業務でC#を用いることになったので、最近勉強していなくて朧気になってきた知識をReviseする意味でも、以下の書籍を読みながらC#で実装してみる。統計学については別書で触れたいため大幅にカットします。今回はP.174-180まで(当分は実装なしが続きます)。
6. 確率過程の基礎
6.3 Markov過程
ランダムウォークは独立性の仮定を以て諸性質が導かれた。しかしその過程は非常に強い。そこでそれを少し弱めたMarkov性を用いることが多い。
一般の確率過程では、はそれ以前の履歴に依存して決まる。Markov性では、直前ののみに依存すると仮定する。すなわち
となるとき、Markov性があるという。またMarkov性をもつ確率過程はMarkov過程と呼ぶ。さらに状態が整数値のみを取るMarkov過程をMarkov連鎖という。
Markov性は以下の2つの性質をもつ:
- . Markov過程の将来の確率的挙動は現時点の値のみに依存し、それまでの履歴には無関係である。
- . Markov過程では、現在のことが分かれば未来と過去は独立である。
6.4 推移確率
Markov連鎖の解析的挙動は、すべての状態(は状態空間)とすべての時点に対して、確率
を与えることで決定される。この確率を時点における状態から状態への1ステップ遷移確率と呼ぶ。特に遷移確率が時刻に依存しない場合、すなわち
であるとき、斉時的であるという。
推移確率はまとめて行列形式で書くと便利である:
この成分は
を満たす。
ある行ベクトルについて、すなわちであるような場合、吸収状態であるという。これは、状態になった場合、それ以外の状態にはならないことを表現している。金融工学では信用状態(特に信用格付)を表す行列として用いることがあり、吸収状態をデフォルト(倒産)と見なす。
斉時的なMarkov連鎖を用いるとステップ遷移行列をステップ遷移行列のべき乗で表せる: