の海外とのさまざまな経済取引を測る制度である。
- 経常収支=貿易収支(=財の輸出-財の輸入)+サービス収支(サービスの輸出-サービスの輸入)+
第一次所得収支(=海外からの所得の受取-海外への所得の支払)+
第二次所得収支(=海外からの寄付等の受取-海外への寄付等の支払)
- 資本移転等収支:債務の減免や対価の受け取りを伴わない固定資産の移転など
- 金融収支:海外との資金の貸借関係
- 経常収支、金融収支、資本移転等収支の関係
以上から
※実務上は統計作成上の理由から、両辺は一致しないため、そのズレを調整するために誤差脱漏を加える
1.4 物価水準の測定
物価水準の計測方法をいくつか表す:
- GDPデフレーター:物価上昇の度合いを測る指数の1つ。基準年を0年としそこからの年数をとして
- 消費者物価指数(CPI)および企業物価指数(CGPI)
現在の数量がウェイトになっている指数をパーシェ指数、基準年の数量をウェイトとする指数をラスパイレス指数という。
需要の増大が激しい製品の場合、物価上昇率が過小評価されるのを避けるべく基準年を1年ずつ更新する。これを「連鎖指数」という。
1.5 マクロ経済分析の視点
- 外生変数と内生変数:予め分析者が設定したもの、モデルの解として求めるべき変数
- 動学と静学:時間変化を分析するもの、固定した特定時点における状態を分析するもの
- 不確実性と期待:動学的分析において、現代のマクロ経済学は「合理的期待」=「経済主体が利用可能な情報をすべて用いて期待を形成する」
- 長期と短期:マクロ経済学ではまずは長期の均衡を分析し、さらに短期の均衡を議論する。長期・短期の区別は「期待」の状況および市場の価格調整の程度:
期待と現実 |
市場の価格調整メカニズム |
|
長期 | 平均的に一致する |
機能する |
短期 | 平均的に一致しない場合がある |
機能しない場合がある |
- 閉鎖経済と開放経済:外国との取引を行なわない経済と行なう経済。マクロ経済学では更に開放経済の分析において大国(自国の経済活動は外国から影響を受け外国から与える)、小国(自国の経済活動は外国から影響を受けるが外国には与えない)の区別をする場合がある
問題*1
1. 問題
以下の計算問題を解け
- がであると仮定する。(間接税-補助金)が, 営業余剰が, 雇用者報酬がであり、混合所得が無いとすると、国内純生産はいくらか。
- ある年の名目は対前年比で下落したが、デフレーターも下落したとすると、実質は対前年比で何変化したことになるか。
2. 問題
ある経済では種類の財が取引されていることを仮定する。ある年および基準年における各財の価格と取引量が以下の表の通りだったとする。このとき物価指数に関してパーシェ指数とラスパイレス指数の両方を計算せよ。
- ある年における価格と取引量
財 |
財 |
財 |
|
価格 |
|||
取引量 |
- 基準年における価格と取引量
財 |
財 |
財 |
|
価格 |
|||
取引量 |